第56話

セツナは、それどころじゃないといった顔だったがセカセカと着替えを済ませる。



そして改めて話を切り出してきた。



「まずはこれを見てください!」



テーブルの上にゴトッと出来上がったモノを置く。


(一つはこの間の玉だな。そしてこの杖が.....)


あれだけ大きかった棒きれが俺の肩くらいの高さになっていた。

杖の先は銀色に輝く十字架のような形状をしている。

その十字架の中央部には透明な玉が入っているな。

日頃持つであろう取っ手の部分には精巧な細工が彫られている。

(あの工房はこういうデザイン性重視しているのか?)


見た目はシンプルながらも神々しさがあるような印象だ。



セツナは自信満々で口を開く。


「お待たせしました。これが私の自信作です。その名もザンキの杖です」


(変な名前だな。言ったら怒られそうだが)


「ザンキ?」



俺はセツナに質問するような声を出してみると


「真さん、さっそくこの杖を持ってください」


こうかな?

うん。いい感じだ。しっくりくる。


「今回は近接武器ということだったので、私の実験にて検証したギミックを仕掛けました。

先にある十字架の上部を持って抜いてみてください」


(おっ。これはわかったぞ。仕込み杖の要領だな。

形が杖だから杖だけど中身は刀身が入っていて剣になって近接で戦う的なアレだろ)


こっちの世界では、そういう発想はなさそうだからな。

そこに着眼するセツナはやっぱり天才なんだろう。



そして俺は十字架の先を持ち、格好をつけながら一気に引き抜く!

そして光を反射する刀身!

刀身.....。刀身.....?


「なんじゃこりゃ〜」


盛大に格好をつけて引き抜いた先には5cmほどの不思議な石があるだけで刀身が何もない。


「ふっふっふ。それはザンキの杖。残念な気持ちになる杖!まさに残気の杖!」



天才と馬鹿は紙一重というけど、こいつは馬鹿のほうだったか!


俺は非常に残念な気持ちになり杖を転がす。



「というのは冗談です。見ててくださいね」


そういうとセツナは残気の杖を拾う。

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