第22話

ここには外からの音が聞こえない外の状況が見えない中でルナさんは皆に対してなにやら語りかけている。


それは日頃の他愛もない愚痴であったり、他の村人のことであったり、俺のことについても話していた。俺の話をしている時は俺も耳をダンボにして盗み聞きしていた。

子供達もルナさんの話を聞いて少し不安が取り除けてきたのだろう。怯えた表情が解けてきた。

さすがルナさんだな。

俺の強がりな笑顔より全然頼りになる。俺って本当に役立たずだな。


そんなことを思っていると肩をポンっと叩かれた。

『気にすることないよニイちゃん。強がりな笑顔も心強かったぜ?』


10歳くらいの男の子にフォローされてしまった。挙句強がりなのもやはりバレバレだったのかと苦笑してしまう。


そんな時教会の扉が叩かれた。声が聞こえたので開けてみるとかなりの重傷を負った村人が運ばれてきた。

教会内から『お父さん!』という声が聞こえる。

分かっていたことながらさすがにキツい。

しかしルナさんが近付き治癒魔法を使うとみるみる顔色が良くなり傷も再生されていく。

すごい。神秘の瞬間を見ているようだ。ルナさんって本当にすごい人なのでは?そんなことを思ってしまう。


そんなことはつゆ知らずルナさんは駆け寄ってきた女の子に笑顔を向けもう大丈夫だよと頭を撫でている。

そこからは徐々に怪我人が運び込まれてきた。センズを食べることが出来る人にはセンズを食べさせていく。ルナさんは食べた後の回復具合に驚いていたようだが助かりますっとお礼を言われた。


治癒をしつつ現状を聞き出していく。


どうやらオークの軍団はやはり北側から現れその数は80体ほどだそうだ。80、、、その数に多いか少ないかわからないが一体でも強力ということなのでかなりよろしくない規模なのだろう。しかし問題はそれを指揮するオークがいるということだった。

将軍オークと言われているらしい。指揮をされたオーク達は隊列を組み無闇に攻め入ってこないのだそうだ。


ロイさん、リゼさんを含め合流した部隊の攻撃力は凄まじいが隊列を崩すところまでは行かないようだ。こちらの戦力は60人ほどなので小競り合いが続くとジリ貧になるらしい



そんななかで事態が起こった。1人の冒険者が助からないであろうほどの傷をつけられ運ばれてきた。

ルナさんがすぐに駆け寄るも心臓が止まっていたようだ。どんな治癒魔法でも治せないものはあるのだ。


、、、。



俺は先程フォローされた男の子に声をかける。


『この薬を運ばれてくる人に食べさせられるか?重傷ではない限りそれで対処出来るはずだ』


少年はなにを伝えたいのか分かったのであろう。強く頷いてくれた。



そして次いでルナさんに視線を向けるととても心配そうな顔をしている。俺はウインクをして茶化してみたが心配そうに軽く微笑んで口を開いてきた。

『行くのですか?』


『私は、いや俺は少なからず力をもらってこちらに来ました。その力でできることがあるかもしれません。出来るだけ目立たないように行って来ます』


そして俺は少年に渡した皮袋からセンズを2つ取り出し1つは自分のポケットにそしてもう1つはルナさんへ渡した。


『疲れた時に食べてください。多少は楽になるはずです』


そして俺は軽くノビをし少年の頭をクシャクシャとし『まかせるぞ』と声をかける。


怪我を治療した男の人達に子供たちのことをお願いして俺は教会を出発する。





北にて戦闘が起こっているなら横から突撃して隊列を乱すか。

俺は誰も見ていないことを確認し全速力で村の西の出口を出てオーク軍団の横位置を目指した。

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