第1340話 どワンコ教授と犬系ヒロイン

【前回のあらすじ】


 どエルフさんレギュラーの座を賭けたしょーもないディベートが始まる。

 パーティーのレギュラーとして残るのにふさわしい、実績について語るように言われる女エルフ。彼女は、あぐらをかいていた。タイトル的に、エルフじゃない自分がレギュラーから落ちることはないと侮っていた。


 しかし、このパーティにはもう一人、ヒロインになるポテンシャルを秘めた人物がいたのだ。その人物とは――。


「こ、コーネリア!!」


「YES I AM!!」


 コーネリアこと女修道士シスター

 彼女は、ここ近年のファンタジー系作品キャラのヒロインの特徴を備えていた。


 そう、聖女キャラである。


 最近はもう、異世界ファンタジーと言ったら「エルフ」より「聖女」か「悪役令嬢」まである。それくらい人気のあるキャラクターコンテンツ。

 ここいらで一つ、どエルフさんからど聖女さんにタイトル変更したらどうか。


 いや――。


「それに、そこも既に考えてあります。なに、確かにど聖女さんじゃ、ちょっとインパクトに欠けると思います。けれども、ほらそこはこう人文字変えれば……」


【ど性女さん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、エッチでボインな女修道士を助ける。エロエロ巨乳シスターとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~】


「ね?」


「BANされるわ、こんなタイトル!!」


 攻めに攻めてみてもいいじゃない。

 とまぁ、そんなトンチキを繰り広げる、女エルフと女修道士なのだった……。


◇ ◇ ◇ ◇


「だぞ!! そういうことなら、僕だって犬耳獣人キャラなんだぞ!! 異世界に行ったら、犬耳キャラをパートナーにするのが大正解って聞いたことあるんだぞ!!」


「はいはいはい!! エリィはどんなファンタジーでも絶対に必要なお姫様です!! 悪役令嬢も頑張ればできます!!」


「遺跡から出て来たオーバーテクノロジーロボットって、逆にファンタジーではクソデカ需要ありますよね!!」


「……お、お前ら!!」


 次々に女エルフの座を奪いに来るパーティーメンバーたち。


【どワンコさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、賢い獣人の少女を助ける。ちびっ子博士とはじめるきままなハーレム冒険者生活。~】


【ど悪役令嬢さん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、過酷な運命を背負わされた姫と共に旅に出る。呪われし王女とはじめるきままなハーレム冒険者生活。~】


【ど自動人形さん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、失われし古代文明の自動人形を拾う。機械少女とはじめるきままなハーレム冒険者生活。~】


 どれもこれも今のタイトルより面白そう。

 尖ったセンスが光るタイトルだった。


 やはりエルフは時代遅れ……。


「どうやら、脱落者が一人決まったようだな」


「そうですね。やはり、エルフは時代遅れということ」


「だぞだぞ。長い耳より獣耳なんだぞ」


「お姉たま!! お姉たまの分まで、エリィがんばります!!」


「というわけで、ごめんなさいマスター!! バイバーイ!!」


「ちょっと待てやこら!! ここまでこの作品を引っ張ってきたのはだれやと思うてんねん!! ここで私が抜けたら、この五年間で積み上げてきたものが全部パァになるじゃろがい!!」


「「「「まぁ、言うほど積み上がっていませんし」」」」


「しばくぞこら!!」


 更新する度に評価が入るような人気コンテンツならともかく、書いてる作家の体力を悪戯に消耗するようなコンテンツに慈悲はなかった。哀れ、どエルフさん脱落。

 最初の一人目の追放者はこうして決まった。


「あ、それじゃ俺も抜けさしてもらって良いかな。ゲストキャラは、外野で待機してた方がいいだろ」


「ハロ。お前はほんと昔から、空気も読まずにそういうこと言うよな。普通に、てめぇが仕事したくないだけだろ……」


 続いて、自ら馬車行き――もとい、【どこでも扉】の向こう行きを志願した盗賊。

 これで、残すところはあと一人、リストラするだけでよくなった。


 はたしていったい誰がリストラされるのか。


 女修道士シスター、ワンコ教授、新女王、ELF娘。

 四人の間に緊張が走る――。


 と、その時、女修道士が降参するように手を挙げた。


「やめましょう。こんな醜い争い。大切な仲間の誰かを蹴落とすなんて、私にはできません」


「だぞ、コーネリア!!」


「コーネリアお姉たま!!」


「コーネリアどの。マスターとは違って、なんと心の広い方。やはり、おっぱいが大きい人は心も広い!!」


「……おっぱい関係ないやろがい」


「こんなことで争うくらいなら、私がパーティを抜けます。どうか、みなさんで新大陸を救ってください」


「だぞ!! 何を言っているんだぞ!! 回復役のコーネリアがいなくなったら、誰がこのパーティーの危機を救うんだぞ!! それなら――考古学者で、いまいち出番に乏しい僕が抜けるんだぞ!!」


「だめですケティお姉たま!! だらしないお義姉さまと違って、真のこのパーティの頭脳のケティお姉たまがいなくなったら、ちょっとしたトラップなんかに対応できなくなってしまいます!! ここは――やはりエリィが抜けます!!」


「待ってください!! エリザベートさんはそもそも、魔神シリコーンの巫女の血を色濃く継いでいるからこそ、守る為にこの旅に同行したはず!! ここで中央大陸に戻ってしまったら、なんのためについてきたのか分かりません!! 仕方ありません、ここはまだ出てきたばかりで読者の印象が薄い――この私が!!」


 我ぞ我ぞとこぞってパーティーを抜けようとする女修道士シスターたち。


 その仲間を思いやる姿に、男騎士の目頭が潤んだ。

 自分のパーティーメンバーは、こんなにも仲間のことを思っているのだと。

 そんなパーティーメンバーに恵まれて、自分はなんと幸せなのだろうと。


 そして決意した――。


「よし分かった!! では俺が抜けよう!! 一番アホの俺こそ、このパーティに不要な存在!!」


「「「「どうぞどうぞ!!」」」」


 誰も引き留めなかった。

 この流れなら、絶対に引き留めにくると思っていたのに、勧められてしまった。


 それは見事なダチョウ○楽部トラップ。

 ○ちゃんが引っかかる奴だった。


 黄○竜だけに。


「そんな!! ここは止めるべきシーンだろ!! 『ティトさんこそ、このパーティーの肝心要!! こんな所で抜けるなんてありえない!!』と!!」


「いい気になってるんじゃないですよティトさん!! これはこの作品の出番をかけたドラフト!!」


「だぞ!! 自分だけ絶対に残るみたいな雰囲気出して、許せないんだぞ!!」


「ティトさんだけずるっ子です!!」


「そうだそうだ!! マスターと一緒にお前も中央大陸に帰れ!!」


 哀れ、追放されたのは男騎士の方であった。

 男騎士パーティの女性陣は逞しい。女エルフを筆頭に、一筋縄ではいかない奴らばかりなのだった。


「ふははは、ざまぁないわねティト!! お前も私と同じで、この物語に必要ない存在なのよ!!」


「嫌だ違う!! 俺は、俺は――この物語の主人公なんだ!!」


 追放モノの元リーダー(追放する方)のような叫びが新大陸の青い空に響いた。


 ざまぁ。

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