第1014話 ど凶戦士さんと宇宙戦艦オーカマ

【前回のあらすじ】


 エールフエルフ、どスケベ種族!

 エールフエルフ、耳年増!

 エールフエルフ、ロリババア!

 エールフエルフ、快楽落ち!


「うぉい!! やめろや!! 替え歌も著作権とかあるんやぞ!! 訴えられたら負けぞ!! もっと慎重にパロディはしろや!!」


 何がですかね。ただ、エルフエルフと連呼して、不穏な台詞を言っただけですが。

 アダルト系ファンタジー作品でよく見る、エルフの特徴を連呼しただけなのに、なんでそれがパロディになるんですかね。

 まったく、変な言いがかりはよしていただきたい。


 バイトとか高収入とか何も言ってないでしょ?


「言うとるやろがい!」


 とかいうやりとりは置いておいて。

 ついに破壊神の都市へ潜入することになった女エルフ達。彼女達を街まで送り届けるのは、ピンク色に女エルフの顔がでかでかと印刷された送迎バス。

 さらに高収入バイトの宣伝付き。


 はずかしいことこの上ない潜入方法だが、これしか方法がないのだから仕方ない。

 いやよいやよと言いながらも、女エルフとその仲間達はそんなどエルフカーに乗り込むのだった。


 はたして彼女達は世界を救うことができるのか。

 謎の女――少佐はいったい何をしようとしているのか。

 破壊神、そして知恵の神の思惑は。


 そんな話は一旦置いておいて。


「え、ちょっと、置いておくの?」


 今回は久しぶりに、中央大陸に話の舞台が移動します。


◇ ◇ ◇ ◇


 中央大陸連邦共和国首都リィンカーン。

 男騎士達が防衛した中央大陸の要の都市の上空に、今、謎の飛行物体が襲来していた。白く四角い筐体を繋げてできたそれは、脚を折って座った馬のようにも見える。

 リィンカーンの住人達は空を見上げ、その飛行物体を指差し言った。


「木馬だ!!」


「白い木馬だ!!」


「三角木馬だ!!」


 ファンタジーの世界に住む者達は初めて見るその巨大な飛行物体。

 魔神シリコーンと暗黒大陸の軍勢が襲来したことの事後処理に追われていた連邦共和国騎士団は、急遽隊長を参集するとこの飛行物体への対応を協議した。


「皆、復興作業の忙しい中、よく集まってくれた」


 議長を務めるのは第一騎士団の隊長を務めるバルサ・ミッコス。


「頼まれて調査をしてきましたが、アレは間違いなく神代の兵器ですね。七つの神々かあるいはその眷属かはわかりませんが、厄介な相手なのは間違いありません」


 連邦共和国騎士団から調査を受け持ったのは、リーナス自由騎士団の暗部を統括する男。逃がし屋カロッヂ。

 そして、その報告内容から推測される、戦闘になった際の被害予測について説明するのは軍師カツラギ。傍には主任研究員のバトフィルドが詰めていた。


 その報告に黙って耳を傾ける連邦共和国騎士団の隊長たち。


 誰も彼も満身創痍。

 ここ数日の首都リィンカーンの復興作業に追われ疲労困憊にもかかわらず、その報告を聞き流す者はいなかった。流石は大陸最大規模の騎士団の長達だけはある。


 おおよその戦況予測を済ませると軍師は続ける。


「まだ先方の出方が分からないのでなんともですが、ティト指導者マスターたちの試練と何か関係があるかもしれません。もしかすると、彼らが神々と何か取引をしたのかも」


「身内の愚痴になっちまうが、ひとつ連絡くらい寄こしていただきたいものですね。ゼクスタント団長も、いつの間にやらどこかに姿を消しちゃうし」


「最悪、リィンカーンの街を放棄する必要があるかもしれません。あれだけの質量。普通に落下しただけでも、この街を破壊するだけのエネルギーがあります」


「……むぅ」


「参りましたねバルサ老。軍隊や刺客を送り込まれるならともかくとして、あのような面妖な兵器が来ては、我々ではどうしようもない」


「もはや我らに抗う術はないというのか。このまま、あの謎の飛行物体に連れさらわれて、あれやこれやと身体を調べられるくらいなら――くっ、殺せ!!」


「アレイン様、まだ目的は分からないと報告されたばかりじゃないですか」


 しかしながら女騎士の話が一番あり得そうなものだった。

 空からの未知の侵略者。えてして彼らは、地上の生命体をかっさらい、そしてその身体を調べるような行動に出る。


 くっ殺のしどころかどうかは別として、いい線は行っていた。


 視線を交わす連邦共和国の隊長たち。

 男騎士達から大陸の平和を任された彼らである。英雄には敵わぬと身の程を弁えながらも、自分の使命を投げ出したりはしない。どうにかすることはできないだろうかと、彼らは最後まで考え抜くし戦い抜く所存だった。


 とはいえ、情報が少なすぎる――。


 せめてあの空を飛ぶ謎の飛行物体を操る者達と、会話を交わすことができたら。

 そう誰もが思ったその時だった。


「た、大変です、バルサさま!!」


「……どうした?」


「そ、空に巨大な人影が!! あの謎の飛行物体に跨がるように!!」


「「「なんだって!!」」」


 それはちょっと卑猥な格好すぎるんじゃないか。

 真面目な会議にもかかわらず、いい大人の隊長達はつい想像してしまった。背面部が三角形に尖っていて、なるほどそういう木馬に見えなくもない――と、実はみんな思っていた。思っているけれど、言ったらどエルフ判定されるので言えなかった。


 ツッコミ不在の恐怖。こういう時、空気を読まずにずばりとエロネタを指摘してくれる、女エルフがいないのが心許なかった。


「巨大な人影が現われただと?」


「女ですか、それとも男ですか?」


「カーネギッシュどの、それは今、この会議で確かめる必要のあることですかね? 俺は女に五百ゴールド賭けます」


「なにやってんのよカロッヂ!!」 


「ありえない。あの木馬を跨ぐほどの巨大な人間だなんて。そんなの、物理学的に存在するはずがないわ――待って、もしかして!!」


 神からのメッセンジャー。

 そう魔脳使いが呟いたが早いか、隊長達は一斉に会議室を飛び出した。

 目指すは謎の飛行物体がよく見える、騎士団本部庁舎の屋上。


 蒼天に浮かぶ白く四角く、そして頂点が三角に尖った空飛ぶ木馬。

 見るからに異質なその上に、現われたのは白い服を着た人間。

 黒い髪につぶらな瞳をしたそいつは、リィンカーンの街を見下ろすように、冷ややかな視線を振りまいた。


 間違いない――。


「「「なんだ、男かぁ……」」」


「アンタ達ねぇ!!」


 老将軍、凶戦士、逃がし屋が肩を落とす。

 白い木馬に跨がっているのは、間違いなく男だった。


 男だが――彼らが見たことない格好をした異邦の将だった。

 間違いない、彼は自分たちとは異なる場所から来た、そして、おそらく神々に関係のある人物。

 その時、木馬にまたがる男が口を開く。


「中央連邦大陸に住まう人間たちよ。お初にお目にかかる。私は、創造神オッサムが鋳造した宇宙戦艦オーカマ艦長ブライト少佐という」


「オーカマ艦長ブライト少佐」


「艦長? すると、アレは船なのか?」


「いや、それだけじゃない。少佐ということは軍隊。少なからず組織が存在する」


「……バトフィルド、解析をお願い。皆さん、私が交渉を行います」


「もうやってるわ。できるだけ交渉を長引かせて」


「なんてでかい巨人なんだ!! 敵わない!! 今から牛乳を飲んでも、間に合わないよ――くっ、殺せ!!」


「落ち着いてくださいアレインさま!!」


 混乱する騎士団。

 はたして、謎の艦長の正体と目的は――。


「気さくにブライト少佐メジャー。略して、ブラジャーとでも呼んでくれ」


「「「……ブラジャー」」」


 とかの前に、どうにも彼もトンチキ側のキャラクターらしかった。

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