第765話 どからくり娘さんと食パンの食べ方

【前回のあらすじ】


 お見せできない過激さでまさかのテイスティングシーンをすっ飛ばした赤バニからくり娘。

 そのエロさ、発禁級。

 なんにしても、若人たちも見ているこのどエルフさんでは、お見せできない痴態っぷりに、あっぱれ彼女に第一試合の勝敗は上がったのだった。


「……いや、この作品、そんな若い人見てないでしょ。世代を選ぶ感のあるネタばっかりだし」


 かくして、普通のウワキツヒロインとして、十代のヒロインだったら着ていてもおかしくないきゃぴきゃぴ装備をさせられる女エルフ。

 アラスリ女エルフに、その格好はきついぞ。

 けれど、ニッチな需要があるぞ。

 若作りが強すぎるぞ。


 年増だなどエルフさん、年増だ。


「いや、アラスリってまだエルフの方じゃ若い方なのよ。というか、エルフは三百歳を過ぎてからが本物っていうか」


 あら、行き遅れた女性が言いそうなお言葉。

 ぜひそれを本編でも発揮していただきたいところでございます。


「……行き遅れてないもん。ティトがいるもん」


 そのティトさんも、このままじゃお婿さん(意味深)されちゃうかもしれませんけどね。


「ヤダァーッ!!」


 という訳で、ウワキツがウワキツを呼ぶ、嵐のウワキツヒロイン格付けチェック。

 二番勝負はじまります――。


◇ ◇ ◇ ◇


 二番勝負の先手は、先ほどの勝者である赤バニからくり娘である。

 再び、衣装を変えて赤バニからくり娘。彼女は今度はボディコンスーツではなく、チャイナドレスに身を包んでの登場であった。


 しかし出落ち芸は二度は通じぬ。

 今回は、割とまともな服装だなと、男騎士たちは華麗にスルーした。


「しかしあれじゃのう、赤いバニースーツを着たと思ったら、水色のチャイナスーツを着たりと。色のチョイスがちょいちょい奇抜じゃのう彼女」


「そうですね。俺は赤バニより、白バニの方が好みなんですが」


「モーラちゃんが着たら真っ白白にならんかのう。それでええんか、ティトの?」


「いや、モーラさんの場合は、こう、胸元で止めるタイプの奴を着てもらってですね。めくれるかめくれないかのエロチシズムを楽しむという、そういう方向性で」


「業が深い。業が深いのう」


 愛が深いと言って欲しい。

 なんにしてもやっぱり男騎士、女エルフへの熱い思いは変わらない。

 まぁ、彼女は何を着ても似合いますけれどねと、歯が浮くような言葉を吐いて、男騎士は照れ臭そうに鼻頭を擦るのだった。


 本当に砂糖が幾らあっても足りんくらいに甘々じゃのうと風の精霊王。


 そんな他愛もないやり取りをしている間に、チャイナ元赤バニからくり娘は、テイスティングを行うテーブルの前に移動して――。


「百裂脚!!」


「「ちょっと待て!!」」


 またしてもいきなり、ちょっと待てボタンを押させるネタを放ってきた。


 そう、今回は露出控えめ。

 更に言えば、生足を隠すように茶色いタイツなんか穿いちゃってまぁと思った所にこれである。完全に不意打ち。


 それは見事なまでのコスプレ春の麗であった。


春〇チュン〇ーじゃぁ!! あれ、青チャイナドレスと見せかけて春〇チュン〇ーのコスプレじゃぁ!!」


「うえぇえっ!! ちょっとぉっ!! そういう不意打ちやめえやぁ!!」


「また絶妙な所をチョイスしたのう。キャ〇ィじゃなくてさく〇じゃなくて春〇チュン〇ーって」


「セックスアピールとしてはなかなか弱い所はある。あるけど、春〇チュン〇ーの知名度は抜群よ。それこそ、スト〇でお父さんから子供まで幅広く知ってるからね」


「スト〇でね」


【アイテム スト〇: 愛しさと切なさとストッキングとだけが思い出な感じの有名な叙事詩。その中で語られる、青きチャイナ服をまといて茶色いタイツ履きし者として春〇チュン〇ーは絶大な知名度を持つ。ただし、あまり多く語り過ぎると、スケベ認定を受けるため、多くの人は――あぁ、春〇ね春〇、女性が使う感じのキャラクターの――と答える、業が深い存在である】


 また衣装ネタと思わせてまさかのコスプレ。

 妙齢の女性のコスプレには、えもいわれぬ破壊力があるのは周知の事実。さらに、それが版権モノであればあるほど、加速度的にヤバさは増していく。


 これはまた、有効一点か。

 そう思った男騎士だったが――。


「いやけど、春〇かぁ。意外性はあるけれど、ウワキツってとこまでではないなぁ」


「あ、カイゲン、そこまで刺さらんかった」


「刺さらんかった。背水の逆転劇、ギリギリ刺さらんかった。凌ぎ切ったわ」


 これがおもいがけず風の精霊王には不発。

 まださく〇の方が刺さったかもしれんのうという言葉と共に、止まったVTRは再開されるのだった。


 ふむ、と、男騎士。

 どうやら勝負が変われば流れも変わる。


 食パン勝負であえて、食パンと縁のなさそうな、チャイナ服というチョイスをしてきた辺りに、元赤バニからくり娘のおごりが見えたか。もしやこの勝負逆転できるかもしれないなと、男騎士は静かに思った。


 思った、その矢先。


「それではさっそく一つ目、いただきマンモス」


「「ちょっと待て!!」」


 容赦なく繰り出される昭和の台詞に彼らはちょっと待てボタンを押した。

 更に、春〇の顔でひょっとこ顔をする元赤バニからくり娘にモザイクをかけた。


 食パン。

 丸めて細くすると、いかにもそれっぽくて、モザイクが逆にやばかった。


「本物の円盤とかでやってそうなコスプレで、ひょっとこはあかん!!」


「深夜でも流したらあかん奴じゃ!!」


 あかん奴だった。

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