第736話 ど性郷さんと黒ニンニク
【前回のあらすじ】
大性郷暁にち〇。
必殺のG幻流を破られた大性郷。一の太刀、二の太刀を破られて挑んだのは、相手の隙を突く三の太刀。
「
ぽろり股間をまろび出し、その衝撃により強制的に隙を作り出す技であった。
だが、甘い、あまりに甘い。
からくり娘にもとより心などないのだ。
中年おっさんのちん〇を目の当たりにして、驚くこともなければ臆すこともない。ただ、露になったその弱点に向かって、冷徹に匕首を振るってからくり娘。彼の自慢の大ふぐりと竿を、その身から切り離したのだった。
これには思わず――。
「おっ、あぁあああああああああっ!!」
「痛てぇっ!! あれは痛てぇっ!! もうちんち〇ないけれど、心のちんち〇が痛くなる感じの奴や!! あかん奴や!!」
男騎士も魔剣もタマヒュンであった。
◇ ◇ ◇ ◇
【魔法 タマヒュン: 即死魔法。男だけに効く、精神系の即死魔法。軽いモノから重いものまで、皆が楽しめるものからXレートなアダルトなものまで、いろいろなタマヒュンがあるけれど、想像してしまうと死ぬ。たまに、それで興奮してしまう奴もいるが、それもそのはず。死を前にして種を残そうとするのは人間のまっとうな生存本能である。しからば、そこに性的興奮を(ry】
とにかく恐ろしい即死攻撃を見せられた男騎士と魔剣。
だが、二人は持ち前の強靭なメンタルによって、その精神的な死をなんとか乗り越えたのだった。いや、男騎士的にはだいぶまずい状況だったが、それでも何とか、彼は持ちこたえてみせたのだった。
あと少し、もう少し身近な所で見ていたら即死だった。
あるいは大性郷のそれが、自分たちのそれと見比べて同じくらいだったら、自分の身に置き換えてしまっていたたまれなくなっていただろう。
しかし、大性郷のそれはいささか常人のそれより大きいと言って差し支えない――むしろ規格外と言えるレベルのいちもつである。
ぼろりと落ちてもなんだか現実感がない。
むしろなんかこう、男のそれとは思えない感じがしたので、その分ダメージが軽減された。
多少無理のある理論ではあったが、とにかく男騎士たちは即死判定を免れた。
ふぅと額の汗を拭って――それから正気に戻る。
肺腑にちん〇を斬りつけられて、無事な男があるやろうか。
大性郷、ここに息絶える。
いや、かろうじて胸を揺らしているが、隙間の空けられた肺腑からは、明らかにおぞましい音が抜けていた。
これはまずい――。
「性郷どん!!」
「ちん〇でかいおっさん!! おい、もう無茶すんな!! ここまでだ!!」
「まだに申す!! おいどんの命、まだ使い切るには早いでごわす!!」
そう言って、また剣を構える大性郷。
一の太刀も通じぬ、二の太刀も通じぬ。
とっておきの三の太刀はむしろ自分を窮地に追い込むに至った。
そんな状況で尚、まだ立っていられるのはなぜか。
もはや大性郷、ここに命を投げ捨てる覚悟ができているからに他ならない。
ぐっと顔に脂汗を滲ませて大性郷。再び剣を大上段に構えると、彼は一の太刀の構えに戻った。通じぬと分かっていても、それでも彼はその構えを選ぶ。
「分からなかったか。その太刀、私には通じぬということが」
「百も承知。なれど、幾重の戦場にて使い込んだこの技こそオイが持つ至高の技にもす。ならば最後の最後まで、この一刀にて運命に挑もう」
「その覚悟や見事。しかしながら、人の身とは憐れなものよな」
口だけで笑う黒髪のからくり娘。
その前に立ちはだかって仁王立ち。
もはや背中越しにも見えるおおふぐりを失って大性郷、ここは通すまじと目の前のからくり娘を睨み据えた。
背中が語る決死の覚悟。
もはや男騎士たちも彼が何をしようとしているのか。
言葉を交わさずとも分かった。
男騎士。
その背中に応えるべく声を張り上げる。
「総員撤退!! モッリ水軍の残りの兵は俺たちパイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコムの船へと逃げてくれ!! 速やかに小野コマシスターズから離脱する!!」
「……戦略的撤退か」
「ティト殿の下知の通りにせよ!! ここより、モッリ水軍はパイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコムの指揮下に入る!! 各々、己の命をここは大事にせよ!! 報復の機会はまだいくらでもある!!」
逃げよ、という三男坊の声と共に、生き残った数少ないモッリ水軍の残党が、一斉に海へと飛び込む。
そう、大性郷はここにからくり娘――『クマ』たちをひきつけて、囮になる覚悟だった。
男騎士の声に応じて、動き出すモッリ水軍の面々。
散り散りに逃げる彼らをしり目に、男騎士もまた人の姿に戻って褌をひきしめる。寂しくも逞しい大性郷に視線を向ければ――。
「ティト殿。形見と思っておいどんの黒ニンニクを持っていてはくれまいか」
「……黒ニンニク」
「……黒ニンニク」
大性郷が静かに語る。
ぽろり転がった黒ニンニク。
たしかに、サイズは玉ねぎ並みではあるが、見た目は確かに黒ニンニク。
熟成された感のあるものだった。
「……黒ニンニク」
「……黒ニンニク」
「頼むティト殿。後生でごわす」
そうは言っても黒ニンニク(暗喩)である。
男騎士、いくら形見と言っても、ちょっと持っていく気にはなれない。
なれないが――。
「くっ、これが武士の情け」
「情けというか、情けないというか」
「はやくするでごわす!! おいどんが持ちこたえられるうちに!!」
死を覚悟した男に強く迫られては逆らえない。
おそるおそる、男騎士は黒ニンニクを拾い上げると、それを小袋に入れて、さらにもう一重に小袋に入れてから、背嚢に放り込んだのだった。
うむ。
【ティトハクロニンニクヲテニイレタ】
「手に入れたくはなかったなぁ」
「ひでえ形見もあったもんだ」
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