第674話 ど男騎士とまろびでる

【前回のあらすじ】


 男騎士、社会の窓から大切なものがまろびでる。

 今回、知力1の刃――『男だから』。


 はたして、ティトは(レーティングや著作権的に)大丈夫なのか。


「……鬼を滅する刃のものにハマっているとは聞いていたが、よもやこんな恐れも知らぬパロを編み出すとは。正気か、ここはカクヨムぞ?」


 いやー。


 〇治郎くん可愛いですね。ひたむきで見ていてなんというか元気になります。

 他の登場人物もいい奴ばかりで。柱とかも抜群にキャラ立っていて。

 富〇柱のポンコツぶりがなんともなんともですが、やっぱり僕はおばみつがお気に入りですね。なんかもう二人が出てくるだけでほくほくします。


 味方の鬼に対する並々ならない執念もさることながら、敵の鬼にもそれぞれそうなるだけの悲しい過去があって奥深い。いやはや、みんな何かしら辛いものを抱えている。それに飲み込まれたり、それに立ち向かったり。時代は大正ですが、現代社会の辛い世相に染みる話じゃありませんか。


 ほんとね。

 あんな健気な子が社会の荒波に揉まれて疲弊して、最後に悪落ちしたら――。


「不穏になることを言うな!! そういう漫画とちゃうやろ!!」


 あるいは、妹が鬼になったというのはすべて彼の妄想で、常に天真爛漫なのもそういう病気で――J〇KER的な。


「見に行ったのか!! あのワナビメンタル崩壊映画を見に行ったのか!! あかん言うたやろ!! 中途半端なワナビが見ると重傷を負うって!!」


 ――頑張れ頑張れkattern!! お前はやればできる長男だ!! ここまで頑張ってどエルフさんを更新してきた!! そして今週も、これからも、更新し続ける!!


 そして、なんかあかん感じに壊れる。


 救いはないのか。


「肋骨折れるレベルの重症やんけ!! 疲れとるんかい!! たまには休め!! 正月ぞ!!」


 とまぁ、そんな感じで。

 パロディは今週も本編ではそこそこ。

 紅海の死闘が第二戦――はじまります。


◇ ◇ ◇ ◇


 男騎士が繰り出したのは中段の横薙ぎ。

 しかしながら、鞘による抵抗とその解放による加速を使う抜刀術であった。


 抜刀術の妙とは、この鞘による抵抗のさじ加減である。鞘の鯉口に剣先をひっかけ、溜めることによって神速の一太刀を繰り出すのだ。


 勢い余ってぽろりまろびでるとは言ったが、まさしく言葉の通り。

 本来ならばぴしりと刀身を押さえつけるべく引き絞られた鯉口。まさしく剣のチャック。そこから一刀を力任せに引き抜く。


 その解放感たるや――。


 失礼。


 その破断によるエネルギーたるや通常の剣の一振りとは格段に違うものとなる。


 一方で、理以上の力を扱うとなれば、当然のようにそれを御すのが難しいという問題が生じる。特に、破断エネルギーはその性質上、瞬発的なエネルギーの挙動を定めるのが難しい。


 故に、抜刀術には精妙無比な剣のコントロール技術が必要。

 爆発的に高まったエネルギーを正確に捌き切るだけの、確かな剣の技量が必要なのだ。集中力が必要なのだ。


 剣と技に対する習熟。

 それなくして扱うことのできない技。


 故の絶技。

 故の必殺。


 抜刀術とはまさしく、奇跡に奇跡を重ね合わせて繰り出す、人間の技の域を超えたものに違いなかった。


 閑話休題。


 はたして、男騎士。

 剣の道に生き、数多の修羅場をくぐり、その腰に結わえた愛刀の多くを、自在に操り勝利を掴んできた男。

 そして、戦士技能レベル9の化け物。

 そんな彼にとって抜刀術はもはや操れぬモノではない。


 その術利をもはや十全に彼は自分のものとしていた。


 神速精妙にてはじき出されたその剣閃は巨人男の下半身を強襲する。

 すわ、戯れのような技名とはともかく、男騎士の素早く鋭いその一撃は、半歩以上の間合いの踏み込みを経て、巨人の身を斬り裂いた。


「ぐぉおぉっ!!」


「技を受けたが判断の誤りだったな東洋の巨人――しかし安心しろ!!」


「なにぃっ!!」


「峰打ちだ」


 そう男騎士が呟いて鞘に魔剣エロスを戻す。

 先ほどその刀身をはじき出した鯉口に魔剣の唾が入るやキンと甲高い音がする。


 するとどうだろう。

 布がはじけ飛ぶような音と共に、巨人の下半身で爆風が巻き起こった。


 神速の剣閃により切り込むこと十回。

 男騎士が繰り出したのはただの一刀ではない。

 抜刀による剣の勢いを殺すことなく、目にも留まらぬ速さで太刀筋を編んだ彼は、返す刃を都合10回巨人の身体に打ち付けた。


 峰打ち。

 刃先を立てないその一撃は、巨人の下半身の身体に蓄積され、そして一呼吸を置いて発散される。


 自分の意志とは別に震える下半身。

 その異様さに気が付いた時には既に遅し。


 巨人のビロードのズボンは、隆起する筋肉の奔流により内側から激しくかき乱されて――次の瞬間には爆散していた。


 哀れ、巨人の巨〇ンがそこにぼろりとまろびでる。


「見たか、これが俺の鎮弧慕浪しんこぼうろう!!」


「ほぉおぉ!! なんと!! これは、不覚!!」


【必殺技 鎮弧慕浪しんこぼうろう: 浪に揺れるブイのごとくぶらぶらり、その下半身を露出させることにより男の戦う気力を萎えさせる対男性用特攻奥義。汝は男。おまんは男。おまんなのに男。なんにしても、男ならばこの技を受けて無事では済まない。女だったら余計にタダでは済まないが、社会的に使った方も抹殺されてしまうから使えない。まさに、男のための男による、男殺しの必殺技】


「ガリバー伊能!! その巨躯に奢ったのがお前の敗因だ!! どんなに強い力も、セクハラの前にはあまりに無意味!! さぁ、その股間からぼろりとしたものを、防ぎながらこれ以上戦うことができるかな!!」


「……ふぅっ!! 笑止!! 護りながらだと!! そんな心配は不要!!」


「なんだと!!」


 そう言って腕を組み仁王立ちする巨人。


 南天に輝く太陽を頭から浴びて、微笑むその金髪の巨人は、股の間に生えそろった稲穂の群れを海風になびかせながら、自慢げな視線を男騎士へと注ぐ。

 その表情には少しの恐れもない。


 そして、その股間にもまた恐れるものは何もなかった。


「な……そんな!!」


「バカな!! そんなものをまろび出して平静でいられるだと!! この男――心臓まで巨人だというのか!!」


 男としての尊厳ぶら下がる股の間。

 既に守られていると言った彼の股間には――。


 そう!!


 鞘に収まった刀がぶら下がっていた!!


 いや!!


 小刀が!!


「我が股間、見るべきものなど何もなし!! 子供のちん〇に恥ずかしいところのあるやろうか!!」


 最低のキメ台詞に最低の絵面。

 だが説得力はあった。


 子供ちんち〇に罪はない。

 罪があるなら、パンツのCMは流せない。

 それは異世界においても通用する道理に違いなかった。

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