第408話 ど男戦士とクリスタルエルフキング

【前回のあらすじ】


 チ〇チ〇チ〇チ〇。


「おいっ!!」


 チ〇チ〇チ〇チ〇。


「やめろっ!!」


 これでいろいろと伝わってくれるそうです。


「ろくでもない小説と作者だってことしか伝わらんわ!!」


※ 個人的な見解を述べさせていただければ、擬音一つでガタガタ言ってんじゃねえよという感じです。どういう経緯か詳しくは知りませんが、読者層を意識して表現を工夫するのは当たり前のことであり、その結果としてこうなったというだけのこと。逆にこれが現実として許容・支持されているのなら、こういう表現を好むあるいは許容する読者層を嘲笑しているという訳であり、それは作者ではなく、顕在しているマーケット――つまり読者の軽視や否定に他なりません。そういう風に小説の在り方について、斜に構える見方を続けた結果が昨今の読書離れであり、出版業界の零落の原因ではないかと個人的には思っております。だって、こんなに世の中にはWEB小説や文字が溢れていて、それを読む人が居る訳じゃないですか。おかしい話じゃない。読む人はいるのに、本が売れないなんて。そこら辺のギャップを早急に出版社は埋めるべきであり、同時に保護・育成していく必要があるのではないでしょうか。


「なんか補注でいいことっぽいこと言ってる――けどネタにしてるじゃん!!」


 すみません。

 それはそれとして、面白いと思ったのでネタに使わせていただきました。


◇ ◇ ◇ ◇


「まぁ、感動の再会はこの辺りにしておいて」


「……いうほど感動もなにもなかったけれど」


「ちなみに、エルフの本当の名前には、悪魔が逃げるようにと、あえて卑猥な名前を付けることが、あったりなかったりやっぱりないんだ」


「またそういうよそ様に迷惑かけるネタ!!」


 女エルフが兄を容赦なくどつき倒す。

 もうすっかりと、兄妹らしく距離を詰めた女エルフとキングエルフ。


 そんな二人のやり取りを、生温かい目で男戦士たちは見守った。


「なんだその目は!!」


 それはさておき。

 男戦士が言った通り、感動の再会はこの辺りにしなければならない。

 なぜならば彼らはラブコメやったり、感動の再会をしたりしている場合ではないからだ。今まさに暗黒大陸の脅威が、中央大陸に迫っており、それに対抗するための――益荒男を集めなければならない状況だったからだ。


 いつまでもうだうだとやっている訳にはいかない。


 男戦士があらたまってキングエルフの方を見た。


「さて、風の精霊王の力を借りることには無事に成功した訳だが。これからいったいどうすればいいのか」


「それは私に問うよりも、風の精霊王に問うた方がいいだろう」


「ふむ」


「なんか最強って前評判だったけど、会ってみたら間抜けな感じだったわよ?」


「だぞ、そうなのかだぞ?」


「最強の精霊王。どれほどの方かと思ったのですが、そんなこともなかったのですか?」


 言葉に詰まる女エルフ。

 まぁ、実際に呼んでみるのがいいだろう、と、男戦士がすぐに構えた。


「おーい、カイゲン」


 なんでもない感じに男戦士が精霊王の名を呼んだ。

 途端――。


「……だぞ?」


「そらがどんよりと暗くなってきたような」


「というか、稲光が!! 大変です、嵐ですよ、嵐がきますよ!!」


 空は瞬く間に暗転し、どんよりと青みがかった分厚い雲に覆われた。雲の合間を走るのは稲光。それが、けたたましい音と共に森へと落下し――落下地点に居た鳥たちが一斉に羽ばたいた。


 なんだこれは――そう思って男戦士たちが尻ごんだ中。


「はーっくしょん、呼んだかのう」


 まったくそんな天候の変化など気にしない感じで、風の精霊王が空から男戦士たちの前へと舞い降りたのだった。

 そう、洞窟の中で会った間抜け面と変わらない感じで。


 これには――まさかこれが精霊王の力――と、驚いた男戦士たち全員、その場につるりとずっこけた。


「なーんじゃお前さんら。人を呼んで、そんな新喜劇みたいにずっこけるとか」


「いや、むしろあんたがなんなのよ!! なにこの天気!! ちょっと――実は本当の姿を隠していて、それが解放されたとか、そんなことを思ったじゃない!!」


「本当の姿? 解放? 漫画の読み過ぎじゃないかのう?」


「お前がそれを言うか!!」


 今にも風の精霊王をぶん殴ろうかという感じの女エルフ。

 すかさずいつものように女修道士シスターが止めると、やれやれどっこいせと、風の精霊王は契約者の男戦士の前に立って腰をさすった。


「いやぁ、まぁワシ、風の精霊王じゃからね。究極的な雨男なんじゃよ」


「……ほんともう、そういう迷惑な設定どこから出てくるのよ!!」


「濡れスケになって風邪までひくんじゃよ。やってらんない。へーくしょん」


「もうやだ!! 誰かなんとかして!!」


「……まぁまぁ、モーラさん。今から力を借りなければならない相手なんですから、そこは穏便に」


「そうだモーラさん。そして風の精霊王カイゲンよ。今こそ力を貸して貰おう」


 男戦士がいつになく勇ましい感じで言う。

 天が鳴き、鬼を前にして、なかなかに様になったその格好とセリフに、パーティおよびエルフキング、そして風の精霊王も真面目な顔をした。


 ギャグパートはここまでである。


「お前を呼んだのは他でもない。西の王国の首都へと移動したいからだ」


 締める時は締める。

 男戦士はカイゲンにはっきりと彼を呼んだ目的を告げた。


 そしてそれにまた真面目な顔で精霊王も応える。

 ちょっと顔つきが、二次元的なモノから、彫を感じさせる3D的なモノに変わったような――そんな感じであった。


「お安い御用じゃ。ワシの力にかかれば、お主らを西の王国に風で運ぶくらいなんということはない」


「本当か?」


「本当じゃ。ただ、道具は必要じゃがのう」


「……なに!?」


「ちょっとちょっと、それは聞いてないわよ!!」


「だぞ、移動に道具が必要なんて、そんなの初めに言って欲しいんだぞ!!」


「最強の精霊王の名が聞いて呆れます!!」


 突然に精霊王が突き付けてきた条件に、女エルフ一同が口々に彼を罵る。

 それに対して、へーっくしょんとくしゃみを返して、風の精霊王は違う違うと申し訳なさそうに首を横に振った。


 何がいったい違うのか。

 落ち着いてまずは精霊王の話を聞こう。

 そう言ってキングエルフが男戦士たちと精霊王の間に入った。


「道具というてもちょっとしたものじゃ。ほれ、何かに乗って移動する方が、こっちも楽なのでのう。絨毯とか、船とか、そういうのが欲しいんじゃよ」


「……なるほど」


「一人ずつ空を飛ぶのではなく、何かに捕まってみんなで飛ぶということですか」


「だぞ。けど、そんな都合のいいモノなんて――」


 その時。

 ふと、キングエルフを男戦士たちが見た。


 女エルフの火炎魔法を食らって爆発したキングエルフの髪の毛。

 そう、エルフだけあって、それなりに毛量のあったそれは――爆発によりいい感じにアフロになっていた。


 クリスタルキングエルフになっていた。


 そうその頭は――。


「乗って飛ぶには」


「ちょうどよさそう」


 そんな感じにもっさりとしていた。

 その下にぶら下がっているキングエルフの顔は真っ青だったが。


 クリスタル真っ青だったが。


「……待て!! フェラリア!! そして、義弟おとうと!! 話せばわかる!!」


「力を貸して兄さん!!」


「連邦大陸の危機なんだ義兄おにいさん!!」


「あっ、あっ、あぁ~~~~~~!!!!」


 禿げになるぅ~~~~~~。


【ティロリロリン♪ ティトタチハキントウンヲテニイレタ♪】

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