第107話 どエルフさんと軟膏
「ピェエエエッ!!」
【モンスター ギロチン鳥: ギロチン状の四角い
上空から
流石に歴戦の戦士、すぐにそれを横に飛んで交わした彼だったが、かすかにギロチン鳥の
敵の
再びギロチン鳥が飛び立とうとした所に、女エルフの放った炎の球が直撃した。
「ピギャァアアッ!!」
炎の球が当たった衝撃と、燃え移った火にギロチン鳥がけたたましい鳴き声をあげる。とどめです、と、杖を振り上げた
「大丈夫なんだぞ!? ティト!!」
戦っている女エルフたちに代わって男戦士に駆け寄ったのはワンコ教授。
あぁ、大丈夫だ、と、
そう深い傷ではないが、放っておけば
「見せてください」
ギロチン鳥の返り血で汚れたロッドを
「あれ、魔法でちょいちょいと直しちゃわないの?」
「歩けない程の傷ではないですから。これなら
回復魔法は、人間の生命力を一時的に引き上げて、無理やりに傷を治す魔法だ。
つまるところ傷は治るが、そのそのためにそれ以外の場所に負担が行く。それは満腹状態から一気に餓鬼状態になるようなもので、回復魔法をかけた前後には、速やかな栄養補給が必要とされるのだ。
流石に
持っていた料理酒で傷口を洗い、乾燥させた薬草を混ぜ込んだ
「なかなか手際がいいな。流石はコーネリアさん」
「とはいえ
よいせと立ち上がる男戦士。
そんな彼に肩を貸しに女エルフが駆け寄る。
気を利かしてか、女修道士が
とんとん、と、ブーツのつま先を地面にたたいて感覚を確認する男戦士。
「――うむ。大丈夫そうだ」
「心配させないでよね、まったく。しかし、こんなこともあろうかと、
「そうか、そういう用途でモーラさんは、この
ほかにどんな用途があるっていうのよ、と、女エルフ。
すると、男戦士がぽっと顔を赤らめて視線を横にそらした。
「いや、その、君が読んでいる本で、
「またあんた勝手に人の本を読んで――使いませんから、というか、いったい誰にそんな
自分のことを心配しているのか、と、あきれた視線を男戦士に向ける女エルフ。
なんだ違うのかと、ほっと胸を撫で下ろす男戦士の肩を、どんと彼女は叩いたのだった。
痛い、と、叫ぶ男戦士に、仲間たちの笑い声が降りかかる。
「まぁけど、この
「いや、何の話よコーネリア」
言って、女エルフはぎょっと目をむいた。
女修道した持っている野太いロッド。その先端に、軟膏を塗りたくっていたからだ。
なんのために――。
「道具のお手入れは大切ですよね。私も、よくこの
「道具の手入れ」
「入れたり出したりしますからね」
ロッドはそんな使い方しない。
いったい、モンスターの何に、入れたり出したりするのだろうか。
女修道士の行動に戦慄を覚えながら、男戦士と女エルフは仲良く並びあって肩を震わせたのだった。
「よし!! これで大丈夫!! 神の愛を注入する準備はばっちりです!!」
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