第78話 どエルフさんと伸びるアレ
「大丈夫ですか、アレインさま!!」
「ララ!! 無事か!!」
手ぬぐいがどうこうというコントを繰り広げている男戦士と暗黒騎士をよそに、しっかりと装備を整えて女湯へと突入してきた少年従士と少年勇者。
情けない大人二人に代わって暴漢たちの前へと立った二人。
ようやくまともな応援が来たことにほっと肩をなでおろす女エルフと女戦士。
しかし――。
「んがぁっ!! 生意気なんだなぁ、俺様たちに立ち向かうとは!!」
「坊ちゃんたち、俺様たちのことを舐めてると痛い目にあうにぃ!!」
悪漢たちもまた引く気はない様子。
はたして、少年たちと悪漢たちがにらみ合う。
先に仕掛けたのは暴漢たちだった。
「お前たちも喰らうにぃ!! 魔法『超重力』!!」
ずしりと少年勇者と従士を襲う強烈な重力。
女戦士と女エルフに膝をつけさせたそれは、間違いなく強力な魔法であった。
ふざけた口調と裏腹に、このダークエルフの実力は本物である。
しかし――。
「――このくらいで何が超重力だ!!」
まず先に立ち上がったのは少年勇者。
彼は腰にぶら下げている剣には手をかけずに、そっと手をダークエルフへと向ける。
喰らえ、と、唱えたが早いか、彼の手から光る棒がダークエルフの腹へと伸びた。
急激に伸長したその光の棒がダークエルフの体を弾き飛ばす。
ぶぇ、と、間抜けな声をあげて、ダークエルフは地面にあおむけになって倒れた。
途端、彼の魔法の効果が切れて、女エルフたちを苦しめていた重力が通常のそれに戻る。
「んがぁっ!? なっ、なんなんだな!? いったい何をしたんだなぁ!?」
混乱するハーフオーク。
その前で、少年勇者は自分の手の中にあるその光の棒を振り回す。
それはやがてゆっくりと形を整えると、剣の形を成した。
「なんと、まさかあれは!?」
「知っているのかシュラト!?」
いつも涼し気な顔をしている暗黒騎士が驚愕に顔を歪めた。
そんな彼に男戦士が問いかけると、彼は少し重たげにその口を開いた。
「――あれこそは、真の勇者だけが使うことができるという伝説の魔法剣!!」
【魔法『オーラソード』: 勇者だけが使うことができる気力と魔力を武器の形に変えて扱う魔法。ソードという名だが剣だけでなく様々な武器に変形可能】
「変化自在の魔法の剣。天賦の魔力操作の才がなければできない魔法だ」
「なんと!! すると、彼は本当に勇者なのか!!」
少年勇者。
武闘大会で語られたその肩書に、少なからず疑問を感じていた男戦士。
しかしながら、その勇者しか使うことしかできないという技を出されてしまっては、疑う余地はない。
一方で、彼よりも驚いていたのは暗黒騎士だ。
さきほどまでのコメディパートなどどこへやら、彼は鋭い目つきで、まるで少年勇者を狙う様に見つめていた。
二人の息子が風に揺れる。
「――しかしだ、魔力と気力を、ということは。つまり、気分次第でどれだけでも大きく、太くできるということか?」
「それだけじゃない。イボをつけたり、逸らせたり、高速に伸縮させたり――まさに自由自在!!」
「絶対に興奮させてはいけない相手、ということだな」
「あぁ、絶対に怒張させちゃいけない相手だ」
「おいオッサンども!! 人の魔法を変なものみたいに言ってくれるな!!」
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