第76話 どエルフさんとマイヒーロー
「なんだなんださっきの音は!!」
「ふっ、女湯の方から聞こえてきたぞ――」
「急ごう!! ララ達に何かあったら大変だ!!」
ふと廊下の方から聞こえてくる男戦士たちの声。
絶対絶命と、おびえていたいた女エルフたちの顔色に生気が戻る。
すぐさま、脱衣所の入り口から顔を出したのは男戦士だった。
「ティト――さん?」
たちまち色味を取り戻した女エルフの顔色だった――が。
それはまたすぐに、永久凍土の氷のように鈍く冷たく青ざめたのだった。
というのも。
「なにがあったモーラさん!! ややっ、なぜ女湯に男が――この変質者どもめ!!」
「あんたが変質者じゃない!! なんで何も着てないのよ!!」
すっぽんぽん。
装備という装備をすべて外し、生まれたままの姿で股間のロングソードを振り回す、男戦士が現れたからだ。
きゃぁ、と、場が騒然としたのは言うまでもない。
「モーラさんが大変だと思って、着るものも着ずにかけつけたんじゃないか!!」
「着るものくらい着ろ!!」
「大丈夫だモーラさん!! 装備で得られる防御力なんて所詮気休め、大切なのは能力値!!」
「気休めでもいいから着ろ!! 能力値より社会常識をのが大切よ!!」
そういいながらも瞳を覆わないのは、この男のバカっぷりというか、アホっぷりというか、この展開に女エルフが慣れているから。
女戦士が顔を赤らめて目を伏せ、少女エルフが気絶する中、二人はしばし激しく罵りあった。
「た、たいへんなへんたいがきてしまっただにぃ」
「ふんがぁ、女湯で裸で乱入なんて、親分でもできないんだぁ」
想像以上のど変態の乱入に心を乱すダークエルフとハーフオーク。
そんな二人を見据えて、男戦士は指をさす。
「貴様ら、どういう了見でここに現れたのかは知らんが、女湯を覗くとはうらやまけしからん」
「本音が出てるわよ。台詞だけでもびしっと決めてよ、もうっ」
「このティトが現れたからにはそうはいかん、この剣の錆にしてくれる――」
そういって、ぐっと、男戦士は自分の何を剣の代わりに握りしめた。
握りしめて、あれ、と、彼は視線を自分のそれに落としたのだった。
「――なんだと!! しまった、装備を持ってくるのをすっかり忘れていた!! これはおれの○○○だ!!」
「誰か、こいつ○してちょうだい!!」
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