466 思い出の街

2016.08/ボイジャー・プレス

<電子書籍> ONLY


【評】 う


● 高い


 中島梓が自作ホームページ「神楽坂倶楽部」において2004年3月1日から3月31日まで連載していたエッセイをまとめたもの。


 内容はタイトルの通り、かつて中島梓が住んでいた街三つについてつらつらと語ったエッセイ。新婚時代の赤坂、大学時代の早稲田、中高時代の大塚について語っている。

 まったくとりとめのない初老の思い出話であり、さして面白いものでもない。というか街の話というより、「あの場所にはこんな飲食店があった」「あの時代にこんなものを食べた」という食べ物の思い出話がほとんとなので、実質的には『くたばれグルメ』の続編と云っても良い。梓は本当に炭水化物と肉と脂が好きなんだな、と思うばかりである。

 コンセプトが曖昧で内容も一貫しておらず、さして面白いエピソードがあるわけでもないため、エッセイとしての質は低い。柔道の練習に行く前にいつも同じところでたまごサンドを買い食いしていた、というエピソードに「わかるわかかる。若い頃の定番の買い食いって妙に記憶に残っているし美味かったよね」と思う程度である。

 もっとも、今作はもともと自作HPで無料で掲載していたエッセイであり、商品・作品としての価値などまったく考えていない文章であるから、作者を責める気はない。いくら作家であっても、無料なら過去の思い出話をだらだらと垂れ流しても責められる謂れはない。

 問題はなんで遺族がこのエッセイをわざわざ電子書籍化したのか、よくわからんところだ。神楽坂倶楽部から電子書籍化するにせよ、ほかにもっと商売として成立しそうなエッセイはなかったのか? しかもこの本、高い。原稿用紙100枚ないくらいだと思うのだが、それで税抜き350円は高すぎでしょ。普通電子書籍って紙よりも割安になるものでしょ、しかも原稿自体はすでに存在しているものを電子書籍の体裁にするだけなんだから、費用だってさしてかかるまい。表も中島梓が生前に描いたものらしいし、いったいどこに費用をかけてこの値段にしたのか。100円が適正価格でしょこれは。

 いやまあ、買う方としては200円や300円程度惜しいとは思わないんだけど(本当は惜しい)、なんかせこい値付けだな、という印象が残ってどうにも良くない。

 しかも旦那による解説で神楽坂倶楽部は消すのも寂しいのでそのままにしてあると、ご丁寧にリンクまでつけているのに、この本が配信された三ヶ月後にニフティのホームページサービス自体が終わって消滅したしね。寂しいならどこかに移転して存続させようや……。

 そして今作最大のツッコミどころは、この解説で旦那が神楽坂倶楽部を指して「私から見てあまりスマートなページには思えませんでしたが」とか云ってるところ。やっぱ気づいてたんかい。つうかホームページのデザインくらいアドバイスなり手伝いなりしてあげてよ……。なにやってんのよあなた……仕事してよ……。


 というわけで、梓に罪はないが、読む必要はまったくないエッセイでした。

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