449 グイン・サーガ・ワールド 7

2013.03/ハヤカワ文庫

<電子書籍> 無

【評】 ―


● はいはい、太っているのは社会のせいですね


 栗本薫逝去後にグイン・サーガ続編プロジェクトとしてスタートしたシリーズの五巻目。


『パロの暗黒』第三回(著:五代ゆう)

『サイロンの挽歌』第三回(著:宵野ゆめ)

 それぞれ後にまとめられグイン・サーガ正篇の131巻、132巻となったもの。

 よってここでは感想は述べず、いずれそれぞれの巻の感想を書くことがあればそこに回すことにする。


『魔王子の召喚』(著:牧野修)

 グイン・サーガ・トリビュートの一作。

 一切ネタバレなしで読むべき話なのだが、「中島梓の祖父として現代日本に転生したグラチウスが記憶を失った魔王子と戦う」という、設定もめちゃくちゃならグロ描写も強烈という、あまりにも牧野修臭の強い一作である。

 だが、中島梓という少女を主人公にしたり、栗本薫が少女時代に日記帳に名前をつけていたことをうまく作中で活かしたり、物語自体のもつ力を強く描いたりと、栗本薫へのリスペクトはしっかりと感じる作品である。

 似たような試みを栗本薫自身も『魔境遊撃隊』でおこなったが、率直に云ってしまえばそれよりもはるかに上等なメタフィクションだ。

 このグイン・サーガ・ワールドでは、当たり前のことだがグイン・サーガ及び栗本薫が主であり他の作家はそれに敬意をもって従う形を大なり小なりとっているが、牧野修だけはグイン・サーガを題材に牧野修以外の何者でもない作品を書くという、作家同士のがっぷり四つの姿勢を取っているのだが、果たしてそれは良いことなのか悪いことなのか……。

 グイン・サーガ関連の作品としては好きではないが牧野修作品としては好きという、なんとも言い難い作品である。


『現実の軛、夢への飛翔 ―栗本薫/中島梓論序説―』第三回(著:八巻大樹)

 次の巻の分とまとめて読んでごっちゃになっているので、次巻にまとめて書きます。(というかはじめからまとめて書けばよかったね……)


『いちばん不幸で、そしていちばん幸福な少女 ―中島梓という奥さんとの日々―』第二部第三回(著:今岡清)

 中島梓が太っている自分に悩みつつそれを認めることが出来ず、太っているというだけで自分の存在が否定されているように感じ、「体重に関することのみ自分の理性も知性もすべて停止してしまう」とまで日記に記していたという暴露トークである。

 これに関してグルメ情報を垂れ流して同時にダイエット情報も流す社会の問題と語り、その二つを同時に受けてしまい分裂した感受性豊かな素直な梓の悲劇のように旦那は語っているが、同じように食べ過ぎデブのぼくから云えることは「は?いいから運動しろやデブ」の一言である。

 デブではいけないという社会が発するメッセージがストレスになり寿命を縮めたのではないかという考察に関しては、「明らかに食べ過ぎと運動不足が内蔵にダメージを与えたんだろ」としか言いようがなく、デブの言い訳を肩代わりしてどうするのだという気持ちしかない。

 そしてレディ・ガガが自分が太ったことに対して、「恋人はいまの自分の方が好きだと云ってくれているので自分もいまの自分のほうが好き」という発言に感動したと語っているが、これに関しては「おう、つまりお前がデブった純代をちゃんと抱いてやらなかったからあかんのやな」としか云いようがない。

 自分もデブだし、しょっちゅうダイエットもしているのでデブ自体を責める気はないが、努力せず言い訳するデブは見苦しいだけである。そもそも梓は体重に関すること以外でも誤字脱字でもストーリー展開でもなんでも自分を少しでも否定されると思考が停止して「そんなことはない自分は間違っていない」と肯定されることを求めるタイプなので(なにせ校閲に対して「ママイキ」と突っ返す女である)単に知能は高いが性格は悪い、ないしはひたすらに幼稚なだけである。純代ちゃんのそういうクズいところは完全に同類なので「すっごいわかるよクズ」としか云いようがない。

 つうかこの連載、梓のことは晒してるけど自分自身の汚い部分は隠してるせいで、余計なことしか云ってないでしょ……自分も晒すか何も云わないかの二択でしょこんなの……。暴露されて栗本先生可哀想的な意見もきているっていうのは、安全地帯から晒してるように見えるからだよ絶対……。

 


『スペードの女王』

 2008年に出版予定だったが書き上げられずに中絶となった伊集院大介シリーズの長編。

 この『グイン・サーガ・ワールド』最終巻まで分割して連載されているため、感想は最終巻にまとめます。

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