427 浪漫之友 20号(同人誌)

2010.01/天狼プロダクション

<電子書籍> 無

【評】 ―


● いま、聖職者チクニーが熱い!


 栗本薫個人同人誌最終号。

『ヴァンパイア・サーガvol.9 真夜中に教会へ 後編』収録



 牧師チンコを食べたクリストファーが農家に戻ると、一家は惨殺されていた。疑いが自分にかかることを恐れたクリストファーは闇夜に紛れて逃げようとするが、チンコギンギンの農夫たちに捕まり、まあそこからモブレからのお清めSMセックスして乳首にピアスして浪漫之友終了です。う~んロマン~~。


 欲望に狂う人間の罪深さとかが書けていればよかったのかもしれないけど、基本オタサーの姫がモテてると勘違いしてあちこちの男にやり捨てされてるみたいなノリだからなあ……。

 牧師様が伯爵に会うなりズギュウウウウウウウンてキスされてそのまま乳首いじられてイッちゃうのはギャグなんですかね? 乳首だけでいけるとか相当開発してますね、牧師様。十六世紀ではチクニーが流行っていたのかな?かな?(あ、ちなみに妻帯できないのは神父で牧師は結婚できるんすよ栗本先生)

 まあこの牧師様が出会って二コマでチンコに負けてメス堕ちして「もっと動いて」とか云いだすわ、中編でチンコでかいでかい云われていたのに伯爵に比べるとしょぼいとか云われるわ、3P要員にされた挙句にチンコ噛み切られてから菊門に教会の十字架ぶっ刺されて死ぬわで、チクニーにハマってたばかりに災難でしたね。みんなもチクニーのやり過ぎに気をつけようぜ!


 そんなこんなで要は逃げていたのを最初からストーカーしてエロシーン全部出歯亀してNTRに歯ぎしりしながらチンコギンギンにしていた伯爵様が、村人皆殺しにしてから「この淫乱め!」「ああん伯爵のチンコが一番でかくていい~」って仲直ックスするだけの話でした。迷惑なプレイだな~(棒)

 それにしても伯爵様、やわらか状態で普通の人間の戦闘状態の二倍近い大きさって、もう純粋に邪魔そうだなそれ。今調べたところヨーロッパの平均チン長は14センチらしいから、長さが倍なら28センチ、体積が倍だとしても長さは約1.4倍ってことで20センチか。オッキしてないでそれってもう邪魔以外のなにものでもないな。チンコカースト制度の上位者は大変だな!


 そんなこんなで「お仕置きとして乳首にピアスつけられちゃったのさ」って最初に質問してた人に報告して「いや、質問はなんでXと呼ばれてるかなんだけど」って突っ込まれ「あ、それは裏切りの意味のダブルクロスからとってるんすね。いつも伯爵を半分裏切ってる意味っす」と説明して終了。うん、それ最初に載ってた『狂った月』で説明していたから知ってるYO!


 そんなこんなで、この話を書いてこのシリーズについては書ききった気持ちになったらしく、『ヴァンパイア・サーガ』シリーズは、残りは後始末として書いたという短篇『消滅』だけで終了。えーと、これが書きたかった話だとしたら長々とやってたヘルシング教授のセックス教団体験記のくだりってなんの意味があったんですかね……。

 ちなみに完結編となる短篇『消滅』は浪漫之友には未収録。これまでのシリーズをまとめた総集編を上下巻で出してそこに載せますね、ということに。あの……オマケ的な後日談ならともかく完結編を総集編のみに収録ってちょっとセコすぎない……?原稿用紙50枚ちょっとらしいから20ページくらい厚くすれば良いだけじゃない……。

 いやまあ、わざわざ完結編のために買いたいと思わないし、そもそも買おうとしてももう通販終わってるから済んだ話なんだけどさ……でもセコくない……?セコくない……?もう栗本薫自身は死んだ後だから罪はないけど、セコくないすか……?



 ともあれ、これにて栗本薫が商業では出版できない作品を同好の士に読んでほしいとはじめた雑誌感覚の季刊個人同人誌『浪漫之友』全二十巻完結である。

 正直、はじめのころに連載されていた三作は、内容が趣味に合うかどうかはともかくとして、それなりに新しいことをやろうとし、またストーリーを作ろうとした形跡があったので、嫌いではなかった。

 特に島田魁のストーカー目線で新撰組を描いた『副長』は、史実を追った面白さと作者の独自性が融合した、栗本視姦、ちがう栗本史観とも呼ぶべき新たな境地を感じさせる力作であった。芹沢鴨暗殺からはじめ、せっかく江戸城無血開城まで(栗本薫としては)ハイテンポに進み、あと何回かでちゃんと完結していたであろうことを考えると、発病がせめてあと一年遅ければ……といまさら悔やまれてならない。

 無論、それでも一般的な小説と比べると無駄な部分や過剰な美形描写にあふれ、人を選ぶ作品であることには違わないが、無事に完結していたら「2000年以降の栗本薫のベスト作品である」と断言できていただろう。

 戊辰戦争を最後まで生き延び、『島田魁日記』を記して今日まで在りし日の土方の姿を伝え、晩年には新撰組の屯所があった西本願寺の警備員となり十数年を勤めた後、仕事中に発作を起こして土方の戒名を書いた紙を懐に入れたまま死んだという、普通の目で見てもちょっと気持ち悪い島田さんの史実を、栗本薫がどんなキモ切ない形で書くつもりであったのか……これだけは掛け値なしに本当に読みたかった……。


 一方、お蔵出しという形で後半に掲載された『マルガ・サーガ』と『ヴァンパイア・サーガ』は「欲求不満なんだね」ということしか出来ない作品で、ちょっと読むの辛かったですね……。JUNEやBLを書くことが=欲求不満だとか非モテの願望充足だとは思わないんだけど、それはもっぱら作者の抱えた人間関係の問題をぶつけたものに関してであって、薫のエロシーンはやっぱり欲求不満にしか見えないですね……。だからYES/NOまくらを買えとあれほど云ったのに……(云ってない)

 まあ欲求不満の願望充足だとしても、あまりにもニッチ過ぎてちょっとどうかと思いますね……。作品としての完成度もやっぱりアレだしね……。


 でもまあ、栗本薫という作家が生涯をかけて手を変え品を変え書き続けたことって、要するにただひたすらに「私をわかれ。受け止めろ。特別だと認めろ」だったので、晩年の同人誌である矢代俊一シリーズとロマトモ後半がそういう気持ちだけで作られたような作品群であったのは象徴的なのかもしれませんね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る