第78話 費用

孤独だ。

あまりにも。

孤独の中で唯一の光がA子だ。


A子「救助隊を送ってこないなんてヒドイ。」


人工知能の紫さんは地球側からの連絡を受けているようだ。

A子に協力して返信はしていないかもしれないが。

その情報では地球の本社は救助隊をまだ送っていない。

俺も最近、牧師を通じて本社に掛け合ったが救助は決まっていない。


やはり救助隊については厳しいと思う。

まず片道1年かかるので救助が無駄になる可能性が高い。

それに救う人命が三名だ。

俺とハルカワとA子。

ハルカワは生死不明で冷凍装置に入っている。

A子は逃亡した死刑囚だ。

もしこれが五十人なら話は別だろう。

また費用の面も見逃せない。

救助にかかる費用が莫大なものになる。

3名の救助に数兆円の費用をかけられるのか。


A子からの条件で作業をこなしつつ俺からも条件を出している。

もし切り離しをするのなら、その前にハルカワの眠る装置を移動させる。

現在ハルカワの冷凍装置は第三体育館にある。

それを第二に移動させて地球へ帰還する。

もしハルカワが重傷であっても地球の大病院で解凍すれば望みはある。

このまま第三体育館を惑星Tへ投下するわけにはいかない。

冷凍睡眠装置の移動は絶対だ。


A子からも条件が出た。

まず第一体育館を惑星Tに投下すれば冷凍睡眠装置の移動を認める。

そう彼女は言った。

食糧庫になっている第一体育館は現在必要ない。

これはテラフォーミング本隊が使うべき食糧が入っている。

第二体育館にある食糧だけでも相当なボリュームがある。

大人2人が数年間食いつなぐのに充分な量だ。

協議の結果、まず第一体育館を切り離して投下することに決まった。


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