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  • 初めてエルフを栽培しようと思ったのは3年前の夏だった。

    『萌エルフ礼賛』この本をたまたま読み、自分の手で自分だけのエルフが手に入るならと気軽な気持ちで栽培を始めたのだ。
    しかし。

    「くっ、ころせ!クッコロセ、kku、korose」

    見事、クッコロ病にかかった。

    そして思い知った。理想のエルフ-美少女-を育てるのは生半可な覚悟ではダメなのだと。

    そして、僕は勉強を始めた。
    エルフにとって良い環境を求めて田舎に引っ越し、エルフに良いとされる土、水を海外から取り寄せた。
    彼女らが歌や音楽を愛すると知り、リコーダーしか触ったことのなかった俺が楽器を習い始め、歌を歌って苗木に聴かせていた。

    そして、そんな日々が積もっていき……今日、ようやくその時が来たのだ。

    「なんだ?なにをそんなにやにやしている?」

    目の前にいるのは、成人したエルフだった。
    正確には、僕が種から育てたエルフ。
    彼女は初めて袖を通した服に違和感を覚えたような顔をしながら、僕のことをいぶかしげに見つめる。
    そんな彼女の表情が愛おしかった。
    僕は、ようやく手に入れたのだ。
    自分より少し背の低い、銀髪黒目褐色エルフを。
    すこし不遜な態度がポイントだ。
    ダークエルフに墜とさないように、褐色肌と銀髪を維持しながら性格を品種改良し、それを保つのは本当に大変だった。
    温度調整や害虫駆除、当然、薬品は一切使わなかった。

    その成果が今の彼女なのだ。

    「いや、君に会えたのがうれしくてさ」

    涙ながらに語って聞かせると、彼女は「へんなやつだな」と言って僕の傍にやって来た。
    そして、彼女はゆっくりと僕に抱き着き、耳を口元へ寄せてきた。

    「なあ、またきかせてくれ。わたしに、いつもうたってくれていたうたを」

    エルフ栽培は奥が深い。
    しかし、それを長い趣味とする人は少ないと聞く。
    その理由が、今わかった。
    僕はもう、彼女以外の萌エルフを必要としない。
    今までのエルフ栽培は、彼女と出会うためだけに必要だったのだ。