許されざる行動2

「嘘だろ・・・?」





その光景が信じられなくて俺は目を大きく見開く。


アパートは確かに存在した。


しかし、俺の部屋は引き払われていたのだ。




愛しい布団も、コンビニのくじで当ててずっと使っていた愛用のマグカップも、干しっぱなしの洗濯物も何もかも。そこはもぬけの殻になっていた。





俺はサギの方を向いた。奴は無表情でスマホをいじっている。


そうか、お前が




「お前がやったのか!」




俺はサギの胸ぐらを掴み一撃を浴びせた。今までの苛立ち等溜まりたまったものが全て爆発しそうになる。





「俺はお前が怖かった。いきなり誘拐まがいのことをして、銃突きつけてきたり部下を容赦なく蹴ったりするのが鬼みたいで恐ろしかった!」




言葉が次々と出てくる。数日感のストレスがありえない速度で沸騰している。

自分でも止めることはできなかった。





「でも、悪い奴じゃないってどこかで思っていたんだぞ!」






ふと出た本音。それを受け取ることなくサギは黙ってこちらを見る。

その目は冷ややかなものであった。




「それは貴生川さんの勘違いだよ」




そう言うと、サギは俺の腹部に一撃を返してきた。その細い体からは考えられないほどの力により、俺はその場で蹲る。





「俺は根っからの悪党。裏社会の人間だよ」




これでわかったでしょ?とあくまで柔らかい口調ででも冷たい目をしたままサギは俺に言い放った。




「貴生川さん、帰ろう」




帰る?どこに?俺の家はもう失くなったんだぞ?それともまたお前の屋敷に戻って缶詰状態か?


・・・ふざけるな。


差し伸べるサギの手を俺は思いっきり叩きその場から駆け出した。



途中、貴生川さん!というサギの声が聞こえたが、俺は聞こえないフリをした。







地の利という言葉がある。ここの土地勘ならサギには負けない。


裏道も車が通行出来ない場所もわかっている。


普段走らない体を必死に動かして俺は全力でサギから逃げた。




そしてたどり着いたのが橋の下。

ちょっとやそっとでは見つからない場所だ。



ポツポツと雨が降り出していたので丁度よかったと思いながら、俺は橋の下で座りこむ。





「・・・なんだよ、いくらなんでも住んでるところを許可なく撤去するなよ」




正直泣きそうだった。

もう俺は帰る場所がない。かと言ってサギのところへ戻るのはまっぴら御免だ。

これからどうしようか。




よくよく考えたら、俺の唯一の持ち物は携帯のみ。


財布も持って来るのを忘れていたのだ。




部屋を全部処分されたてことはきっと通帳等もないのだろう。




これからの生活を考えるとぞっとする。



とりあえず警察に行き、事情を相談しよう。




そしたら、少なくとも今日の寝床位はなんとかなるはずだ。




ゆっくりと立ち上がったその時





ガシャン!



何かが落ちるような大きな物音がした。


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