隙間女

 ある日。

 タンスとタンスの間に空いた、幅五センチほどの隙間の中に、女がいた。

 私の背丈と同じくらいの二つのタンス。

 その間に挟まった細長い女は、タンスとぴったり同じ背丈で、隙間の奥から私のことを見つめていた。


 またある日。

 図書館で本を探していると、本を抜き取ったあとの隙間の中に、女がいた。

 百八十ページくらいの文庫本の厚みの隙間。

 その間に挟まった細長い女は、本とぴったり同じ背丈で、隙間の奥から私のことを見上げていた。


 そのまたある日。

 繁華街を歩いていたら、ビルとビルとの隙間の奥から、ビルと同じ背丈の女が、私のことを見下ろしていた。



【終】

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