第15話「現実から目を背けることを夢というわけではない」

 キャバクラのVIPルームっていうか、そもそもキャバクラに初めて来た。

 やばい…みんなかわいい…っていうか胸元がやばい…。

 右もおっぱい、左もおっぱい。

 うわぁ、でけえ…、ん、あれはそうでもないなブスだし…。

 素敵なおっぱいが店にはあふれていた。

 そして何より、大きなおっぱいが目の前にはあった。


「太陽さんですか、お名前素敵ですね。大学生ですか。」


「ああ、そうです。わかりますか。」


「ふふっ、この店結構高いから、学生さんなかなかこれないんですよ。お金持ちなんですね。」


「いえいえ、この店に来るために頑張って稼いだんです。」

 僕はしれっと嘘をついた。ふふっ、マキナ以外との出会いの機会をこの際だからつくらないとな。


「…太陽さんって嘘つきなんですね。今日は畑さんのおごりってきいてますよ。」

 …。

 なんだと、くそう、この女はかったな!はかったなシャア!


「ごめんなさい、いじめちゃって。でも、畑さんがいじめてあげたほうが喜ぶお客さんっていうから。」

 ぐぬぬっ、畑めー!


「できれば、精神的ないじめはちょっと。」


「肉体的ないじめの方がいいんですか。変態さんなんですね」

 となりについた女の子は、ふとももを思い切り俺に密着させながら、おれにほほえみかけている。

 ああ、幸せだなあ。変態さんっていわれながら、こんなに体が近い。うわっ、もうおっぱいでけえー目が離せねー(≧◇≦)

「いじめ方によりますがっ、嫌いじゃないっす。」


「好きなんでしょお?どうしよかっなあ、いじめちゃおうかなあ。年上でもいいのお?」

「そ、それはもちろん。むしろ大歓迎ですっ。」

「うれしいなあ。可愛いなあ。太陽君。」

 そういって、さらに体を密着させるお姉さん。や、やばいっす。胸が胸が完全に腕にあたってる。


「あれっ、太陽君。もしかして勃ってるー?」

「いやいやっ、たってないっすよー。」

「うそっだあー。」

 といいながら、おねえさんはソフトタッチを敢行してきた。まさに回避不可避!

「ほーら、やっぱりじゃん!」

「あ、はい。」

 あー、なんて最高な場所なんだー。


「太陽君ってさあ、女の人としたことないでしょー。」

「いや、そんなことはー。」

 僕はとりあえず強がってみた。


「あー、嘘つきだあ。じゃあもうこれでおしまい。」

 そういって、すーっと身体を離していくお姉さん。

 あーうそですうそです、すいません.

「そうです、僕は童貞です。」

 すると、再び身体を密着させてくれた。

「よく出来ました、いいこ。」

 おねえさんは、そういって頭をなでてくれた。


「あ、ありがとうございます。ところで、御名前なんていうんですか。」

 そう、そうずっとお姉さんってわけにもいかないよおー。

「あっ、わすれてたあ。わたしはねー、ルイっていうんだよー。名刺渡しておくね、後ろに連絡先あるから連絡してね。」

 そういって、ルイは写真入りの名刺を差し出した。うおっー、写真も可愛いー!

 宝物にしないとー。つーか、そういやソラもここにいるんだった!あいつには口止めしとかないとヤバいな。僕はマキナしかいなかったはずなのに、こんなに簡単に揺らいでるぜー。


 楽しい時間はあっという間にすぎ、部屋にボーイがはいってきた。って畑だけどな。


「ルイさんお願いしまーす。」

「あっ、呼ばれちゃった。また、あ、と、でね☆」

 くっつけてた身体をはなし、立ち上がってしまうルイさん。


「は、はい。また。」

 そういって、僕のあたらしいエンジェルはさっていってしまった。


 その後も新しくついた女の子と、楽しい時をすごしたのだった。

 おしまい。




「おしまいじゃねーんだよっ。なに寝てんだ太陽!」

 んっ!畑の声だ?

 はっ、あれ、ぼくは今ルイさんといいことしてたきがするんだけど。

 ほらっ、やっぱ目の前にはルイさんがいる!!

 んっ、あれ、ルイさんが私服になってるよ。

 おかしいなあ。

「頼みがあるって言っただろ。何、本気でキャバクラ遊びしてんだよ。」

 あっ、頭がすっきりしてきた。あの後調子にのって飲みすぎて、眠ってしまったらしい。

「俺の店だからべつにかまわねえけど、おまえ本当なら請求10万とかだからな。」

「ぼったくりじゃねーか。」

 友人はぼったくり野郎だったのか。犯罪者だわ、もとやくざだわ、年齢詐称だわと、最低じゃん。


「ぼってないから、うちはちゃんと料金出してるんだよ。あのなあ、うちは高級店ななの。経営者が接待で使うような店で、本当は太陽がこれるような場所じゃないんだよ。なに、おまえ大学ののりで一気とかしてんだよ。」

 そう、勢いでぼくは、瓶で一気飲みする通称ビンダビンダを披露していた。

 そりゃあ、つぷれるわけだ。あーっ、もう三時じゃないか!

「まあ、いいけどよ。」


「.....すまん、畑、店の人に怒らんなかった?あと、支払いおごりっていってもやばいんじゃ。」


「いや、だから俺の店だし。」


「は?」


「俺の店、オーナーなの。おれが。」


「バイトっていってたじゃん。」


「言ってねーよ。キャバクラで働いてるっていったの。」

 あーあ、そうだったのかよ、何だよ、元ヤクザとかいって、全然今も堅気じゃねーじゃん。くそっ、畑がオーナーって知ってたら、もっと好き勝手やれたのに。

「そんなことしたら、沈めるからな、」

 ひいっ、こわいっ。すびばっせんっ。


「まあ、いいや。目は覚めたな。本題にはいろう。頼みの件だ。つーか、あんだけ飲んだんだからもう、拒否権とかないからな。」

 えっ、なになに、ただでおごるとか言ってそう言う落ちなわけ。ひでえっ。


「そこにすわってる、ルイさんの息子の件なんだよ。」

 そういえば、なんでルイさんがいるんだろう。

 ぼくをアフターに誘うのかな?

 んっ、なにかいまとんでもない情報聞いた気がするなあ。

 そこに座ってるルイさんの息子の件!

 ルイさんの息子

 息子!?

「目がっ、めがああーっ!」

「それはムスカね。」

 ルイさんがつっこんでくれた。

「イスラムの礼拝所」

「モスクだろっ。」

 畑もつっこんでくれた。


「馬鹿シンジーッ!」


「アスカって、いい加減にしろ。もう、息子関係なくなっちゃったよ。ってハライチかよ。とにかく、ルイさんの息子の件なんだ。」

 まじかよっ。


「ルイさんだましたんですねっ。僕の純情な気持ちもてあそんだんですね。」


「ごめんね。でも、だましてないじゃない。子供いないっていってないし、太陽君のことは可愛くて好きよっ。」

(;゜ロ゜)まじか。好きなのか。じゃあ、いっかなあ、パパになっちゃえば、んっ、そういや、旦那いるんじゃねーのか。


「太陽に今後のために言っといてやるが、こういう店の女の子の大半シングルマザーだからな。うちも、結構多い。恋をするなら覚悟しとけよ。ルイさんも、こんな子供に手を出さなくてもいつでも俺が面倒みるっていってるじゃない。」


「それ、キャストみんなに言ってるでしょ。やだよー、つぎは絶対浮気しなくて、ちゃんと子供のこと考えてくれるひとがいい。」


 そうか、ルイさんは浮気が原因で別れたのか。こんな美人を嫁にして浮気するやつとか意味分からん。というか浮気するやつとかマジで死ねよっ。なにひとりで何人もの女取ってるんだよ、俺らに回ってこねーだろーが。


 はいっ、おれは新たに恋愛社会主義をとなえて、次の衆議院選にでることに決めました。もてる男に対する課税も検討しましょう。


「まっ、私も浮気してたからお互い様だけどねーっ。(*’-’)」


(*’-’)じやねーよっ。なんだよ、この話に出てくる女に普通のやつはいねーのかよ。あぁ、普通っていうとこれを読んでくれるシングルの方に悪いけど、童貞の夢を壊さないような清純で処女なかわいい女の子をどうか登場させてください。


「いいかな、本題にもどしても?童貞の寝言に付き合うほど暇じゃないんだ。」

 この間、散々俺に説教垂れる暇あったやないか。

 畑は声のトーンを戻した。ルイさんは畑の隣に座っている。ドレス姿とは、うってかわって、露出の全くない服を着てる。それでも胸の大きさだけは分かる。

 やっぱ、でかい。おっぱい!


「じつは、ルイだけの話ってわけじゃないんだが。そうだな、ルイが話した方が良いだろう。ルイ頼む、あと太陽、ケータイ一応出しておけよ。」


 あっ、忘れてた。最近すっかり出番がないからすねてるかもしれないな。僕はケータイを胸ポケットから出して、カメラがルイさんの方に向くようにした。

 僕のケータイのケースはちゃんとスタンド出来るようになってる優れものだぜ。というか買わされたんだけどね。


「じゃあ私から話すけど、っていうか畑さん太陽君に話して本当にいいの?」


ルイさんは不安そうに畑の方に視線を向ける。畑は黙ってうなずいた。


「ごめんね、太陽君。失礼な言い方になるけど、プライベートな話だから、本当に頼れる人以外に教えたくないんだけど、太陽君が情報のスペシャリストってマジなの?」


 畑は、僕のことそういう風にルイさんに伝えた訳か。なるほど、確かに宇宙人の話をしても信じてもらえないしな。僕をそういう風に仕立てたのか。

 いいだろう、演じてやろうじゃないか。

 僕も顔を真剣モードに変えて言った。

「ええ、ネットがつながるものなら何でも分かりますし、操れます。」

 おれは堂々とうそをついた。

 ソラの反応が気になったので視線をケータイに向けた。画面には

「花を持たせてやる( ´艸`)」

 って文字が出てた。


「それは、なんというか頼もしい。ではお話しします。息子はその小6なんですけど…」

「小6!ずいぶん大きいですね。ルイさん、今いくつなんですか!」


 思わず口を挟んでしまった。えっ、小6って12才だろう?12才の母って少なくても三十半ばくらいじゃない?見えない見えない。

「えっと私は28です。息子はその、私が17才の時に生んだ子供で、そうか、驚くよねそりゃ、私の周りではそんな珍しくないけど。」

 珍しいだろう、少なくとも僕の知り合いにはいないよ。そんな17の時に生でバッチリです、みたいな同級生。高校の時にはいなかったと思う。

 あっ、でも成人式の中学時代の同窓会で子供連れの女の子何人かいたな。そーか、一定数はそういうもんかあ。

 よくよく考えたら、日本社会が異常なんだよな。べつに十代で子供出来るって、生物としたら普通じゃねーか。それを許容出来る社会を目指さないとね。

 よし、次の衆議院選で、ヤングマザーを推進していく政党をつくろう。はい、脱線終わり、話戻していいよ。ルイさん。


「それで、その息子。迦楼羅かるらっていうんですけど。なんか廃人になっちゃったんです。」


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