2-4-5 武器支給?蛇龍伝説?
テントから恥ずかしそうに出てきた山本先生に女子が群がって質問攻めをしている。高畑先生より年が若い分話し易いのか、中等部の先生なのに、高等部の女子から結構人気があるようだ。
山本先生に一声かけてログハウスに戻る。
俺は手が空いた時間に、野郎どもの武器を作ってやることにした。婚約者たちのようなハンドメイドの一点物ではなく、基本サイズの量産物を作ることにしたのだ。最初の1本だけ作れば、俺の【プランクリエイト】という魔法で材料がある限り何本でも量産可能なので、それほど面倒というわけでもない。
まずは、剣道部用の日本刀からだ。
【名無】(ブラックメタル15%・ミスリル5%・鋼80%)
武器特性
・刀身は黒色で美しい銀色の刃紋が特徴的
付加エンチャント
・自動修復
・刀身強化
・個人認証
女子用に握りサイズ小さめと刀身の長さを5cmほど短くしたモノも用意してある。
男子用に5本、女子用に4本だ。1本は剣士職の綾ちゃん用にカスタムメイドしてある。綾ちゃんのレベルと技術がもう少し上がったら、もっとブラックメタルの純度を増やして良いモノを打ってやるつもりだが、今はこれで十分だろう。
空手部と柔道部には、スタンプボアの革も使ってガントレット(手甲)と手首から肘までを覆う籠手と脛を保護する脛当てを作ってやることにした。
【ガントレット】(ブラックメタル15%・ミスリル5%・鋼80%)
武器特性
・指と手甲を保護し掴みもできる
・手甲部に15cm程の針が飛び出すギミックが有り、殴って刺突することによって一撃死が狙える
付加エンチャント
・自動修復
・硬度強化
・自動サイズ調整
・個人認証
【籠手】ブラックメタル15%・ミスリル5%・鋼80%)
防具特性
・手首から肘までを筒状に被せて保護できる
・硬いので、剣や噛みつき攻撃をこれで受けることが可能
付加エンチャント
・自動修復
・硬度強化
・自動サイズ調整
・個人認証
【脛当て】ブラックメタル15%・ミスリル5%・鋼80%)
防具特性
・足首から膝までを筒状に被せて保護できる
・硬いので、剣や噛みつき攻撃をこれで受けることが可能
付加エンチャント
・自動修復
・硬度強化
・自動サイズ調整
・個人認証
うん、良い出来だ。
空手部には殴り特化のトゲ付ナックルにしようかと思ったのだが、剣を受けそこねたら指が飛ぶと思って、拳で剣を折れるような手甲タイプのガントレットにしたのだ。
これなら拳全体を金属で覆っているので、剣や牙なんかの攻撃を受けても、そのまま殴り折ればいい。
ブラックメタルの硬度・強度はハンパない。
現在この世界ではブラックメタルを加工できる者は数名しかいないらしい。
しかも、その中で所在が分かっているのはドワーフ王とその弟子のみのようだ。その為ドワーフ王が打った武器や防具の完成品は国宝級扱いだそうで、各国が国として予約を入れているほどだ。
【身体強化】【腕力強化】【脚力強化】とかの強化系を中心に獲得している脳筋たちなので、【重さ軽減】の付与はあえて付けなかった。ある程度の重さがあった方が威力が上がるのも事実なので、軽くすれば良いというわけでもない。
とりあえず綾ちゃんを呼び出して刀を渡す。
「綾ちゃん、そのミスリルソードから、この刀に変えようか」
「それ、龍馬先輩が作った刀ですか?」
「そうだよ。桜たちのとはちょっと違うけどね、さっき作った出来たてのおニューだよ」
「桜先輩たちのとは違うの?」
「あれはちょっとヤバいモノだからね。下手に所持してると奪いにくる輩が出るんだよ。この刀も結構ヤバいモノなんだけど、綾ちゃんなら使いこなせるかなって思って。希少金属を使っている国宝級のモノだよ」
「国宝級!? やった! ありがとうございます!」
ちょっと騙すみたいで気が咎めるが、国宝級なのは確かなので、今はこれで我慢してもらう。
「もっと綾ちゃんの剣の腕が上がったら、これより良いものをまた作ってあげるからね」
「はい、ありがとうございます! 先輩? 他の人にはないのですか?」
「非戦闘員にはミスリルのショートソードで十分だしね。扱えない武器を渡しても宝の持ち腐れなんだよ。それを狙って襲われても、実力がないから対処できないでしょ? 良い武器=良いことではないんだよ」
「確かにそうですね。身を守るためにもらったのに、それを奪うために襲われたのでは意味がないですよね」
そして格技場の者に野営地の外に来てもらった。
「こんな所に呼び出して、何かあったのか?」
「いえいえ、先輩たちに約束してた武器を造ってあげたので、皆には内緒で渡すのに、外に来てもらったのですよ」
「「「え!? もう出来たの?」」」
「龍馬、順番待ちって言ってただろ?」
「そうなのですが、格闘系の空手部と柔道部は、狼に噛みつかれたらヤバいかなって思いまして、狼が来る前に急いで作ったんですよ」
まずは剣道部に。
「おお! 黒い刀身に銀の波紋がカッコいい!」
「女子用は少しだけ短いんですね? 握り部分も少し細めかな?」
「ええ、男子とはリーチが違うので、扱いやすいように5cm短くして握りも少し細くしています。どうですか?」
「ええ、良い感じです! やはり西洋剣よりこっちの方が手に馴染みます! 小鳥遊君ありがとう!」
各自素振りや、型の演武をしたりして刀の調子を見ている。三田村先輩が脇差用の小太刀はないのかとか言い出したが、無視だ。
「空手部と柔道部には、手甲、俗にいうガントレットです。ナックルだと刀が指に当たったら切断されちゃうので、ガントレットにしました。それと籠手と脛当てです。レア金属を使っていますので、剣を籠手で受けても大丈夫だと思います。安心して牙もこれで受けてください」
「なんか、ピッタリだ! 俺に合わせて作ってくれたのか?」
「自動サイズ調整機能の付与があります」
各武器の特性を教えてあげ、血を数滴たらして個人認証を行う。
「個人認証後は本人以外に使えなくなるようにしていますので、武器の貸し借りはできません。大事にしてくださいね」
「「「ありがとう!」」」
「言っておきますが、これはあくまで支給ですからね。命がけで一番危険な殿を務めてくれてるあなたたちへの先渡し報酬です。真っ先にあなたたちが逃げちゃったりしたら、没収しますからね!」
「「「逃げね~よ!」」」
武器を支給し終えて、ログハウスに戻ったら、料理部の者がニヤニヤして俺を見てくる。何なんだ? 怪訝な顔をして見ていたら、桜が俺に質問してきた。
「龍馬君、最近格技場の男子たちにやたらとサービスが良いのね? 最初会った時は『菜奈さえ守れれば俺は良い! 他の女子は菜奈が悲しむからついでだ!』みたいな感じだったのに」
グッ、なんてハズいことを言ってしまったんだ。でも、いまも根本的にそれは変わっていない。
「いまもその考えは変わっていないぞ。ただ守りたい人がちょっと増えただけだ……」
「当然その中に私も入っているのよね?」
桜はいたずらっ子のように俺に聞いてくる。分かっていて恥ずかしいことを俺に言わせる気のようだ。
「そうだな、桜のおっぱいはこの世の宝だ! 何があっても死守しなきゃいけない!」
「もう! すぐそうやっておちゃらけてはぐらかす!」
「兄様は中学生の頃は、男子の友人は全くいませんでしたから、格技場の男子が構ってくるのが、ウザいとか面倒とか言いながらも、楽しくて心地良いのでしょう」
「え!? 1人もいなかったの?」
「ええ、クラスで会話程度はしても、家に遊びに来るような友人は1人もいませんでした」
「菜奈、余計なことは言わなくていい」
「龍馬君、私あなたのこともっと知りたい。聞いて良いでしょ?」
「「「私も知りたい!」」」
「はぁ、好きにすればいい……」
「兄様は虐めってわけじゃないのですけど、みんなに恐れられていたとかいう感じで、学校で孤立していたのです」
「ああ~、例の蛇龍とかいう話ね? クラスでとかじゃなくて、学校で孤立?」
「ええ、小学生時分や中等部に入学した当初は沢山友人もいたのですが、上級生に絡まれていた女子を助けたあとあたりから、不良っぽい上級生によく絡まれるようになっちゃって、兄様の近くにいると巻き込まれるのでだんだん人が寄り付かなくなったようです。菜奈が1年遅れで入学したころには既に蛇龍って呼ばれていて、菜奈も何回か『お前あいつの妹か!?』って呼び出されたことがあります。その度に撃破したので、ますます怖がられてしまって……」
「うわ~、まんま佐竹たちのと変わらないじゃない。『俺は英雄願望も勇者願望も、聖者願望もない!』って言いきっていた人のすることじゃないわね。正にヒーロー気質全開じゃない」
「兄様の凄い所は『だから何?』って素で思っているところなのですよね。ある意味可哀想な捻くれ者です。もっと孤立していることを悲しんだり嘆いたりすれば、周りの対応も違ったと思うんです」
「相手した人たち、全員負けなしで倒しちゃったの?」
「いえ、3人以上相手にしたときは、良く負けて怪我していました。お母さんにいつも叱られていたのですが、怒られた次の日には相手が少数になったのを狙って、二度と逆らわないほどしつこく甚振って帰ってくるのです」
「良く警察沙汰にならなかったわね……」
「自分から仕掛けることはないですからね。大人数で殴っておいて、少数になってやられたからって、恥ずかしすぎて言えないでしょう。それに長時間甚振るのは心を折る為で、決して怪我とかさせるようなやりかたじゃないんですよ。しつこくネチネチと痛覚を刺激するというか……泣いたぐらいじゃ許さないとか。噂じゃとにかく色々しつこいらしくて、蛇龍伝説とか言われています」
「「「蛇龍伝説!」」」
「ん! 龍馬カッコいい! 怖がって近寄らない奴なんか放っておけばいい!」
「別に平気だった訳じゃないぞ。2年の頃には他校の奴らまで喧嘩売ってきてたから、一緒にいて巻き込んじゃうのもあれかなって思って。あと、しつこく甚振ったのは心を折って二度と喧嘩を売ってこないようにするために、ちょっと追い込んだだけだからな。佐竹たちのような酷い暴力とかはあまりやってないぞ」
「「「あまり……」」」
「それと、警察に訴えるとか言って家に親が怒鳴り込んできた時は、弁護士の恭子さんが出張ってきてくれて、逆に慰謝料を請求してたみたいだ……あの人容赦ないから、相手の方が気の毒なくらいだった」
「兄様の天敵です! おっかない人です。兄様が唯一言いなりになって従うほど怖い人です!」
「天敵ってのとはちがうけど、彼女の言うことは全て正論で、反論すらできないんだよ……俺の子供っぽい感情論じゃ勝てないから言いなりだった。人のいない場所で暴力を受けるなとか、記録媒体は常に持っておけとか、恭子さんが後で追い込めるようにいろいろ仕込まれたしね」
「「「うわ~、証人作れってことだ~」」」
「それで、久しぶりに男の友情が芽生えつつあるので、ちょっと構っちゃってるのか」
「そんなんじゃないよ。面倒事を先送りしないで、今、片付けただけだ……」
「ふふふ、別に何してもいいのよ。龍馬君の思うままに行動すればいいの。万が一おかしな間違ったことをしそうなら、一杯いる嫁たちに袋叩きに合って阻止されるでしょうから」
「桜の言う通りじゃ。龍馬の好きにすると良い。皆を幸せにしてくれるのなら多少のことは目を瞑ってやるでの。女関係も含めての、ククク」
どうやらフィリアには、みどりたちのこともバレているみたいだな。
皆を幸せにできるなら、嫁が増えても良いというフィリアの意思表示か……。
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