伴奏曲6

 ぷっくりとした体つきがみるみるとやせ細っていった。この島にたどり着く前に行き倒れるのではないかと安藤は不安で一杯であった。

 エルサルバドルからどこをどう巡ったのか安藤はもう岐路すらも思い返せない。

 それ以前に日本に生きて帰れる保障もまたない。

 この島にたどり着いたとき安藤はその場に倒れこんでしまった。

 土埃と淀んだ内戦独自の匂いと大きく違う澄み渡った空は聖地にふさわしい。安藤はなんども大きく深呼吸をした。

 この島をみたとき、直感的に「この島だ」安藤は確信をした。

 深い意味はなかったがまさに神々しさに包まれているとしかいえない。

 ボートを降りると安藤は腰が抜けたように白い砂浜に座り込んだ。

 身動きができないでいる安藤のボディチェックを島民である青年からされた。

 ここでは銃器の持ち込みが一切できない。これだけ内戦の多い地域で安藤は大丈夫なのかと訝ったがここまで来て追い返されるのは辛い。

 立つこともできない衰弱しきった安藤は神父のところへ青年に連れていかれた。手振り身振りのジェスチャーの安藤に神父はにこやかに「日本語わかりますよ」と言った。

 あずさの影響で日本語がこの島に浸透している。

 年老いた日本人夫婦がいる。そこでしばらく「静養するといいでしょう」神父は安藤を老夫婦に紹介してくれた。

 老夫婦は安藤にとても親切だ。この地が「最果ての地」と言われたとき安藤は意味もなく納得してしまった。

 なにが「食べたいか」老夫婦に聞かれ安藤は思わず「カツ丼と味噌汁」とつい言ってしまった。

 畜産に豊かではないこの島で肉を食べられるのは限られた上流階級のみ。

 量産しやすいチーズはなんとか入手しようとすればできないことはないが日本円で100円だとしたらこの国では軽々と一万はする。

 それでも安いほうだ。

 なにも知らない安藤は日本人が主食としてる米ではなかったがタイ米のようなものであっても出されたカツ丼と味噌汁に安藤は小躍りさえみせた。

 飢えと乾きに干上がった安藤は差し出された水を一気に飲み干す。味噌汁までをも一気に飲み干した。

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