第20話 けん 20100606






舞台の上で左と右に別れ

私は向かって左ばかり見ていたから


分かれてからの右の動きは

よく見えなかった



終わって降りて

水たまりの中でクールダウンしながら

その人が言っていた



「____よかったのだけれど

________の___を

もう少し自分に刻みつける(叩き込む?にじませる?)必要があったから

_______を選んだ」





離れて見ていたら目が合って


私はどもりながら

同じような意味のつかないようなことを

二度言った



その人は聞こえているようないないような真っ直ぐな目でこちらを見ていて

それから自分の決意みたいな宣言みたいなことを言って


自分はそれで

自分が否定されていたわけじゃないこと

安心して大丈夫なこととかを感じることができて安心した




その場所での出来事は喝采とともに終わり


たくさんの人達が家路につく




私は涙を流しながら

ただ前を見て


漂うように前へ

歩いていった




そうすれば後ろから追い越していく人達に

泣いていることに気づかれない




後ろから髪の長い女性が追いかけてきて

親しげに私の肩を抱いた





「どうして泣いているの?」





わからない





うれしいから

かなしいから


心配だから

安心だから


なにもかも

なにもかも




振り返るとその人が

ゆっくりやってくるのが見えた



その場に自分が居られたということが



自分を深く安心させた






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