第8話 ラブブック~♥ 8
「わ~い、合格した~♪」
谷子は初バイトの面接で採用され、
初アルバイトが決まったのである。
「お父さん、お母さん、ありがとう!」
採用理由が、
渋谷に住んでいるから交通費が要らない、
ということだった。
どこの会社も不景気なので、
コストカットには苦労している。
「やっぱり本は嘘をつかない。」
谷子は面接対策のために、
面接の攻略本を読んでいた。
「これで合格!面接では、こう答えないさい! 2016版」
本の内容はこうだった。
「面接官に刃向かってはいけません。
「うん」と「はい」だけ言っておけば合格します。」
まさにその通りだった。
谷子、アルバイト合格おめでとう。
「見られてる!?」
アルバイトに合格したのがうれしかったのか、
「わ~い!わ~い!」と谷子はスキップしながら進んでいた。
そのため、
他の通行人の視線を集めていた。
ちなみに谷子の行動範囲は、
原宿の図書館か桜が丘の図書館だけである。
本が大好きな谷子の歩き方は、
物陰に隠れながら人目を避ける、
まさに忍者であった。
「やった!」
図書館に着いて1番うれしい時は、
誰にも出会わずにたどり着いた時である。
谷子が渋谷のセンター街を、
歩くなどありえないのである。
「新種だ!」
通行人の誰かが言った。
「前髪長すぎ」「メガネ」「ソバカス」「Tシャツ」「短パン」
確かに色んな人がいる渋谷でも、
こんな人はいない。
谷子は確かに「新種」だった。
渋谷の流行の歴史は、
「厚底ギャル」「ガングロ」「美白」
それに「谷子スタイル」が流行るのかは未定である。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
初渋谷センター街のプレッシャーに耐えられない、
谷子は息が苦しくなる。
そして突然走りだし、逃げた。
谷子は無事に家に帰りました。
めでたし、めでたし。
「合格したよ。」
夕ご飯を食べている、
父、谷男と母、谷代の時間が少し止まった。
「!?」
父の手から箸が落ち、
両親の止まっていた時間が流れ始めた。
「へ、へ、あんたを採用する所があるなんてね。」
「谷子、どこでバイトするんだ?」
「スクランブル交差点のツタヤ。」
また両親の時間が止まった。
両親から見ても「変わった子」「ケッタイな子」の谷子が、
渋谷の中心でバイトする。
「!?」
父、谷男が持っていた味噌汁のお椀が手から落ちる。
「アチチチチ!」
「あなた大丈夫!」
父は飛び跳ね、
母は布巾でこぼれた味噌汁を拭く。
「どうしたの?」
谷子は娘がバイトに合格したので、
お父さんとお母さんは喜んでくれると思った。
本ばかり読んできた谷子は、
人間の心というものに「疎い」「鈍感」なのである。
「お母さん、天井裏の部屋のカギを貸して。」
アルバイトも決まって、
谷子は自分の部屋に行こうとする。
つづく。
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