第3話 SHAMROCK

手を握る。


キスをする。


エッチする。


簡単だろ?


「簡単じゃねえよ!!!」


童貞にブチ切れられる内容だ。


というか今ブチ切れられているところだ。

キレられているのは14で童貞を捨てた俺。

そしてブチ切れているのは年齢=彼女いない歴の友達であるなおとだ。

なおとは容姿も勉強も運動も全て平均以下、実年齢15歳、見た目38歳というなんとも悲しきやつなのである。


「くそーー、はるきもしゅうやも中学で童貞を捨てやがって、お前らの血は何色だーーーー!!」


そして趣味が変わっていて芸も古いやつなのである。


「なおとお前だっていいところあるぜ、例えばー、うーーん。お前んちはひろい!ゆえに溜まり場にはうってつけだ!」


「全然俺のいいところじゃないねえじゃねえかーー!!クソ殺してやるしゅうや!」


「おい、俺だって必死に考えたんだぜ!それに今は俺じゃなくてはるきに当たれよ!こいつこの前デートしたんだぜ!」


「なにぃ?きいてないよ!おれ!」


「おい、しゅうやそれなおとに言うなって言ったろ!それにあのデートは最悪だったぜ…」


「デートしたくせに最悪ってどゆことだーー!」


「落ち着けよなおと!あの日のこと話すからよ」



学校が終わって駅に集合してそれから2人でデートという流れだ。

クラスの子とデートというのは神経を使うものだ。周りにばれずにいかにデートを成功させるか。

あわよくばキスをしたい!という煩悩が頭に浮かんでくる。


にしても遅い。どうでもいいことだがおれは昔から集合場所には15分前に着くというなんともどうでもいい習性がある。くるのが遅いとなおさらイラついてしまうのである。


ポキポキ


その時ラインの呼び出し音がなった。

途中でクラスの友達と会いなんとかまいてきたという内容である。


ふむ、それなら許してやろう。

これで今日は楽しめそうだ。


そして数分後に彼女はきた。

なんだか学校でみるよりも可愛いくみえた。

いやかわいい!!

彼女の仕草の一つ一つがなんとも可愛らしくみえる。

これが男子である。自分に好意がある、女の子は通常の2〜5倍はかわいいくみえてしまう。

童貞であるならばその数値は無限大であろう。


ともかくデートは始まった。田舎町でデートするところなどはないため電車にのり移動をしなくてはならない。

その時に2人は別々の車両に乗る。

もう俺の気持ちは高まり今すぐ告白して隣に座りたいものだがまだはやい。

クラス内で付き合うというものは別れた後のことを考えなくてはならない。あまり先走って行動してはいけないのだ。


そして目的地についた。映画館もあればショッピングセンターもある。

ザ・デートスポットである。


さてとどこに行こうか。

この小さな手を握ってしまっていいものなのか。頭の中はそればかり。


とりあえずは映画館にいこう。

無難すぎるが観たい映画もあることだし。


映画はありきたりな日本の恋愛映画だ。本当は洋画が観たかったが彼女は喜ばないと思ったための決断だ。

旬の男優と女優がありきたりでベタな内容で涙を誘う映画だ。

まったく泣かない。

演技の下手さに笑ってしまうのを堪えるのに必死だ。

彼女もそうだろうと思い横に目をやると号泣している彼女。

なんともやりきれない気持ちになるものだ。

これは大絶賛の感想を考えといたほうがよさそうだな。


映画をみおわると結構な時間になっていた。

日も沈み、恋愛映画も観たことだし手を握るからのキスもありえるだろう。


勇気を出して手を握った。

彼女の小さな手を。

街中を歩く高校生カップル。

周囲にはこうみえるだろう。

高校生らしい青春に胸を高鳴らせた。


だがすぐに全身凍りついた。

全身の毛穴という毛穴から変な汁が出るような感じだ。


目の前から見覚えのあるショートカットの女の子が向かってくる。


そう一目惚れした子だ。


「あーななちゃんなんでここにいるのー!それにもしかしてー?」


まぶしい笑顔を振りまきながらこちらに話しかけてきた。

彼女、ななとは友達のようだ。

俺のことは知らなかったようだ。

悲しい。


「ゆかちゃん違うよ!!あのね、ちょっと買い物に付き合ってもらったの!それでさっき映画見たんだけどそれの真似してたの!!」


おぉーどこからそんなに言葉が出たのかわからないがその言い訳にナイスと心から拍手を送った。


「ほんとーー?でも仲よさそうでいいね!ゆか勘違いしちゃた!」


「ほんとになんでもないよ!ちょっとふざけてただけ!」


そのセリフに熱が入っていたため少し悲しくなってしまった。


「そっかー、ゆかこのへんに住んでるから今度ななちゃん遊ぼうね、それじゃまたね!


「うん、今度遊びに行くね!それじゃまたねゆかちゃん!」


なんとか緊急事態は回避できた。

それにしても危ない危ない。

本命を逃すとこだった。

なんともゲスな考えをしていた。

そしてそれとなく彼女に話しかけた。


「さっきよくあんなにすぐ言い訳ついたね!びっくりしたよ!それにちょっとほんとぽかったね!」


「あのねはるきくん。うちやっぱり今日は1人で帰るね」


「え?どうしたの?まだ帰るの早くない?それにひとりでって、帰り道一緒じゃん」


「いや、実はねうちほんとは好きな人いるんだけど、さっきの映画観たら自分に嘘ついちゃダメだなって思ってさ」


「ごめんねはるきくん」


ええーーーーーーーーーーーーー!


こんなのありぃーーーーー??


「それじゃ今日は楽しかった、はるきくん!はるきくんとは友達でいたいんだ!だからこれからも仲良くはしてね!また明日!」


「あ、うん。また明日〜!」


えーーーーーーーーーーーーー!!

嘘でしょ、さっきまでうまくいってたのに何この状況!!

せっかくいい感じまで行ってたのにゆかちゃんにみられたあげくなぜか友達でいよう宣言。

まだ告白もしてないのに!!


ついてねえ…




部屋は笑いに包まれた。

腹を抱えて笑うしゅうやとなおと。


そして余計に落ち込む俺。


恋愛は難しい。


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