第70話 アニメとかの決めポーズは、日本特有のものらしい

 色々協議の末、ようやくチーム名が決定する。


「よし! じゃあそれで行こう!」

「決まったかい? なら早くやろうよ。待ちくたびれちゃったよ」

「ああ待って。最後にこれだけはやらせて」

「まだ何かあるの〜?」


 名乗りを上げながら、プリキ◯アっぽいポーズを決めて行くユーキ達。


「癒しの天使! パルエンジェル‼︎」

「技の天使! ネムエンジェル‼︎」

「力の天使! ユーキエンジェル‼︎」

「「「召喚天使! ジューシーエンジェルズ‼︎」」」


 ビシッと決めポーズをとるユーキ達。

 しばしの静寂が流れる。

 若干引いた様子で見つめているウーノ。


「それ、僕が途中で手を出したらどうするつもりだったの……」

「そんな事は、アニメの世界では許されなああい‼︎」


 瞬時に間合いを詰めてウーノに斬りかかるユーキ。

 それを剣で受け止めるウーノ。


(ぐっ! 何てパワーだ⁉︎)

「散々人を待たせておいての速攻かい⁉︎」

「ぶっちゃけこの姿、余り長くは保たないからね!」

「いや、だったらくだらない名前なんて考えてないで、早くかかって来なよ!」


 ユーキの剣を押し返し、魔法弾を撃つウーノ。

 

「ユーキ姉様‼︎」


 パルの張った魔法障壁が、全ての魔法弾を防ぎきる。


「パル! ありがと!」


 背中の翼を大きく羽ばたかせ、激しい風を起こすネム。


「名前を決めるのは、くだらなくなんかない!」


 ネムの起こした風が、ウーノの周りに風の渦を作り出す。


「名乗りと決めポーズは絶対いるんだ!」


 ネムがグッと拳を握ると、ウーノを囲っていた風が刃となり、渦の中心に居るウーノに襲いかかる。

 それを両手の剣で次々に落として行くウーノ。


「絶対って言うからには何か納得の理由でもあるのかい⁉︎」


 ウーノが風の刃を全て叩き落とした直後、ユーキとパルが同じタイミングでそれぞれ別方向からウーノに突撃する。


「突貫娘が増えたかっ!」


 剣を構えて迎撃しようとしたウーノだったが、ウーノの眼前でいきなりパルが急上昇する。


「何っ⁉︎」


 ウーノがそれに一瞬気を取られた隙に、ユーキが急加速してウーノに接近する。

 

「フラッシュボム‼︎」

「目くらましっ⁉︎」


 ネムの放った目くらましで視界が制限されながらも、何とかユーキの剣をガードするウーノ。


「グラビティ‼︎」


 ユーキとウーノがつばぜり合いをしている間に、先程急上昇したパルがネムの重力魔法を受けて一気に急降下して、ウーノの背中にぶち当たる。


「エンジェルクラッシュ重量増し増し版なのよおお‼︎」

「がああっ‼︎」

「ライトニングストライク‼︎」


 続いてウーノではなく、ユーキの剣に雷を落とすネム。

 帯電した剣を振り上げるユーキ。


「さっき、決めポーズをとる理由を聞いてたよね? それは……カッコイイからだ! 雷! 光! 斬‼︎」


 雷をまとい威力を増したユーキの剣が、遂にウーノを斬り裂く。


「ぐううう!」


 フラフラと降下して墜落しそうになるが、何とか持ちこたえるウーノ。


「フフッ、良いねえ! 楽しくなって来た!」

「何てしつこい奴なのよ⁉︎」


 ウーノに回復する間を与えないように、すぐさま追撃するユーキ。


「ネム! パル! 援護して!」

「うん!」

「お任せなのよ!」


 再びウーノに向かって行くジューシーエンジェルズ。


「サウザンドアロー‼︎」


 後方より無数の水の矢を放つネム。


「何のっ! バーニングファイアー‼︎」


 巨大な炎の球を撃ち出して、水の矢を相殺して行くウーノ。

 その炎の中を、パルの防御障壁に守られたユーキが突っ切る。


「アイスウォール‼︎」


 自分とユーキの間に、氷の壁を作り出すウーノ。

 ユーキの剣が氷の壁に半分程刺さった所で止まってしまう。

 

「フレイムアップ‼︎」


 ネムによって加熱された剣で、氷の壁を溶かして行くユーキ。

 その際に立ち昇った激しい水蒸気を利用して、更に仕掛けるネム。


「ファントムミスト‼︎ エアバイブレート‼︎」


 辺りに深い霧が立ち込め、ウーノの視界と聴覚を遮る。

 それと同時に一旦ウーノから離れ、大きく旋回して加速するユーキ。


(また目くらましか⁉︎ しかも音まで聞こえにくくなってる。良いねえ、今度はどこから来る⁉︎)


 ウーノが身構えていると、バッと霧の中から飛び出して来るユーキ。

 しかし恐るべき反射神経で受け止めるウーノ。


「エンジェルクラッシュなのよおお‼︎」


 すぐさま背後より突撃して来るパル。

 だが、見て動くというより反射的に体が動いてガードするウーノ。


「君はそればっかりだね? だけどそんな叫びながら突っ込んで来たら、音を遮ってる意味無いでしょ⁉︎」

(いや待てよ? いくら子供とはいえ、そこまでバカじゃないか⁉︎)


「これでいいんだよ。僕達の仕事は君の動きを止める事なんだから」

「ちっ! もう1人が本命かっ⁉︎」


 慌ててその場から離れようとするウーノだったが、周りの水蒸気が次々に凍りつき、ウーノの体を固めて行く。


「ダイヤモンドダスト‼︎」

「くそっ!」


 ウーノが固まりきる前に、素早く離れるユーキ達。

 そして完全に氷に包まれるウーノ。

 凍りついたウーノを見つめているユーキ達。


「やったかな?」

「まさか。これで決まるなら苦労はしないよ」


 ユーキの言葉通り、氷にどんどんヒビが入って行き、遂には砕かれてしまう。


「良いね! 良いよ! 君達、実に良いよ‼︎」


 怒りのような、喜びのような、何とも言えない表情で、更に激しく魔力を高めるウーノ。

 そこへ、ベールからユーキ達へ通信が入る。


「みなさん聞こえますかあ?」

「どしたの? ベールさん」

「さっきちらっとシェーレの様子を見に行った所、ナンバージャックをアイバーンさんが、ナンバーキングをパティさんがそれぞれ撃破したそうです」


「そっか! さすがだね。それで、2人は無事なの?」

「アイバーンさんがかなり危険な状態だったらしいですが、今は治療を受けて落ち着いたようです。パティさんは多少傷は負いましたが、全く問題無いとの事です」


「そっか。みんな無事で何よりだよ。僕達もエースを倒したらすぐ戻るって伝えて!」

「分かりました。伝えておきますね」


「さすがはパティ姉様。伊達に悪魔なんて言われてないね。てか、最早悪魔そのものだね」


「あっ、ネムちゃん! パティさんから伝言で、帰って来たら泣かす! だそうです」

「そんな事までパティ姉様に伝えなくていいようっ‼︎」


「ああそれとユーキちゃん」

「ん? 何?」

「ユーキちゃんの魔力を抑えるの、もうそろそろ限界みたいです〜」

「いや、それを先に言ってよっ‼︎」







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