第41話 肉体って言うと、卑猥に聞こえる?

 猫師匠に制裁を終えたユーキ達がリーゼル城に帰還する。


「酷いニャ、ユーキ……はるばるグレールから助けに来たのにニャ……」

「会った時にぶっ飛ばすって言っただろー!」

「いいのよ! あたしなんか17年間も騙されてたんだから!」

「フニュ!」

「そうです! シャル様は少々痛い目に合わないと懲りないからいいのです!」

「フニャ⁉︎ オルドまで⁉︎」



 宴も終わりに近付いた頃、アイバーンが改めてユーキに質問する。


「ところでユーキ君! シャル様との夢? での会話を全て思い出したと言うが、今は自分自身の事をどの程度まで把握しているのかね?」

「あ、うん……僕がリーゼルの王女として過ごしてた頃の事は全部思い出した。でも、僕が14歳の誕生日を迎えた日……つまり、行方不明になった日からパティと出会うまでの2年間の出来事だけは、どうしても思い出せないんだ……」

「そうか……そこが一番の謎なんだがな……」


 ユーキの話を聞いて落胆するマルス国王。


「ああーっ‼︎」

「な、何ですかパティさん、いきなり⁉︎」

「バタバタしててすっかり忘れてたけど、今回の戦いの前にグレールに帰った時、師匠はユーキが行方不明になってた2年間の事を知ってるって……」

「そうだ! 確かに夢の中でも、僕の事全部知ってるとか言ってたよね? 確かおっさんの記憶も本物とかなんとか……」


「ほお……それはつまり、シャル様を締め上げればマナの謎が全て分かる、という事だな……」

「ニャ⁉︎」


 左側から猫師匠ににじり寄るレノ。


「という事ですよね……」

「フニャ⁉︎」


 反対側からにじり寄るメルク。


「ユーキと会ったら全部教えるって、師匠言ったわよね?」

「フニュ⁉︎」


 背後からにじり寄るパティ。


「さあ、会ったんだから教えてもらおうか!」

「フニャア⁉︎」


 正面からにじり寄るユーキ。

 四方を囲まれ、逃げ場を失った猫師匠。


「確保ー‼︎」

「フニャアア‼︎」


 ユーキの号令で、四方から一斉に猫師匠に襲いかかるユーキ達。

 しかしフワッと浮き上がりかわす猫師匠。


「ロロ‼︎」

「ハイなのです‼︎」


 狙っていたように、宙に飛んだ猫師匠に飛びかかるロロ。


「ニャんの‼︎」


 それを空中でくるりと回転してかわす猫師匠。

 しかしその背後に、セラの羽が作り出した魔方陣が現れる。


「マジックイレーズ‼︎」


 魔法無効化の結界を発動させたセラだったが、魔力を高めて堪える猫師匠。


「甘いニャ! カオスにも匹敵する魔力を持つあたしには効かないニャ!」

「私だけの魔力ならねぇ」

「エターナルマジック‼︎」


 エターナルマジックを発動させたユーキが、セラの魔力を補う。


「フニャ⁉︎ 落ちるニャア‼︎」


 魔法を解除された猫師匠が落下して行くが、寸前でオルドが受け止める。


「皆様、この方は仮にもグレールの女王陛下なのですから、程々に……」

「あんた! よく家に来てた借金取り⁉︎」

「借金取り……?」


 パティの借金取りという言葉に、ピクリとなるオルド。


「でかしたニャ、オルド! さあ、このままグレールに帰るニャ!」

「分かりました……では皆様! 私達はこれで失礼致します!」


「ああ! 逃げるのかー‼︎」

「ニャハハ! 今日の所は見逃してやるニャ! まあでも、一応あたしと会ったわけだから、1つだけ教えてやるニャ! マナが14歳になった日に行方不明になって2年経ってる訳だから普通は16歳になってる筈だけど、今のマナの肉体年齢は14歳のままニャ! したがって、マナの年齢は14歳、という方が正しいニャ!」


「え⁉︎ どういう事だよ? それって……」

「あ、そういえば……マナが行方不明になってる2年の間、マナはこの世界には居なかったって師匠が……」

「ではその間マナ君は、ユーキ君の言う別世界に居たということか? しかし、だとしてもそれでは、体が成長していないという事の説明が付かない……」


「真相を知りたかったら、改めてグレールまで会いに来るニャ! ああそれと例の話、あたし達グレールも参加を表明するニャ! それでは、さらばニャアア‼︎」

「あ! 待てー‼︎ このバカ猫ー‼︎」


 ユーキの絶叫も虚しく、飛び去って行くオルドと猫師匠。


「オルド! お前があたしを助けるなんて、珍しい事もあるもんニャ⁉︎」

「臣下ですから当然です! そしてシャル様は女王陛下らしく、国に帰ったらちゃんと仕事をしていただきます!」

「フニャ⁉︎」

「ああそれと、私が何故借金取りと言われたのかという事も、じっくり聞かせていただきますので!」

「イニャアアア! やっぱりリーゼルに戻るニャアアア‼︎」




 そして、まんまと猫師匠に逃げられたユーキ達。


「クソッ! 逃したか⁉︎」

「ごめんなさいユーキ、ウチの師匠が……」

「いや、パティが謝る事じゃないよ! それにまあ考えてみれば、今回は一度に色んな事があったから、この上更に真実を聞いちゃったら完全にキャパオーバーだしね。正直ちょっと間を置きたいし……」

「そ、それもそうね⁉︎ じゃあ改めてグレールまで会いに行きましょう!」


「うん……あ、ところで……さっき猫師匠が去り際に参加がどうとか言ってたけど、何の話?」

「あ、ああそれなんだが……以前にユーキ君達に話した武闘大会の事だよ」

「ああそう言えば、僕達はその為に王都を目指してるんだった……あ、でも僕、リーゼルの王女になっちゃったけど、王女の僕が出ちゃっていいの?」


「問題無い! 元々今回の大会は、完全に国家の垣根を取り払って参加者を募っていたからね。それが例え他国の王族であろうと関係無い! いやむしろ事情が変わったので、王族である方が望ましいぐらいだ。まあもっとも、パラスに属する国の参加だけは認めていないのだが……」


「私達ヴェルンもパラスに反旗をひるがえしましたからぁ、参加を表明しますぅ」

「あ、でもヴェルンの人達、パラスに逆らっちゃって大丈夫なの?」

「そこは抜かりないのですぅ! 今回の作戦の最終目標はぁ、リーゼル、ヴェルン、トゥマールの3国を統一してぇ、パラスに対抗しうる1つの国家にする事ですからぁ! あ、でも猫さんがグレールの参加も表明しましたからぁ、4国になりますねぇ」


「ええ、そうなの⁉︎ 僕はそこまでは聞いてなかったけど」

「ふむ……三国統一の件に関しては、それぞれの王族と、ごく一部の者しか知らない事だからね!」




「あの……僕も一応王族なんだけど……」

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