第26話 夢見るユーキ、非常事態編(あの声の正体が明らかに!)
魔力弾を放つパティ。
「真っ黒黒ロロになっちゃうのですー‼︎」
「ロロちゃん、結構余裕あるよね〜‼︎」
抱き合いながら、目を伏せるユーキとロロ。
じっと目を伏せていた2人だったが、遠くの方で何か音がしたきり、何も起こらないので恐る恐る目を開ける2人。
するとパティが、魔法を放った左腕を自分の右腕で押さえ込んでいた。
「パティさんが自分で狙いをそらしたのですか?」
(パティ……もしかして、少しは意識があるのか?)
ちょうどその時、メルクを連れたアイバーンが帰って来る。
「なっ⁉︎ これはいったいどういう状況なのだね?」
「アイバーン様! 何だかパティさんの様子がおかしいです」
「アイく〜ん‼︎ メルく〜ん! 良かった〜、無事だったんだね〜! お願〜い、アイく〜ん! パティを止めて〜‼︎」
「ユーキ君! まだ無事な様だな! 良かった……しかし止めてと言われても、こんな状態のパティ君は私も初めて見るのだ!」
「これは暴走状態ですね」
「セラ⁉︎」
ユーキの元に駆け寄るセラ。
「ユウちゃん、今呪いを解除しますね」
ユーキの周りに羽で魔方陣を描くセラ。
「デスティニー、ブレイカー‼︎」
ユーキに着けられた魔道具から出ていた黒いオーラが消滅する。
「お⁉︎ お⁉︎ 体が軽くなった‼︎ やった! ありがとうセラ‼︎」
「どういたしまして……後はこの魔道具を外せば」
ノームから奪って来たカギで右腕の魔道具を外すセラ。
「おおー‼︎ やっと外れたー‼︎」
「ユウちゃん! 他のカギは?」
「あ、えっと……1つはアイ君が持ってるはず……あとの2つは周りの壁で倒れてる誰かが持ってるはずだけど……」
「周りの? 1人増えてますねー⁉︎」
「ああ、うん……実は三兄弟だったんだ」
「なるほど……」
そこへメルクを抱えたアイバーンがやって来る。
「セラ君! すまないが、メルクを頼む」
「ハイ、頼まれました!」
「それと、このカギを……」
アイバーンよりカギを受け取るセラ。
「アイ君、ありがとうね!」
「いや……元はと言えば、ユーキ君を守りきれなかった私の責任だ! すまない!」
「アイ君が謝る事なんてないよー‼︎ 僕の不注意が招いた事なんだから!」
「詫びと言っては何だが、パティ君は私が止める」
「うん、お願いね! アイ君!」
アイバーンから渡されたカギで、左腕の魔道具を外すセラ。
「ロロちゃん! 後のカギ、お願い出来ますか?」
「ハイなのです! ひとっ走り行って来るのであります! 超特急ロロなのです!」
そう言って、倒れている三兄弟の懐を順に探って行くロロ。
メルクのケガを治療するセラ。
「ごめんなさい、ユーキさん……僕がだらしないばっかりに、カギを奪えませんでした!」
「ううん! 謝るのは僕の方だよ! 僕の為にこんなケガさせちゃって、ゴメンね……」
「そんな! 僕が自分の意思で来たんです! ユーキさんは気に病む必要はありません!」
「ユウちゃん、気にするならお詫びにメルちゃんにキスでもしてあげたらどうですか?」
「するかっ‼︎」
ショボンとなるメルク。
「あ、いや……別にメル君が嫌いとかじゃなくてね……僕まだ、男か女かハッキリしないからさ」
「おっさんである可能性は極めて低いって言ったじゃないですか? もうユウちゃんは女の子で確定ですよ!」
「そうは言われてもなー……記憶が無い以上確信が……」
「じゃあ仮に男同士なら、尚更ノリでしてあげたらいいじゃないですか」
「ぐっ……な、ならヤマトの姿でいいならやってあげるよ」
「あ、いえ……それはちょっと……僕はそういう趣味は無いので……」
「ならメルちゃんが女装すれば、ちょうどバランスが取れていい……」
「断固拒否します‼︎」
向こうでは、アイバーンが何とかパティの攻撃を凌いでいる。
(くっ! 私がこうも押されるとは……今のパティ君の力はレベル7クラスか? あるいは、これが元々パティ君の秘めた潜在能力、という事なのか⁉︎)
「ねえセラ! 例の魔法封じの結界でパティを元に戻せないの?」
「ああも動かれたらかけられません! もっと広範囲に仕掛けないと……でもその為には準備が必要なんです」
「じゃあどうすれば止められるんだ?」
ユーキが頭を悩ませていると、誰かの声が頭の中に響く。
『ユーキ! 聞こえるかニャ? ユーキ!』
「え? 誰⁉︎」
「ユウちゃん?」
「いきなりどうしたんですか? ユーキさん」
どうやらその声は、ユーキにしか聞こえていないようだった。
『あたしニャ! いつも夢の中でユーキをおちょくってるニャ!』
「おちょくってるって……いや分かんないよ! 全然覚えてないし」
『ああー、そうだったニャ! 目が覚めたら忘れるんだったニャ……めんどくさい設定ニャ!』
「設定って……」
「ユウちゃん、誰と喋ってるんですか? もしかして、霊的な何かとですか?」
「へ、変な事言わないでくださいよー、セラさん」
『と、とにかく! 詳しい説明は後ニャ! 今はパティが一大事ニャ! あのバカ娘、あれほど魔装具のランクアップはしちゃいけないって言ったニャ! 案の定暴走してるニャ!』
「え? 君って、パティの関係者?」
『そうニャ! だからパティを助けてほしいニャ! このままだと自分の魔力の高まりに、肉体の方が耐えられないニャ!』
「え? ど、どうすればいいのさ?」
『何とかしてパティに触れてほしいニャ……そうすれば、後はあたしが何とかするニャ! その後でセラに、魔法封じの結界を仕掛けてほしいニャ。あたしの声が聞こえるのは、あたしと繋がってるユーキだけニャ……だからユーキからみんなに説明してほしいニャ!』
「繋がってる? な、何だかよく分かんないけど、分かった! あ、そうだ! 君、名前は?」
『名前? ああ、ええと……ね、猫でいいニャ!』
「ね、猫さんね……」
『THE AL○EEみたいに言うニャ‼︎ どもっただけニャ! ただの猫ニャ!』
ユーキから2人に、今までのやり取りの内容が説明される。
「なるほど、分かりました……ユウちゃんがパティちゃんに触れた後に、私が結界を仕掛ければいい訳ですね」
「うん、お願い」
「ではユウちゃんの魔道具を解除したら、決行しましょう!」
ちょうどその時、ロロがカギを持って帰って来る。
「お待たせなのです! 戻って来たのです! ブーメランロロなのです!」
「ロロ! ありがとうね!」
「いえいえ! お安い御用なのです!」
「ロロちゃん! そっちの魔道具の方、お願い!」
「ハイなのです」
セラとロロが、残り2つの魔道具を解除する。
「やったー‼︎ 全部取れたー‼︎ これで魔法が使えるぞー‼︎」
『ユーキ! 急ぐニャ!』
「あ、ああそうだった……セラ! 行くよ!」
「ハイ!」
「え? どこへ行くのですか? ロロにも説明してほしいのです」
「パティさんを止めるんです……ロロさんは僕と一緒に、お二人を援護しましょう!」
「ハ、ハイ! 了解なのです!」
アイバーンの側までやって来たユーキ達。
「アイ君‼︎ 僕達が何とかするから、少しの間だけパティの動きを止めてー‼︎」
「ユーキ君⁉︎ 何か策があるようだね! 了解した!」
「アイバーン様行きます‼︎ エターナルレイン‼︎」
メルクがパティの周りに雨を降らせる。
「ダイヤモンドダスト‼︎」
その雨をアイバーンが凍らせて行くと、それに触れたパティの体が凍り付いて行き、動きが止まって行く。
「あまり長くは保ちそうにない! 急いでくれたまえ、ユーキ君!」
「ありがとう! メル君! アイ君! ロロ、お願い!」
「ハイなのです!」
ユーキを抱えたロロがひとっ飛びしてパティの側に降り立つと、パティに抱きつくユーキ。
『目を覚ますニャ‼︎ このじゃじゃ馬娘‼︎』
パティが光に包まれ、体から出ていた黒いオーラが消滅して行く。
「セラ‼︎ 今‼︎」
「ハイ‼︎」
パティの周りに羽を撃ち込み、魔方陣を作るセラ。
「マジックイレーズ‼︎」
パティの魔装が解除され、目に光が戻って完全に意識を取り戻すパティ。
「ごめんなさいユーキ……ありがとう……」
「うん……おかえり、パティ……」
状況を理解していた様に、礼を言うパティ。
暴走の影響で魔力切れを起こし、へたり込んでいるパティに、ユーキを介しての説教が始まる。
『ありがとうニャ、ユーキ……でもパティにちょっと言いたい事があるから、もう少しリンクさせてほしいニャ』
「えと……何かニャーニャー言う人がパティに言いたい事があるらしいから、代弁するね」
「ニャーニャーって、まさか⁉︎」
『パティ、あたしニャ! 誰だか分かるニャ』
「あのー、その語尾のニャっていうのも言わなきゃダメ?」
『当然ニャ! これがあたしの最大の特徴ニャ! 絶対に外せないニャ!』
「うーん、分かったよ……えと、パティ、あたしニャ! 誰だか分かるニャ」
「その口調……やっぱり師匠?」
「ええ! パティさんの師匠?」
「メルク、静かに」
「あ、ハイ……すみません」
猫の言葉を、感情の起伏まで忠実に再現して伝えるユーキ。
『そうニャ! あたしが何を言いたいかは、もう分かってるニャ』
「そうニャ! あたしが何を言いたいかは、もう分かってるニャ」
「まあ……一応……」
「あたしが何故魔装具のランクアップを禁止したか、これでよく分かったニャ」
「うう……でもぉ!」
「でもじゃないニャ‼︎ お前は危うくユーキを殺す所だったニャ‼︎」
「う……ごめんなさい……」
「パティ君が素直に謝っている‼︎」
「アイちゃん、うるさいです」
「あ、ああすまない」
「何の為にそこに居るのか……当初の目的を忘れてはいけないニャ」
「ハイ……」
「まあ、ランクアップさせてしまった物は仕方ないニャ……今後2度とこんな事が無いよう、もっともっと精進するニャ」
「ハイ、分かりました!」
「分かってくれたなら、もうこれ以上何も言うことは無いから、そろそろ帰るニャ」
「お疲れ様です、師匠!」
「ああそうだ! ひとつ言い忘れてたニャ」
「?」
「私はマジカル天使ユーキ! みんなのハートを撃ち抜いちゃうぞ♡」
「え?」
「え?」
「え?」
「え?」
「え?」
「ユーキ……あなた……」
顔が真っ赤になるユーキ。
「何言わすんだてめえー‼︎」
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