時渡りの姫巫女

真麻一花

第1話 プロローグ

 ドン……! ドン……!

 まもなく、姫巫女と剣士による奉納の舞が始まる。

 太鼓の音が大きく響き渡り、グレンタール中に祭りの要である舞の奉納が始まることを知らせる。

「わぁ!!」

 広場の歓声が響いてくる。

 グレンタールの始まりを伝える舞が、グレンタールの発展を祈願する者たちの願いによって舞われる。

 去年の祭での剣士と姫巫女の舞は美しく、切なく人々を魅了し、剣士と姫巫女の再来とまで言われるほど見事な物だった。

 恐らく、後世にまで語り継がれるだろう。

 遠くに祭りの音を聞きながら、彼女はゆっくりとそちらに目をやる。

 今年の剣士と姫巫女は……。

 彼女は、その喧騒を窓の外に聞きながら、一年前の祭りへと思いを馳せていた。

 全ての始まりは、一年前の、あの祭りの頃だった。

 窓の外に、舞の音が響く。

 祭りが始まろうとしていた。

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