「バックアタックだ!」VS『冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド(~以下略)』

 がらんとした闘技場のリングをすすむ。剣や槍といった武器、盾や鎧などの防具といった、おびただしい遺品が散らばっている。それらが表しているのは黒ドラゴンとの激闘の痕跡。それぞれに持ち主がいて、それぞれに人生があったのだろう。

 そう思うと微妙な感情に囚われる。オレはこうして生きていて、彼らは消えてしまった。なにが明暗を分けたのか? そのことを納得できるように説明できる存在がいるのだろうか?

 ……我ながら、らしくないなと自嘲してしまう。そんなことを考えるキャラじゃないよな……。


 それらを避けながら歩みをすすめると、きゅうに塵ひとつない空間にでた。黒ドラゴンの居た空間だ。いよいよ近づいてきた。



 😈



 うつ伏せ状態で倒れていたのは、やはり人間だった。


 至近距離まで来ると、雪のように真っ白な肌と黒くて長い髪。そして身体を構成する、やわらかな曲線が確認できた。小柄な女性……いや、少女か。


「!? しかも、何故に全裸?」


 不自然すぎる状況。

 オレの頭に疑問符が浮かぶが、警戒しながら周りを見渡し、危険がなさそうだと確認してから近づいた。


「これ……なんだろ?」


 印象的に目にとびこんできたのは、倒れている少女の左腕に大きく、黒い炎を連想させるような紋様が描かれていたことだ。その紋様は巻き付くように、肩から二の腕をとおり手首にかけてまで腕全体に施されている。それはまるで龍の胴体をおもわせ、ちょうど手首まで繋がって伸びている。


 オレはそんな子の肩に手をやり、抱きかかえるように仰向けにした。黒髪が流れると、美しさを体現しつつも、幼さをのこしました。というような、絶妙なバランスフェイスがあらわれる。そんなカオの口元に、自分の耳を寄せると吐息を感じられた。生きているようだ。


「うっわ……カワイイ。でも……なんで眼帯してんだろ? 眼が悪いのかな?」


 少女の左眼には黒い眼帯が着けられていた。腕の黒い紋様と相まって、ただ者ではない感じが、ひしひし伝わってくる……。


 そして、そんなカオから視線を下げると、男の子ぜんいんが大好きな白い双丘があるわけで……。しぜんその胸を凝視することになった。


 「…………。(アステマとどっこい。……いや、この子のほうが、ちょっぴりおおきいか。形はとてもいい。でも『ない胸』フォルダだよなぁ……)」


 うーむ、そろそろ……ズババーン! という豊かなボリューム感がきてくれてもいいんじゃなかろうか? オレの異世界に足りないのはそこなんじゃなかろうか? そう思うと微妙な感情に囚われる。なにが明暗を分けたのか? このことを納得できるように説明できる存在がいるのだろうか? そもそも『おおきい』のと『ちいさい』のはどちらがよいのか……。たとえば、オレのエルフ嫁ニケアは『ちいさい』ながらも感度抜群で、おさわりからの、悶えリアクションや吐息が可愛らしいことこの上ない。胸そのものの感触よりも(無論そのものの素晴らしさは言うまでもないことだが)、そのリアクションが見たくておさわりをするという逆説的な要素も多分に有している。胸をさわるから悶えてくれるのか? 悶えてくれるから胸をさわるのか? しかし『おおきい』には『おおきい』にしかできないことがたくさんあるわけで……大は小を兼ねるという言葉もあることから……。


 そんな、人生の深淵に想いをよせていると、――ピクッ。と反応があり。カオがしかめられ――おおきな。とてもおおきな右眼がひらかれた。その瞳は吸い込まれるような黒。どこかで見たことがあるような漆黒を宿している。


「――ッ、あたま痛。む。ここは……?」左腕であたまを抑えながらそう呻く少女「この身体……そうか。わらわは敗れたのだな」


「……や、やあ。初めまして。からだ大丈夫? 具合どう?」


 オレは慣れない笑顔を浮かべ、声をかける。怪しいヤツだと認識されないように精一杯の笑顔だ。おもいっきり全裸状態の彼女を抱きかかえているのだ。不審がられたら面倒なことにしかならない。


「お主は?」射貫くような瞳だ。警戒しているのだろう。

 オレは反射的に――パッと手を離し、すこしだけ距離をとる。


「オレの名はダイスケ。あの、これ着る? その……身体。裸だよ」つとめて感情をのせずに『オレはキミの身体に興味ありませんよ』というスタイルだけとると、身につけていたマントを差し出した。


 そんな彼女は、平然とした様子で右眼を自身の身体にながすと「ああ……べつに、このままでかまわぬ」と、マントを拒否ってきた。


 !? い、いや! オレがかまうんですけど!

 どこみていいか躊躇うんですけど! まさかのリアクションなんですけど! この場面は『キャー!』とか、『えっち!』とか、そうじゃなかった、ら顔を赤らめてうずくまっちゃうとか! そういうリアクションであって、しかるべしなんじゃないでしょうか!


「そんなことよりも、聞きたいことがある。わらわを倒したのは誰なのじゃ?」


「は? ……え? ……わらわ?」この娘は、なにをいっているんだろう。その言葉の意味を図りかねた。


「あ、そうじゃったな。ここにいたドラゴンじゃ。あの大きくて美しい黒いドラゴンじゃ。ドラゴンを倒した者がおるのだろう? それは誰かと問うておる」


 美しい? うーん。美しいかあれ? 禍々しいとか人智を超えたとか、そんな印象だけどな。……たしかに、神々しい感じはしたけれど。質問は理解できた。ならば答えは簡単。


「ああ……。黒ドラゴンを倒したヤツね。それならオレだ!」


 迷わずサムズアップをキメるオレ。絵を描いたのはジェラートだけど

 作戦立案はオレだからね。ここはとうぜん『オレ』でしょう!

 ちなみに『ジェラート』という回答は、ブブー不正解。たとえるなら『金閣寺を建てた人は?』って質問されて『大工』って答えたら不正解なのといっしょだからね。

 金閣寺を建てたのは、足利…………えーと。足利まではでてくるんだけどな。足利……、そう……『足利尊氏の子孫!』(どのみち不正解)


 っうか、そんな話はいい。金閣寺なんて、超どうでもいい!


「お主がドラゴンを倒した? そうは見えぬのだが……」マジマジとオレをみる少女。


「よく言われます。でもやればできる子なんです」キリッと断言するオレ。


「……いったい、どのような方法を用いたのじゃ?」


 アステマが持ってた『ですっ☆ノート』の効果なんだけど、説明めんどいな。話が長くなる。


「魔法です」端的に答えた。こういっておけばいいだろ。魔法って便利だね。


「魔法か……。たしかに、お主からは並々ならぬ魔力を感じるが。しかし、いったいどのような魔法を? そのような魔法は、聞いたことがないのじゃが……。いや、よそう。終わったことを聞いても詮無きこと……。お主が倒したのじゃな。強いんじゃのう」


 なにやらブツブツとつぶやくと、トロンとした瞳になり。


「お主の名は?」


「皆川ダイスケ。ダイスケとよんでくれ」


「そうか、ならダイスケ殿。わらわはお主のものじゃ。好きにせよ」


 そういって仰向けに寝転がると、両腕をオレに広げ――すべてを招き入れるようなポーズをとった。

 かんたんに説明すると『なんていうエロゲですか』構図。

 『エロアプリご褒美』構図でも可。


「な、ななななな……! なにをしてるんですか!!」


 おもわずたじろぐオレ。言葉と動作の意味わかってますよ、もちろん! でも聞き返さずにはいられないでしょこんなもん! 出会って3分でしちゃうとかマジありえないんですけど! どういう意図ですか! どういう企画ですかといいたい!


「……なにって、決まっているじゃろ。誰でもすることじゃ。それに、おまえたち人間は常にそうなのじゃろ? その持て余している欲情を、えんりょなく、わらわの身体に叩きつけるがよい」


 叩きつけるがよい。て……。この娘。ぶっとんでるな。ぶっ飛んでいる娘には耐性あると自負するオレだけども、これは……ぶっとんでる。


「…………」思考停止して硬直するオレ。


「む。もしかしてお主はじめてか?」


「……そうですね。そういう意味では、はじめてですね」


「きにするな。わらわもはじめてじゃ」


「その情報いらないです。そういうことじゃないです」


「む。すると、もしやお主。同性しか愛せないとか……」


「ち、ちゃうわ! 異性を愛してます! 異性が大好きです!」


「そうか。よかった。なら構わぬだろ? ならば問題はない」


「構うわ! 問題しかないわ! そうじゃないだろ! 違うだろ!」


「ああ、すまぬ。そういうことか……わらわとしたことが」


 ポンと手をたたく少女。わかってくれたようだ。

 ホッとむねをなで下ろすオレ。最低ラインギリギリの常識は持ち合わせてくれたようだ。最低ラインをすでに大幅にぶっちぎっている気がするけど……。

 ……そ、そりゃあさ。こんなカワイイ子となら、大歓迎だけど……。いくらなんでも急すぎる。ものには段階というものがあるよな。心の準備とか、準備とか……。ニケアとか……。



後ろからバックがよかったかの」


 

 そういって、うつぶせになると、膝をたてて、小ぶりなお尻を向け、首から上だけでこちらをのぞく少女。 

 やっぱり『なんていうエロゲですか』構図2。

 『エロアプリご褒美』構図2でも可だった。


「それは、あっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」

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