冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド(以下略
巨大なドラゴンがいた。
黒鱗が深い夜を思わせた。月の無い常闇の黒をしている。
いままでのトカゲの親玉といったドラゴン達とは、明らかに次元の異なる生物。
……いや、これを生物と言っていいのか、はばかられるような。神々しさも宿している存在。動くと城がうごいているような質量感。四肢や尾は神殿の柱ほどだろうか。
そんな黒鱗のドラゴンが、数万人は収容できるであろう円形闘技場のリング上に、その巨体を顕わにしていた。
そして、特筆すべきはその頭部。
四角かった。
いや……。
ドラゴントラップの檻を頭部に被っていた。
餌を食べて取れなくなったのかな……。
……うん、なんか……だいなし。
でも、こんな状態でも転送できるんだね。感心した。
😈
――ゴァア!!
短い咆吼と共に、ドラゴンが長い首を振ると檻が吹き飛んだ。
その檻は、皇帝達の居並ぶ闘技場の貴賓席に直撃する。
黒鱗のドラゴンは、その檻に向け、怒ったようにブレスを吐く。
黒い炎が貴賓席を包んだ。
「ぎ――ゃああああああ……あ!!」
炎に巻かれた黒い人影が大勢、貴賓席から飛び出す。それぞれが苦しそうに、酷く苦しそうに叫びをあげ、狂ったように手足をカクつかせてのたうち踊る。
「キ……ああ……あ……ぁ」
――シュウ。
と、それぞれ消えて無くなった。
炎で焼かれたというよりは、まるで小蟲の大群に喰われてちぎれ死んだような印象を受けた。あれは通常の炎では無い。
……うっわ、嫌な死に方。エグっ。
「こ、皇帝……」
「陛下ァーーーー!!」
「オレの
「お、おのれー」
「対ドラゴン戦闘用意ィ!!」
「総員! 配置につけ!」
「――チッ。……まぁいい。このノートがあれば
「盾壁騎士前へ!」
「術騎士隊! 魔法込め!」
「抜刀! 抜刀ォー!!」
「……。皇帝にたよらず。他の策をかんがえるとするか」
会場の騎士達が口々にさけぶ。オレの心のさけびもまざる。鎧の擦れる音が響き、よどみのない動きで陣形が組み上がる。各々が武器を構える。他のハンター達もすばやく散会して、それぞれの戦闘位置につく。その練度の高さがうかがい知れ――
――ブオン。
「あぶない!」
オレの身体に衝撃が走る。
「いった……なにすんだよ! ……!?」
オレがいた場所に大きなくぼみができていた。ドラゴンの尻尾によるなぎ払い攻撃だ。逃げ遅れた連中は真っ二つになったり、鎧ごとひしゃげてうごかない。
「だいじょうぶか、異世界の勇者!」
「ここは下がっていろ」
「ドラゴンの相手はオレたちの仕事だ」
さっきの嫌な若い騎士達だ。オレを助けてくれたのか……。
「オレの名はエルノ」
「オレはクオン。あんたそんな装備で挑むとは……」
「見直したぜ異世界の勇者。オレはターグだ。よろしく」
その笑顔はまぶしい。
……おまえら。
――ゴオオオオオオオ。
ドラゴンの黒ブレスがオレの前を通過した。
「うぎゃああぁああ……あ」
「しにたくぁ……の」
「くだ……キ」
――シュ。
あ、三人ともしんだ。
ま、モブだし。しかたないねバイバイ。
😈
「油断しないでみんな! 冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナスよっ!!」
アステマがさけぶ。
「デュエルクリーチャーマスターズか!」
おもわずツッコむオレ。
カードゲームのドラゴンネーミングかよ……。子供のころオレやってたなー。名前長いほど強いんだ。だとすればこいつは相当な強さだな。
……って、なんでドラゴンの名前知っているんだよアステマ。
「な、なんじゃと……。冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナスが地上に降り立ったとは……なんたること」
いつのまにか横にきていたじじい――大神官ガトーがそんなことをつぶやく。
……いや、じじい。おまえすごいな。そんざいを知っていたことよりも、ドラゴン名を噛まずに言えたことに感心したわ……。
「冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナスをごぞんじなのですね……。さすがは大神官ガトーさまっ」
「うむ……わしも書物でしか知らぬが冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナスは魔界に存在するドラゴンの中でも最強。
その力は神をも凌ぐという。しかし魔界の最下層よりなお深い昏闇に棲むとされる冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナスがなぜ地上に……。冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナスが地上に現れてしまった以上、どのような災厄がこの――」
「長いわ! おまえら冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナスて、いいたいだけだろ!」
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