雲南伝説胡蝶泉(こちょうせん)

きりもんじ

第1話義烏(イーウー)

今年も仕入れに船旅です。船は大阪と神戸から週一回ずつ出ています。

慌ただしい一年を終えやっとほっとする自分の時間です。 


新鑑真号のほうが蘇州号よりゆったりしているようですが

蘇州号には展望室と展望風呂があります。


新鑑真は2段ベッドの8人部屋。蘇州号は雑魚寝です。

それが又色んな人と知り合いになれて旅は道ずれやはり船旅に限ります!


穏やかな船旅。ところが今回は天津旅遊団が乗り合わせていて

60代の婦人が大半、ダンスやマージャン、カラオケ大好きの団塊世代。


男性はひ弱で圧倒的に婦人パワーが強力。これは日本以上のようです。

デッキで男性がイーアルサンスーと怒られながら

ダンスを指導されていました。


この年代はとにかくあつかましい。1Fフロアを占有して

器用に羽根けりをやっている。マージャン室はお金を取られるので

フロアのテーブルでマージャン、トランプ。食堂からトレイを持ってきて

食事ととにかくマナーというものがありません。


彼らの部屋の通路手すりには真っ赤なパンツやどでかいブラジャー等の

下着類がびっしりと乾かしてありました。


今から40年前には皆紅顔の美少女美少年だったはずなのですが・・。

忘れもしない文化大革命、紅衛兵運動は青春そのものだった。

全共闘の世代と写し重なりますね。


このパワーが今全世界に打って出ようとしています。マナーも何も

あるものか、これが現実。まさに中国のエネルギーが世界を変える。

この流れはもう止められないと思います!


あ、申し遅れました。私は京都の嵯峨野で小さな民芸品店を開いている

団塊世代の若林治。3年前に妻と死別して今は独身。毎年冬のシーズン

オフになるとタイやバリ島、中国に買い付けに行きます。

今年も船で上海に上陸です。


大陸が近づくと海の色が泥色に変わってきます。

やっと陸地が見えてもなかなか近づきません。

黄浦江に入って初めて中国に来た感じです。

ここからさらに2時間さかのぼります。


大橋をくぐり電視塔が見えてきてあのなじみのアングル。

上海だー!心和む一時です。上陸後すぐに南站に向かい、

高速バスで義烏へ7時間。日が暮れるころ義烏に着きます。


世界の格安総合雑貨のほとんどをこの町で作っています。

義烏にある3大バザールの中でも一番でかい国際貿易商城。

どういうわけかS字型のビル、福田フーデン1期と2期といいます。


福田1期は10年前にできたビルで主に宝飾、雑貨、玩具など。

1階玩具だけで3000ブース。2階宝飾で3000ブース。

こんな調子。福田2期は数年前にできた新館で工具、時計、めがね

などで1期の10倍規模。


この夏博覧会が開かれ、さらにいま福田3期を建築中です。

世界の中国雑貨はここから全世界へ発送されていきます。


値段は交渉次第ですが10分の1、20分の1はざらで。

ものによっては100分の1。ここがバイヤーの腕の見せ所。

とにかく立ち止まらず歩いていくだけで1日はかかります。


近代的大バザールといったところですがそこは中国、

赤子がいたり、脇でご飯食べたり、サトウキビの皮を放ったり。

唾はいたり。しょっちゅう掃除はしているものの、どこか汚い。


思えば今まで世界中の色んなバザールを見てきました。

超特大はイスタンブールのグランバザール。屋根つきドーム内に迷路のように

古典的なブースが続きアフガンコートにパズルリングをたくさん買いました。


カイロもでかい。香水と象嵌。露店バザールではマドリードの蚤の市。

火縄ライターをたくさん買いました。チェンマイの夜市。木猫、シルバー。

インドでは更紗、バチック、銀指輪。バリ島ではろうけつ染め、などなど。


よく考えると義烏の国際商貿城いかにでかいかがよく分かります。

ここはひとつ腰をすえてかからねば。目的は木猫とネーミング用の銀鎖

(ネックチェーン)です。特にチェーンは年間1万本は超すので慎重に。

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