政略結婚

 娘は意に添わぬ結婚を明日に控えていた。


「ああ。なぜ私は見ず知らずの男と結婚しなければならないの…。このような家に生まれたくなかったわ」


 娘が泣く姿を見て、幼い頃より尽くしてきた召使いは言った。


「お嬢様。危険ですから、決して夜中に屋敷を抜け出して荷馬車に忍び込んだりしませんように。私はうっかり鍵をかけ忘れるかもしれませんが、だからといって外へ出てはだめです」


「……ありがとう。わかったわ!」


 勘の鈍い娘は言いつけを守り、嫁いだ先で幸せに暮らした。

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