第14話 スカート丈が短すぎます⑤

 桜井さんを個人的に呼び出して、話を聞いたりもした。


「でも、結局校内で不埒なことしてる二人の方がよっぽど問題じゃないですか? それとも何? 斎藤先生は、生徒の不祥事、隠しておきたかったって感じ?」


 ま、そうだよねー、「伝統と歴史を重んじる高校」ですもんね、と彼女は鼻で笑いました。


「いずれにせよ、他人の顔のうつるものを、誰でも見れるネット上に無断で載せるのはいかがなものかと」

「そんなこと、みんなやってるし! SNSに、一緒に遊んだときの写真とか載せるときも、イチイチ確認とってくる子なんてほとんどいない。――そんなに言うんだったら先生、そういう子たちにもひとりひとりこうやって呼び出して注意してくださいよ」


 それは、無理です。ネットの世界はあまりに広く、生徒の皆も、あまりに広く手を伸ばしているから。


「こうやって問題にしてるのは、結局、動画の内容が問題だから、ですよね。でも、実際にキスしてたのはあの二人なんだから、文句はあの二人に言ってくださーい」


 毛先をくるくると指に巻き付け、私の話には取り合わない様子。――この子が自分の過ちに気づくのは、いつになるのでしょうか。


「失礼しまーす、斎藤先生はいらっしゃいますかぁ?」


 突然、職員室の出入口から聞こえる、わたあめのような声。


「なんですか、増田さん」


 担任をしている生徒の声は、顔を見なくても分かります。


「……あ、お取り込み中ですね、明日で大丈夫でーす、失礼します」


 そして、職員室を去った。――他の教師のヒソヒソ声が、耳障りでした。それと同時に、得体の知れない不安が過ったのでした。




 その不安は、正しかったと言えました。


 翌日、増田さんは再び職員室を訪れました。


「あの、退学したいんですけど、退学届って普通に事務室でもらえば良いんですか?」

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