あの雪の日に

楠樹 暖

第1話 新雪

 まだ誰も歩いていない雪の上を歩く。自分の足跡だけが点々と続く。

 車の轍の上をせかせかと歩く人が居た。

「踏み固められた雪は滑るから危ないよ」

「ウルセーな。急いでんだよ」

 注意はしたが聞く耳を持たない。

 案の定、すてんと転んだ。

滑りにくい場所を新雪しんせつで教えてあげたのに。

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