第2話シベリアの空
○貴女あなたはもう忘れたかもしれないが?
真っ青な海と空。横浜港から出発しましたね、ナホトカ号。
食事のときの同じテーブルになりました。はじめまして。
青タオルとマメタンの出会いでした。
〇あなたはもう忘れたかもしれないが?
あなたのTシャツにはJUSTMARRIEDとかかれていて
よく冷やかされてましたね。覚えてますか?
小説家夫婦とよくドボンをやりました。
〇あなたはもう忘れたかもしれないが?
津軽海峡では船が揺れてダンスパーティーのとき
あっちへぞろぞろこっちへぞろぞろ。床にヒッピーが
座ってたりして楽しかったですね。
○あなたはもう忘れたかもしれないが?
ナホトカに上陸して足がふわふわしてたりして。
町には何にもなくて灰色で、バスの中でガイドさんが
最近建った集団住宅です、なんて。
皆で顔を見合わせましたよね。
今は相当変わっていることでしょう。
○あなたはもう忘れたかもしれないが?
シベリア鉄道でハバロフスクへ向かいました。
インツーリストのお姉さんに盛んにアタックしましたね。
憶えてますか?荒野に突然停車して、遠くで農夫が
じっと列車を見つめていたのを。
○あなたはもう忘れたかもしれないが
ハバロフスクの大食堂。私は青いタオルを首に掛けて食事をしました。
ウェイトレスのおばさんが付け髪をしていて、色が違っているのに
おどけたりして。ハラショー、スパシーバ。
何か独特な味のする固いパンでしたね。
必死で噛み砕きました。
透き通るような青い空でしたね。
○あなたはもう忘れたかもしれないが
イリュージンのジェット機はなんと36時間も乗ってました。
「今日誕生日の人いますか?一番長い一日になりますよ」
そのとおり。沈む太陽を追っかけていつまでたっても夕日のままでしたね。
○あなたはもう忘れたかもしれないが
間もなくモスクワですとアナウンスがありイリュージンは高度を下げ
てきました。緑の森が延々と続き、ところどころ途切れていて人家も
なくだだっ広いだけでなかなかモスクワには着きませんでしたね。
○あなたはもう忘れたかもしれないが
ウクライナホテルの各階にはエレベータ脇に大きなデスクがあって軍服
みたいな服を着たおばさんがでんと座っていてちょっと怖い感じでしたね。
トイレもバスもでっかくてトイレットペーパーの質が悪くて・・・。
○あなたはもう忘れたかもしれないが。
モスクワの町に出ましたね。小説家の方と一緒に、走れコータローもいたかな。
タクシーを止めるのが大変でした。小説家のおじさんが轢かれそうでしたね。
地下鉄に1区間だけ乗りましたね。お金は払えませんでしたが。
でかいおまわりさんに「ベトナム?」と言われたの憶えてますか?
○あなたはもう忘れたかもしれないが。
市内観光を貸し切りバスでしたとき、モスクワ大学に行きました。
三人で走ってトイレに行きましたね。とても大きな便器でほんとに驚きました。
青い空と美しい眺め。あそこが競馬場ですと指差されましたね、いまだに
どこかわかりませんが憶えてますか?
クレムリンの石畳。レーニン廟。もう、あまり思い出せません。
○あなたはもう忘れたかもしれないが。
モスクワで小説家夫婦のワルシャワ組と別れて我々ストック組は空路ストックホルムへと向かいました。
日大の走れコータローも一緒です。よく考えて見るとあの時ぺテルスブルグの上を飛んだんですね。
ストックについて最初にびっくりしたのは物価の高さでした。
〇あなたはもう忘れたかもしれないが?
バス代500円。タバコ400円。だからみんなパイプを吸うんだ。
アンチョビをちょこっと乗っけただけのオープンサンドが700円とは驚きましたね。
帆船ユースのチャップマンに泊まりました。船倉のベッドは今でもよく憶えています。
○あなたはもう忘れたかもしれないが
楽しかったですね、生まれて初めてのヒッチハイク。
コータローと3人で紙にKOPENHAGENと書いて
一人ずつ交互に指を立ててたちました。
よく考えてみるとあの場所はかなりスピードが乗るところでした。
〇あなたはもう忘れたかもしれないが?
車はなかなか止まりませんでした。30分ほどでやっと
止まってくれましたね。じゃんけんでコータローははずれ。
西ドイツの学生でした。あなたたちはずっとしゃべってましたが。
憶えてますか?私は後ろで寝てましたよ。
○あなたはもう忘れたかもしれないが
コペンはもう夜でした。チボリのイルミネーションを抜けて
中央駅まで行きました。もう真夜中でしたね。
橋の袂の芝生で寝袋に入って眠りました。
憶えてますか?よくもまあ大胆にも。
でかい米軍の寝袋でしたから何とか二人入れました。
一生忘れることはないでしょう。
ヨーロッパで初めての野宿でした。
○あなたはもう忘れたかもしれないが
ベラホイのユースで分かれました。
「リューベックで車買ってきます」
「コペンで仕事探します」
ユースの掲示板が唯一の連絡場所でしたね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます