第14話 This Feeling この想い

14.


== 渡邉凛太郎 + 松本聖 ==


 倉本はよほど家庭が大事なのだろう。結局300万円一

括で支払うので妻には絶対内緒にして下さい、と念押

しして頼んできた。奥さんと別れてまでの気持ちはなか

ったようだ。ただの摘み喰いか!そう判ると腸(はらわた

)が煮えくり返る思いがする。何ぁ~にやってるンだ聖。


 相手の奥さんに言うつもり等は、端(はな)からなかっ

た。ただ相手の態度があまりにも酷く反省も無く裁判に

なれば、自ずと知れただろうけれど。こんな嫌な思いを

するのは、自分ひとりでたくさんだ。俺だけで・・。



 9/7.旅行の2日前のこと、会社から帰ると元気の無い妻

の姿があった。倉本から旅行のキャンセルの連絡が早速

入ったのだろう。食事して風呂に入って、さぁどんな風

に聖を料理しようか!今夜は長い夜になりそうだ。


 「聖、今夜話があるから子供を早めに寝かせつけて時

間作ってくれないかな」


「わかったわ!あぁ私、急な友達の病気で旅行無くなっ

たの。又もう少し先で行こうっていうことになって」


「そっか、楽しみにしてたのに残念だったな」


 しばらくして聖が子供達を寝かしつけて、俺のところ

へやって来た。


「さっき話したいって言ってたのは何のこと?」


「君の旅行のこと! 」


「えっ。リョコウ...」


 旅行というキーワードだけで既に動揺したのか少し焦

っている時の聖の声だった。


「もう知ってるんだよ、俺は」




「シッテルッテ.ナニヲ?さっきも言ったけど友達の病気で先延

ばしになったのよ、旅行」






-616-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る