10月30日 キニナル話

 なかなか小説が進まない。

 今日は本気で執筆をしようとしたのである。


 家の近所にあるネットカフェが、男の隠れ家だった。

 突然忍び寄る家族の気配から逃れるために、男は隠れ家に籠る。

 家族とは、とても恐ろしい生き物だ。人がすやすやと寝ている最中、いかがわしい読書、荒ぶるタカのポーズなどをしている時でも関係なくやってくる。

 その様はまさしく、江戸幕府に開国を迫りに来たペリーさながらの来訪っぷりであった。


 何が恐ろしいのかというと、自分がなにか集中して取り組みたい、集中して休みたい、出かけたい、何もしたくない、そんなタイミングで、何の連絡もなく彼らは某ハンバーガーショップの朝メニューを携えて現れる。

「明日からダイエットをしよう!」と誓った自分に、朝メニューは容赦なく欲望を駆り立てる。気が付けば、それを全く綺麗に平らげる自分が怖くなる。

 そしてなによりも、日曜日という貴重な時間を予期せぬ来訪によって崩されたくはない。前もって連絡を受けて、頭の中で予定が立っているならば良いが、あれをしよう、これをしようという脳内予定を崩されるのはとても嫌なものである。


 そのため、男はしばしば隠れ家に身を潜めるのであった。

 隠れ家というものは、とても心地が良いものだ。


 ボタンを押せば、永遠に飲み物が飲める。

 ボタンを押せば、勝手に食べ物を運んできてくれる。

 ソフトクリームだって食べ放題だ。

 ちょっと肩に違和感があるときはマッサージチェアー付きの個室。

 少し横になりたいというときはフラットタイプを、という具合に、男の願望を叶えてくれる魔法の館なのである。


 インターホンも、電話も、すべて忘れた空間で、男は一人、閉ざされ、隔たれた空間で羽を伸ばす。もう何者も自分を妨げるものはない!


 しかし、男は、まさかこの後あんなことが起ころうとは、この時全く予期していなかった……。


 あとは、おなかが痛くなくなった後で。


 今日は物理的にも執筆が進まなかった。




 ***あとがき***


 日付がバラバラに更新されているのは、近況ノートを書いた日付だからです。

 近況ノートに書いた内容に着色して上げているので、いつの日記がどのタイミングで上がるかは不明。

 ちなみに・・・。


 あとは、おなかが痛くなくなった後で。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る