11月3日 不満のフ

 こう見えて、日頃の業務は忙しい。

 慌ただしさの中に癒しはない。


 男は今日も、同僚の家に泊まる。男の職場は、自宅から2時間ほどかかるところにあった。今日のように多忙な日は、だいたいその同僚の家に泊まるのだが、この同僚、なかなかどうして、変である。

 いや、泊めていただいている身分で偉そうな事は言えないが、泊めていただいているからこそ、つくづく変であると言えるのである。


 彼はダイエット中である。大少年とかいうハンバーグが売りの店に行くと、決まってサラダバーしか食べない。

 ハンバーグの店なのに、サラダバーのみとはいかがなものか! と、物申した。

 男は彼に不満のフを伝えたが、彼は男に、肥満のヒを伝えてくる。

 これは男も太刀打ちできなかった。

 カレーのおかわり自由が男を呼んでいた。

 にもかかわらず、男のカレーを持つ手は震えていた。あまりにも震えたため、店員さんが心配そうな眼差しで見つめてきた。

 男は席につき、肥満のヒを食していると、同僚もカレーを持ってきた。


 お前も結局カレーじゃないか!


 しかし、その視線の先には、米ではない何かが黄土色の香ばしい海の中に沈んでいる。

 それは、サラダの山であった。


 その光景に、男は言葉を失った。

 野菜カレーではあるけれども。

 野菜カレーでは、あるけれども!


 結局、食事も会話も捗った。

 多忙な日常に、同僚たちとの外食はストレスを発散するための、明日への糧となった。散々サラダしか食べなかった同僚だけが、満足げのない表情をしていた。

 それもそのはずだ。

 人の欲望とは、満たすためにあるのだ。

 我慢をすれば、いずれボロは出る。

 不満のフを貯めれば貯めるほど、肥満のヒに火がつくのだ。


 同僚は家に帰ると、今日もポテチを食らっている。


 彼の観察が日課となっているため、今日も執筆は進まなかった。

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