4.銀の髪の少女
目をさますと、柔らかいベッドの上に僕は寝転んでいました。茶髪の女の人と、ぎんの髪の女の子が僕を見て、心配そうにしています。
女の子が女の人に言いました。
「お母さん。起きたよ。」
僕はぼやけた記憶を辿り、どうしてここに居るのか、考えました。
お母さんと海に来て、それから、僕はさかなになるために海に入って…気がついたらここにいた、はず。
そうだ。助けてもらったんだからお礼を言わないとお母さんに怒られちゃう。
「えっと、ありがとうございます。」
見知らぬ人に話しかけるのは苦手です。緊張しながらお礼を言いました。
「…大丈夫よ。怪我が無くて良かったわ。」
茶色の髪をした女の人が、静かで、優しい声で言いました。
こんな人がお母さんだったら良かったのに。僕は思いました。
いつか怪物が、お酒を飲んで酔っていた時に言いました。
「子供は親ぁ選べねぇからなぁ。ごめんなぁ、良い女見つけられなくて。ごめんなぁ、良い親父になれなくて。」
僕はその時、怪物が優しく見えました。優しく、そして弱く見えました。
「あなた、お母さんは?」
僕の空想を遮る様にぎんの髪の女の子が言いました。僕は、自分で考えて、信じたくないけれど、きっと事実である、推理を口にしました。
「お母さんは、僕を捨てて行っちゃった。」
僕の推測にすぎません。でも、確信できた事実でした。でも、僕は良いと思います。さっき気付いたけれど、皆少し髪が浮いていて、魚がそこらを泳いでいます。ここは海のまちでした。僕は、さかなになれたかも知れません。だって、お水の中なのに、苦しくないから。
気が付くと、女の子と、女の人はまゆげを潜め、女の子が僕の髪を撫でました。
「…大丈夫だよ。ここにはあなたを捨てる人なんていないよ。」
僕の頬が温かい物で濡れました。水の中なのに、不思議です。
僕は肩を揺らし、咳き込みました。目頭が熱くなって、鼻も詰まってしまいました。
女の子が見かねて、僕の手を取りました。窓の外を指差して言います。
「外で遊ぼう。きれいな貝殻を集めよう。魚と競走しよう。」
「うん。行こう。」
僕は女の子に手を引かれて外に出ました。足で砂を踏むたびに白い雪の様に砂が舞い上がります。
僕は、水の中でふわふわと揺れる女の子のぎんの髪が綺麗だと思いました。
しばらくすると、岩と岩に挟まれた狭い場所に着きました。上を見上げるとお日様がらんらんと輝いて、空気のあわを光らせています。水の中で柔らかくなって、それでもまっすぐに進む光は、上で見るよりずっと綺麗で、幻想的です。上だと黄色みのかかった光に見えるお日様が、海の中だと少し蒼く見えて、とても綺麗です。
「綺麗でしょ?私も好きなんだ。」
僕は頷きました。女の子とこの海はぴったりで、まるでおとぎ話の人魚姫みたいです。よく見ると、小さな魚、白い魚…僕とは違って綺麗な色でした。
「綺麗…ありがとう、連れて来てくれて。」
女の子は笑って、地面に横になりました。
僕も一緒に横になって、おうちの話を始めました—————。
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