第24話「できること、やりたいこと」


 燃える周囲。散乱した瓦礫。

 その下敷きになった紅髪の少女は、一切の動きを見せず。

 

「しっかりしろ、おい……!」

「……」

 どれだけ必死に呼びかけても伝わらない。

 呼びかける少年には、少女を助けるだけの力はなかった。

 

 燃え盛る周囲の中、必死に張り上げる声。

 それは全て掻き消され、二人だけの空間に悲痛な声だけが虚しく響く。

 

 ―――その光景は今でも『少年』の心の中に焼き付いて、こびりついて離れない。

 少年の名は、総一といった。



 Flamberge逆転凱歌 第24話 「できること、やりたいこと」



 クラクションの飛び交う渋滞道路。

 この日は休日の帰宅ラッシュ―――で終われば、どれだけ幸せだったろうか。

「……マズいな」

 頭を抱える俊暁。彼の眼前には、無数の車が先に進めず、混乱を招いていた。

 チマンと名乗る男からの電波ジャックは、想像以上の混乱を巻き起こしていた。

 ホテルの駐車場から続く道は、我先にと帰宅しようとする車でごった返し。

 旅行に来ていた広瀬涼一行は、必然的にその人混みに拘束されてしまっていた。

「どうするの? このままじゃ帰ることすらできないケド」

「だからって、簡単に解決できるもんじゃないだろ」

 助手席の涼は地図を広げながら、何とか道を探そうとしていたが、ないものを捻りだすことはできない。

 対応前から手詰まりを強いられているという最悪の事態になった。

 

「……困りましたね」

「由希子?」

 困り果てた声は、中央の座席からも聞こえてきた。

 タブレット端末を片手に、頭をガシガシと掻きながら呟く由希子に、アルエットは最後尾の座席からその端末を覗き込んで。

「あのチマンとかいう男、ガチです。本当にあのサイズを質量兵器にしてきました。これだとも二日足らずで落下軌道に入りますよ。

 社で仕入れられる情報網で調べてもらったんですが、本当に今小惑星が動いてるのが確認できてます」

「別にデマとかハッタリでもない、と」

「ええ。正気を疑いますが」

 由希子の開いている画面には、少なくともかつて地球に落下し、後にエルヴィンの中心になった飛来物より遥かに大きい何かと、その予測軌道が記されていた。

 既に同様のデータはインターネット上に行き渡り、大混乱を招いていた。その結果がこの大渋滞である。

「こんなものが落とされたら、地球に人が住めなくなります」

 由希子の導き出した結論は、残酷な事実だった。

 

 2kmの飛来物の落下でさえ、材質が未だ未知数ながら一帯を破壊しつくし、地形を大きく抉っていった。

 窓を見れば、その落下の跡は色濃く残っている。

 巨大な運河のようにも見える景色は、飛来物が海岸から大地を抉り、残した爪痕である。それ自体が、宇宙からの巨大物質の着弾がどれだけ危険であるかの証左となっている。

「これ以上の被害が出たりしたら……」

 春緋は呟く。少なくとも、エルヴィン周辺には今度こそ人が住めなくなるだろう。

 しかし、最早車で、一日でこの場から逃げようなど不可能でしかない。

 エルヴィンの場合、外界からの侵略を危険視するため、陸路で街の外に行くという選択肢は外されている。

 故に、逃げられる可能性があるとすれば、安定して、早く脱出が可能な空路。

 この渋滞という流れは、一刻も早く空路で外界に脱出したいという民衆が引き起こしたパニックなのである。

「……どうすんのよこれ」

「知らんわ。とりあえず皆対抗策探してるから黙ってろ、な」

 拠り所を探し、最後部の座席の中央で震える春緋は、隣に座っていた総一に縋るように裾を掴んでいて。

 それを受け入れる側の総一も余裕などあるはずがなく、今にも爆発しそうな様子だった。

 

「やりすぎだろ」

 ふいに呟いたのは、ひなただった。

「自分らにないものを求めるのはわかる。だけど、そのためなら何やってもいいのかよ……!」

 似たような境遇があったために、実行犯の気持ちも分かることは分かる。

 そんなひなたでも、地球上の生命を無差別に巻き添えにするような今回の事件は許すことができなかった。

「なあ社長さん! アレ使えるんだろ、転送装置! 使ってくれよ!

 それで足出してアタシをエルヴィンに戻して……!」

「できません」

「何で!?」

 中央座席の中央に座っていたひなたは、隣の由希子をせっつくも断られ、食いつくような形で迫る。

「……駄目だ。人も物も多すぎるし、これじゃ無理だ。別の手を考えよう」

「わかってるよ!」

 由希子と反対側に座っていたレイフォンが、宥めるように肩を抑えながら声をかけるも、閉塞感に思わず言葉が尖ってしまう。

 実際、由希子の会社に勤めているレイフォンが判断した通り、どこもかしこも渋滞パニックだらけで、安全に移動手段を呼んで移動できるような状態ではない。

 

 しかし、いつまでもここに留まっていてはただ空気が悪くなるだけ。

「ここで渡りに船でも来てくれたらいいのに……」

「そんな都合のいいこと起きるわけねーだろ」

 溜息交じりの春緋の言葉に、突っ込まなければならない総一も、ただ付き合っているだけでは感じられない苦々しさを感じていた。

「でも総一」

「何だ」

「そろそろあたしトイレ行きたい」

「行っとけよ!?」

「あんな放送あったから行きそびれちゃったのよ!」

 苦々しさが呆れに変わった瞬間だった。

 

 そんな春緋の、雰囲気を壊すような言葉を聞いたレイフォンがダメ元で口を開く。

「……海路、使えませんか?」

「難しいですね。基本、エルヴィンの海路は運輸に使われるので……この非常時、船を捕まえてというのもなかなか難しいです」

 しかし、やはりこれも駄目。

 主に運輸目的で使われ、観光用などには使われることのない海路では、たどり着くのも難しい。

「こういう時の船は我が社は持ってませんし……エルヴィンまで行けば、宇宙に上がるのは難しくないんですが……」

 陸路からさらに、打ち上げ施設で宇宙に行くことはそう難しいことではない。

 宇宙への脱出は、手段の取れる人間も限られるため、混むことはそうそうないからだ。空路を使わずに打ち上げまで出来るのであれば解決の道は見えるが……それまでの状況がこれではどうしようもない。


「……なるちゃん、大丈夫? トイレとか行きたくない?」

「だいじょーぶ」

 抱き抱えていたナルミに声をかける涼。今は大丈夫でも、これから先どうなるか分からない。この渋滞に、しかも子供なのだ……約一名、中学生で既に催している人間がいるが。

 早く解決しないことには、色々詰んでしまいかねない。その『色々』が、ふと気を抜いただけで溢れるくらいに想起されてしまうのが問題なのだ。

 この事態を早期に解決できるなら、都合のいい偶然が起きるか、或いはこの未曾有の事件を予見できる人間が手を打っているか―――。

 

「……?」

 そんな中、ふいに着信が響く。

 涼の端末に、仕事用の回線からメールの着信。音で真っ先に気づいた涼は、急ぎ端末を開き、中身を確認する。

 

「『今の依頼主から、君を迎えに行くように頼まれている。船を近くの輸送用港に泊めているが、どのくらいで着ける?』

 送り主は……トーマスから!?」

 内容を読んでいた涼は、予想外の話に思わず素っ頓狂な声を上げ、それに全員が気づく。


「トーマス?」

「仕事で一緒してたプロドライバーだよ」

「プロドライバー? ……広瀬さんの知り合いならいて自然ね」

 春緋の疑問に総一が答える。

 春緋以外は、涼が彼らと繋がりがあることを知っている。

 彼等が職務に忠実であり、しかも義理堅く、依頼に反し広瀬涼に味方したこともあるということを。

「彼らなら安心だ」

 素直に喜ぶレイフォン、それに同調して溜息をつく春緋。

 しかし、レイフォンを挟んでいる由希子もひなたも、さほど表情は晴れていない。

「……もし裏があるとしても、立ち往生よりマシでしょう」

「だな。マークされてるとしても、アタシらなら何とかできる」

 あくまで打算的に。駄目なら駄目で動けばいいと賛同する。

 

「……こうしていても埒が開かねえ! そっち行くぞ! 広瀬、ナビ頼む!」

「了解。ちょうど反対車線ね」

「……行けるか?」

 場所を確認してから、周囲を確認する。幸い、車線を仕切るようなものは何もなく、車間は十分に空いている。

 車線も対向車線と隣接している……これなら。

 慎重に、混みあっているエルヴィン行きの車線から対向車線にハンドルを切り……180度ターンに成功。

「あとは動けるぞ! もう少し我慢だ!」

「早くして~っ」

 先程までの鬱憤を晴らすかのように、アクセルを踏む俊暁。

 打開の糸口を掴んだことでとりあえずは安堵する周囲。

 一人別の意味でせっぱつまっている春緋を乗せながら、渋滞を尻目に、港へと爆走する。



 ―――――

 ―――

 ――



 エルヴィンの陸地に裂け目が入ったような地形。

 巨大な入り江となっているそこは、交易を主な目的として使用される。

 人々の移動は専ら速度の出る空路で行われており、用途の違いのためか、非常時においても海路はあまり使用されない。

 だからこそ、緊急時における海路は一般人を避ける目的として有効活用できる。

 

「助かりました」

「こっちも依頼だからね」

 特に大事もなく辿りつくことができ、安堵しながら頭を下げる由希子に、いつもの調子でトーマス。

 実際混乱を避けて行動できたことはありがたく、通常の移動よりは遅かったものの、それでも準備からの行動に十分な時間を稼ぐことができた。

 

 だが。

「……ですが、ここからは何かしらの妨害があることは確実ですね」

 由希子の表情は曇る。

 準備を行い、宇宙に人員を送り、阻止限界点に到達するまでに、小惑星を迎撃する。しかし、小惑星の迎撃となればそのためにどれだけの破壊力が必要になるのか。

 現在は、周囲の監視を行うパーシィを除いて今いる人員が会議室に集まり、意見を出し合っている最中である。

 

「そもそも大掛かりな破壊兵器の使用はエルヴィンでは禁じられてるし、迎撃の為に何が出来るか。

 そしてそれを実現するためにどれだけの労力が必要かだね」

「……俺達だけで辿りついたとして、アレの衝突を防げるだけの手札があるかどうか、という話だな」

 トーマスの意見に相槌を打つように、俊暁が続く。

「思い当たるところに連絡してみたが、警察は混乱を抑えるために人員を使っている。ドライバーも反応はまちまちで、参加に動いてくれる人間は少なそうだ」

 エルヴィンの危機という混乱が、住民の不安を煽り、行動を乱れさせる。

 急ぎ避難しようとする人間、周囲を押しのけて我を通す人間、不測の事態に巻き込まれ混乱する街中。

 直接見てはいないが、警察が人員を割くという時点で、中の混乱はどれだけのものか。


「っていうか、敵の規模とかそういうの分かるんですか?」

「情報は仕入れてある。奴さんは機動兵器数十機を展開して、件の小惑星を守っている」

「それ軍隊レベルじゃないですか」

 春緋のふとした疑問に答える材料がトーマスにはあった。

 しかしそれを聞いたところで、よりハードルが高まるばかりで。

「……この人員で、隕石破壊のための切り札を守ったまま敵陣突入? それ要求値半端なくないスか?」

 それを聞いた総一の疑問。少なくとも、春緋の言うとおり、この状況を切り抜けるには軍隊レベルの戦力が必要。

 だがそんなもの、即座に揃えられるわけがなく。


「他の国の軍隊の方は動いてるんですか?」

「電撃戦で何者かにマスドライバーを破壊された国、そもそも追いつける見込みが薄い国。あとはエルヴィンがなくなっても困らない国……見事なまでに誰も」

 アルエットの疑問も潰される。

 地球規模の攻撃の筈が、動ける大国のマスドライバーは事前に掴まれているのか、宣戦布告と同時期に電撃戦で破壊。

 現実的に使える大規模なマスドライバーが少なく、それも消極的だったりする

 戦力的に対抗できる見込みがついていないのだ。

「ちょっと待ってください。それってどうやって辿りついて隕石破壊するんですか」

 あれも駄目、これも駄目。

 現実的に取れる手段が思いつかない状態。初手で完全に『詰み』となる状態を狙って作り上げられていた。

 

 だが。

「破壊なら、できる」

 そこで言葉を差し込んだのは、それまで沈黙を保ってた涼だった。

 周囲を見回し、最後に由希子に視線を送り、口を開く。

「エールフランベルジュは、まだ一度としてフルパワーでメテオクラスターを出したことがない。

 対人で、市街で使うには、あまりに過剰な出力が出るんだ。

 今までは被害を避けながら、理由があって使っていたけど、機体の負荷を可能な限りかければ、あの小惑星もどうにかできる可能性はある」

 最低出力で撃ったメテオクラスターは大地を抉り、無人兵器を消滅させた。

 敵を掴み、空中に飛び上がりながら、解放する砲塔を限定して放ったメテオクラスター・ゼロブレイクは、より少ない消費で、かつピンポイントの破壊を目指して放ったもの。

 つまり、メテオクラスターの最大出力は、未だ放たれたことがない。

 

「待ってください。それ、現実的に出せる手段なんスか?」

 その推測に口を出したのは総一だった。

「戦闘をすればそれだけ消耗する。敵陣に入ったら戦闘は避けられない。

 いくらフランベルジュが無敵でも、全力を出せない程に消耗されたら意味もないですし。

 宇宙に上がるまでに他の機体を使ったとしても、本番でフランベルジュを使う時、宇宙の敵陣を突破するために少なくともある程度の消耗は避けられない筈。

 仮に上手くいったとして……」

 そこまで言葉を繋いだところで、はっとして口を閉じる。

 

 誰も突っ込みを入れなかったところ。

 フランベルジュが限界まで出力を上げたとして、中に居る広瀬涼は耐えられるのか。彼女が生きて帰れるのか。

 

 それを、戦う力を持たない総一が口に出すわけにはいかなかった。

 

「……大丈夫だって。コイツも死なないためにやってっから」

 横からこつんと小突きつつも、その空気を壊したのはひなただった。

「宇宙に上がってからはどれだけ戦力送れるか分からないが、アタシらなら手数問題はある程度何とかできる。それ用の用意もちゃんとあるしな」

 ひなたがいることで、物量さえあればそれだけで、手数問題はある程度解決するといっていい。

 あとは小惑星撃退のための火力だが。

「……やむを得ないですね。アレを使いましょう。レイフォンさん、手配を」

「了解。ひなた、俺準備するから」

「ん、後でな」

 一礼をしつつ、その場から退出するレイフォン。

「……で、アレって?」

「後で説明します。試作段階ですが、りょーちゃんにばかり背負わせませんよ」

 丸眼鏡をくいっと上げて、そこそこ揺れる程はある胸を張る由希子。

 彼女の技術力は既に証明されたようなものなので、正常に機能すればある程度の効果は期待できるだろう。

 

 絶望的な状況の割に、次々と整っていく攻略手段。

 死ぬかもしれない戦いに、それでも出来ることがあると、準備を整えていく。

 それができるのが大人なのだろうか。

 

「……ねーねー」

 ふいに、服の裾を掴まれたと思った総一。そちらを見てみると、席を立っていたナルミがいた。

「何だよ」

「おねーちゃんといっしょにいきたい」

「……いくらなんでも駄目だろ」

「やだ!」

 制止しようにも、声を張り上げ拒絶される。

 彼女を失うことは絶対に避けなければならないのは、事情から知っているのだが。

「死ぬぞ! 特殊な力があるとかそういう状況じゃねェって!」

 ここで言い分を通したら、下手をすれば彼女を守るために誰かが死ぬ可能性すらある。しかし。

「だってナルミ、おねーちゃんのなかまだもん」

 一点張りのナルミは、決して譲ろうとしない。

 

「……それで通ったら、苦労しねーって」

 仲間なのは分かる。だが、その言い分が通じるのは、命を懸ける戦場で、彼女に現実的な戦力としての価値があればの話。

 ただでさえ切り詰めなければならない状態で、子供一人を抱えるというリスクがどれほどのものか。

 そのリスクという一点に於いて、天城総一は他人のことを言える状態ではない。

 自分が行くことでかかる迷惑。何もできないという無力さ。

 全てが、何も掴めない目の前の手にのしかかり、痛いくらいに握りつぶしそうになっていた。

「でもいく」

「ボケるタイミングじゃねーからな」

 それでもナルミの意志は曲がらない。

 説得を諦め、総一の目は助けを求め、周囲に向けられる。

 

「……実際のところ、かなり難しい」

「な?」

 口を開いた涼の言葉で、説得できるようになった、とほっとした総一、だったが。

「連れて行きたいのはやまやまだし、なるちゃんを一人にしておくのは危険すぎる。

 ……だけど、行くメンバー全員が出払ったら、なるちゃんの世話をできる人間がいないから」

 思ったより涼の言葉は、ナルミがついてくることに肯定的だった。

 しかし彼女の言葉は正論でもある。

 ナルミはそもそも、何者かにその身を狙われる存在。

 地球の危機だからといっても、彼女から長時間離れるのは逆に危険になる可能性も高い。どちらにしても、安心して面倒を見られることがないのが最大の難点だった。

 

 総一の中で、ひとつの可能性が浮かんだ。

 瞬間、馬鹿な事だと呑み込もうとした。

 ―――だが、その可能性を他に誰ができる?

 

「……わかりました。だったら、面倒は俺が見ます」

 今、この場で動ける人間はナルミ以外皆戦闘で出払う。ならば。

「いいのか?」

「勝手についてかれたら困るでしょう。

 それに、ナルミに何ができるか、何が役に立つか自体もわかっちゃいないんだ。だったらやる」

 確認を取る涼に受け答えする最中……何か言いたげにしていた人間がもう一人いた。

 

「死ぬぞ」

 ひなただ。

「わかってます」

「自棄っぱちで乗ったわけじゃねェだろーな?」

「やることがあったから動くだけです」

 

 暫しの沈黙。

「……わかった。戦うのだけはなしな」

「勿論」

 周囲を見回す。ナルミの面倒を見る問題もあって、反対する人間はいなかった。

 ……一人不満を抱えていそうな春緋を除いて。

 

「おめーも来い」

「ちょ、何でそうなるのよ!?」

「どーせ止めたトコで人の目盗んで忍び込む気満々だろーが!?」

「な、なんのことかなー」

 とくにもんだいはなかった。

 

「……いつものノリになってしまった」

「いいじゃない」

 呆れ果てた涼の肩を、アルエットがぽむと軽く叩く。

「いつも通り倒して、いつも通り帰ってくる。そういうのも大事よ」

 ふふんと鼻を鳴らしてアルエット……だいたい何を言いたいか察した。

「ついてくる気でしょう」

「長旅になるならね。それに子供たちはチョーさんが見てくれるし」

 結局、この場の全員、行く意思の固さは止めようがなかった。

 春緋に関しては別問題だが、彼女の軽さを考えると、一人混乱の中を送り出そうとするのは得策ではない。

 

「……こほん。では会社で必要なものを調達、その後打ち上げ施設に向かいます。よろしいですね?」

 一度咳ばらいをした由希子が、場を引き締めるべく状況を確認する。

 全員が頷いたのを確認して。

 

「また、皆の命を貸してもらう。行動開始だ!」

 かつての決闘審判のメンバーが再結集した、即席の小惑星迎撃チームが、涼の言葉で始動する。

 


 Flamberge逆転凱歌 第24話 「できること、やりたいこと」

                         つづく。

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