第27話 地獄での生活1

──ダスト視点──


「ふーん……ここが地獄のバニルの領土ね……」


 地獄にある旦那の領地。城からリリスと一緒に魔法陣を使って飛んできた俺らパーティーとは旦那の街を歩き、リリスが経営する娼館へ向かっていた。


「なんだかつまんない街ね。アクセルと似たような所だわ」

「おいこら」


 おまけの分際で人の住んでる街をいきなり貶してんじゃねぇよ、アリス。


「なによ? この街がアクセルと似たような所ってのは間違ってないでしょ?」

「そりゃ、文化的に似たようなもんだし街並みなんかも似てるのも確かだが……」

「地獄って言うからそこら辺中に腐った死体や人骨が落ちてたり、地面に血で変な魔法陣が描かれてたりすると思ってたのに」


 言いたいことは分かるが、なんでそうじゃないことに残念がってんだこいつは。


「実際そういう所も領土によってはありますよ。バニル様の領土であるこの街が地獄において異端なのは確かです」

「ふーん…………じゃ、私はここから別行動させてもらうわね。その地獄らしいところ見てくるわ」

「またこいつ勝手なこと言いだしやがった……」


 リリスの言葉に一緒に居ても仕方ないと思ったんだろうか。

 あの国でのアリスの行動を思い出せば今更なことでもあるが、こいつの辞書にはきっと協調性という言葉がない。


「招待したのはダスト様たち、ひいてはバニル様なので私に止める権利はありませんが…………この街を出られるのあれば、安全の保障は出来ませんよ。悪魔の流儀は弱肉強食……バニル様の招待客としての立場を捨てるのであれば当然その摂理に従うことになります」

「むしろ望むところよ。地獄に来て安穏としてるなんてそれこそ冗談」


 それに、とアリスは続ける。


「今の私を害せる悪魔なんてバニルみたいな公爵級悪魔か……リリス、あんたくらいでしょ?」

「さて……。少なくとも、夢魔である私にはまともな攻撃手段などないのですから、普通に戦えばあなたには負けると思いますが」

「それってつまり攻撃手段は持ってて、普通じゃない方法で戦えば勝てるって言ってるようなものだと思うんだけど?」


 ……もしかしてリリスって俺が思っている以上に強いのか? 魔王軍幹部……それもウィズさん並には強いだろうとは前々から思っていたが。


「ま、あんたとの勝負は制限のある地上でやってもそんな変わらないだろうし、わざわざこっちでする必要もないからいいけどね」

「…………。確かに、今のアリス様であれば侯爵級悪魔の方でも後れは取らないでしょうね」

「そ、じゃあ公爵級……バニル並に強い悪魔にあえること祈って色んなところぶらぶらしてくるわ」


 そう言ってアリスは適当に手を振って俺らとは反対方向に歩いていく。

 公爵級……旦那のような七大悪魔に数えられるような悪魔とぶらぶらしてるだけで出会うとか、いくら地獄でもないと思うんだが………なんかあいつだとさらっと会ってきそうな気もするんだよなぁ。


「てか、あいつが地獄に来てからいきなり強くなった気がするのはやっぱ気のせいじゃないのか」


 魔王軍筆頭幹部としてアホみたいに強かったアリスだが、それと比べても今のアリスは格が違った。


「地獄は地上に比べれば力の制限が緩いですから。地上で制限を受けていたものが地獄に来ればいきなり強くなることは割とある事です」

「それにしてもなぁ…………魔族とはいえ侯爵級の悪魔並に強くなれるもんなのか?」

「さぁ……悪魔の私には何とも。アリス様は神々の玩具の血族のようですから。バニル様や悪魔王様なら何か知っているかもしれませんが……」


 神々の玩具? じゃあパッドの女神や宴会芸の女神あたりに聞けば何か分かるのかね。

 てか、神様サイドの力でアリスが侯爵級悪魔かそれ以上の力をつけられてんだったら悪魔と神々の戦力バランス大丈夫なのか?


「なぁ、ゆんゆんはどう思う?」

「……………………」

「おい、ゆんゆん?」

「ふぇっ!? いきなりなんですかダストさん!?」


 反応ないからちょっと体揺らしただけだってのに、何をこいつは過剰に驚いてんだ。


「何をお前はボケっとしてんだ?」

「べ、別にボケっとなんてしてないですよ? ちょっと落ち着かいないだけです」

「落ち着かないってなんでだよ?」


 地獄に始めてくるとかならともかく、俺とゆんゆん(当然夢魔組もだが)に関しては何度も来ている。今更落ち着かない理由はないと思うんだが……。


「だ、だって……(普段、私たちが地獄に来るのってのためじゃないですか。そんな場所に皆さんと一緒に来てるのが……)」

「なんだ発情してるだけか」

「人がバレないように小声で言ったことに対する気遣いはないんですかね!」

「そんなもんはない」

「そうだった……この人、口は相変わらず悪いんだった……」


 何をこいつは今更なことを言ってるんだろう。


「しっかしまぁ……妊娠してるってのに発情してるとか本当お前はエロぼっち娘だな」

「否定できないのがつらい…………ううん、でも今はまだつわりとかあんまり来てないしこれくらいは普通のはず……。そもそも私をそうしたのは誰だと……」


 なんかゆんゆんが不満そうなんだか恥ずかしそうなんだか微妙な顔して呟きだしたが、相手してやるべきかスルーしてやるべきか。

 …………、スルーだな。


「テイラーやキースはなんかこの街に感想あるか?」


 後ろを街を見渡しながら歩く二人に俺は聞いてみる。


「思ったより普通の街で安心している。先ほどのリリスさんの話から異端ではあるようだが」

「そんなことより早く夢を見てぇんだ。早く寝れるところに連れて行ってくれ」

「なるほど。とりあえずキースに聞こうとした俺がバカだったのは分かった」


 ゆんゆんがいなきゃ俺も全く同じ感想だったろうから文句は言えないが。


「そういや、テイラーも夢を見て過ごすっ言ってたよな? キースの夢の内容はどうでもいいがテイラーの夢の内容は前から気になってたんだよな」

「それをこの場で聞いてくるダストのデリカシーのなさは流石だな。……まぁ、殊更隠す内容でもないからいいが」


 ちっ、慌てて必死に隠すんだったら普段から固いテイラーをからかえると思ったんだが。


「夢の内容は自由だからな。馬鹿をやるパーティーメンバーからのストレスを解消できるような、癒しの内容にしてもらっている」

「馬鹿とか言われてんぞキース」

「お前の事だろダスト」

「両方に決まってるだろう」


 いや、でもさすがの俺もキースほどは馬鹿やってないはずだぞ。


「でもテイラーだって癒しだけじゃなくてエロい内容も見せてもらってんだろ?」

「俺も男だからな。そこは否定しない。そもそもサキュバスに夢を見せてもらうということはそういうことだろう」

「はいはい、むっつりむっつり」


 本当こいつは真面目な奴だよ。こんだけ固けりゃそりゃストレスたまるわ。存分に夢の中で癒されてくれ。




──ゆんゆん視点──


「ゆんゆん? さっきからなんかぶつぶつ言ってるけど大丈夫? 気分が悪くなったとか?」

「大丈夫ですか? 私の魔法なら気分を紛らわせることもできますけど……」

「え? あれ? リーンさんとロリーサちゃん? さっきまで隣にいたダストさんは……?」


 さっきまでダストさんがいた場所には私のことを心配そうな顔して見てくるリーンさんとロリーサちゃん。


「ダストなら後ろで男同士の馬鹿な話してるみたいだけど?」

「私にとってはありがたい話ですけどねー」

「あはは……いつのまに……」


 人と話してる途中でいきなり居なくなるとか、ダストさんは常識というものがやっぱりまだないのかな。


「いつの間にというか普通に離れていったようだけど……。それはともかく、ゆんゆん大丈夫なの?」

「えっと……気分が悪いとかそういうのは今のところないですよ?」


 ちょっと気持ちが落ち着かないところはあるけど。


「気分が悪くなったら私やリリス様に声をかけてくださいね。さっきも言いましたが、魔法で紛らわせることが出来るんで」

「うん。その時はお願いするね、ロリーサちゃん」


 今のところあまり症状はないけれど、つわりとかもそろそろ始まってもおかしくない時期だ。



「けど、後ろの男どもの話じゃないけどさ、地獄の街で何して過ごせばいいの? 二人とも何かお勧めない?」

「わ、私もこの街の事よく知ってるわけじゃないので……」


 目的が目的だけに基本的にリリスさんの娼館以外はほとんど行ったことがないからなぁ。

 多少はダストさんと二人で回ったこともあるけど、その時は特に目新しいものは見つからなかった。


「うーん……私にとっては地元ですし、この街の事はよく知ってるんですが…………お勧めといわれると難しいですね。やっぱり悪魔と人間の方では感じ方とかいろいろ違いますし」

「やっぱりそういうものよね」


 この街が地獄で異端と言っても悪魔のための街なのは変わらないんだよね、やっぱり。


「となるとどうしよっかなぁ…………ダ……ゆんゆんとかはどう過ごすの?」

「私は基本的には胎教って言うのに励もうかと。ダストさんにも基本的には手伝ってもらう予定です」

「ふ、ふーん…………。ロリーサは?」

「私はリリス様についてくるなと言われてるので…………やっぱりご主人様のダストさんに出来るだけついて回ることになるんでしょうか」


 そういえばリリスさんはロリーサちゃんに、ダストさんの面倒を見ることを優先してほしいとかそんなこと言ってたっけ。

 全然そんな雰囲気ないけど一応ダストさんとロリーサちゃんは主従の関係らしいし、契約主義の悪魔としてもそういう形式的なところは大事なことなのかもしれない。


「ゆんゆんはダストと胎教で、ロリーサはそのダストについている。…………うん、二人がそんな感じなら私もゆんゆんの胎教に付き合おっかな。…………って、何よ二人して生暖かい目して」

「いえいえ、別に何でもないですよ。ね? ロリーサちゃん」

「そうですね。ちょっと微笑ましいなぁと思ってるだけです」


 本当、リーンさんは素直じゃない所も可愛いなぁ。


「なんだか思いっきり失礼なこと考えられてる気がするけど…………まぁ、悪意はないみたいだしいっか」


 リーンさんには今回の地獄滞在の間に決着をつけることを伝えている。リーンさんとしても出来るだけダストさんと一緒に居る時間が欲しいのは考えなくても分かることだ。


「それで? 胎教って一体全体何するの?」

「いろいろありますよ。ただ今日は地獄滞在1日目ですしあんまり本格的な事は出来ないかなって」

「じゃあ、今日はなし?」

「いえ……一番基本的なことは今日からしようと思ってます」


 胎教……というよりすべての基本とも言えることだけど。


「あ、そうだ。この際だからあの約束、ここで果たしましょうか」


 死魔の件やら隣国の件で機会がなかったけど。



「一緒に料理、する約束でしたよね?」





「ねぇ、ライン。あなたは一緒に料理しなくていいの?」

「あん? あんだけ人数揃ってたら俺はいらねぇだろ。むしろ邪魔だっての」

「まぁ、ろくでなし一族のシェイカー家なラインが料理やっても適当なのは見えてるし、確かに邪魔そうだけど」

「うるせぇよ。そういうお前こそ行かなくていいのか、ミネア。ジハードはちゃんと手伝うみたいだぞ?」

「私は作るのより食べる方が好きだからね」

「ダメだこのドラゴン。はらぺこどらごんに恥がなさすぎる……」



「いいなぁ……」


 私たちが滞在するにあたりリリスさんが作らせたらしい娼館内にある食堂。そこにあるソファーではミネアさんがダストさんに膝枕をしながら他愛のない話をしている。


「んー? ゆんゆんもあっちで待っとく? 別に私はそれでもいいけど」

「いえ……あっちが羨ましいのは確かですけど、みんなと一緒に料理するのも楽しみでしたから。ね? ハーちゃん」

「ん、あるじといっしょにがんばる」


 リーンさんがいてハーちゃんがいてロリーサちゃんがいて。

 大切な人たちと一緒に大切な人の為に料理をするのは本当にワクワクしてるんだから。


「正直私はリーンさんに比べるとあんまり料理できないので、ブラックドラゴンさんと一緒にサポートに回りますね」

「ロリーサも普通に料理できる方だと思うけどね」


 というより、悪魔のロリーサちゃんは人間の料理を食べる必要はないし、料理が出来るだけでもすごいんじゃないだろうか。

 いや、サキュバスクイーンなリリスさんが私やリーンさんが気後れするくらい完璧な料理作るのを考えたら、出来るのが普通なのかもしれないけど。


「それで、ゆんゆん。何を作るの? というか、何を作れるの? 材料とか大丈夫?」

「冷蔵庫を見ましたけど、一通りは揃ってたのでよっぽど珍しい料理じゃなければ作れるかと」

「ふーん……地獄なのにちゃんと食材あるんだ。どうやって準備してるんだろ?」

「さぁ……。ロリーサちゃんは何か知ってる?」

「えーと……あはは…………はい。知ってますけど、知らない方がいいと思いますよ」


 なにその凄い不安になる台詞。ちょっと怖いんだけど…………食べて大丈夫なんだよね?


「まぁ、その…………毒とかはもちろん入ってないですし、栄養的には問題ないので、体に悪いとかそんなことは心配しなくても大丈夫です」

「ねぇ、本当に大丈夫なの!? 食べた後に真実知って後悔するとかない!?」

「…………、後悔で済むといいですね…………」


 ………………


「リーンさん。突然ですが皆できゃっきゃうふふなお料理女子会は中止になりました」

「うん……そんな名前の女子会だって初めて聞いたけど、私もそうした方がいい気がしてきた」

「わーわー! 本当に大丈夫ですって! ちょっとした冗談ですから!」

「本当に? 冗談という言葉が嘘じゃないって私の目を見て言える?」


 悪魔は基本的に嘘はつけない。けれど、冗談という形を取れば真実とは違う事を言えるのはバニルさんが証明している。


「…………本当、ですよ?」


 私から思いっきり目を逸らしてそう小さく言うロリーサちゃん。

 まだ誤魔化そうとしてるみたいだけど、これは冗談ではなく本当だったって意味っぽいなぁ……。


「はぁ……何をゆんゆん様たちを不安にさせているのですか。はっきりと魔法で作られているとお教え差し上げればいいでしょうに」


 いつの間に来たのか。ため息をつきながらあわあわしているロリーサちゃんの前にたちリリスさんがそう教えてくれる。


「魔法で? そんなことが出来るんですか」

「出来ますよ。悪魔を一柱作るよりはずっと簡単ですから」


 そういえば悪魔って上位の悪魔に作られて生まれることが多いんだっけ? 前にダストさんがそんな話をしてたような。

 確かにそれに比べれば人間用の食材を作る方が簡単そうだ。


「でも、だったらロリーサは変な態度をしてたの?」

「人の感覚は悪魔のそれとは違います。私たちは魔法で作った食材に忌避感はありませんが、人は忌避感を持つかもしれないとこの子は思ったのでしょう。……そうですね?」

「は、はい! そうです! 嘘はありません!」


 嘘はない……じゃあ信じてもいいのかな。

 でも、あれ? 今ちょっとリリスさんがロリーサちゃんに呆れた息をついたような?




「(はぁ…………何とか騙せたようですが、今の態度、もしもダスト様がいたら気付かれていましたよ?)」

「(ぅ……申し訳ありません)」

「(あなたも私の眷属であるなら、悪魔として嘘を使わずに人を騙せるようになりなさい)」

「(はい…………)」



 なんか二人でこそこそしてるし……。怪しいなぁ。


「ゆんゆん様。この食材に思う所があるかもしれませんが、地獄では魔法で作る以外に人間用の食材を用意する術がありません。我慢して頂けたら幸いです」

「そういうことなら仕方ないですね。リーンさんも大丈夫ですか?」

「魔法で作ってるってだけなんでしょ? だったら私は気にしないけど」


 多分、ではないんだろうけど、これしか食材ないんだっら気にしない方がいいんだろうなぁ。


「(ありがとうございます、ゆんゆん様。黙っていて頂いて)」

「(まぁ……害意がある訳じゃないのは分かっていますし)」


 リリスさんはダストさんと私たちに手を出さないことを契約している。それに今は領主であり序列1位の悪魔であるバニルさんの招待客として来ているから、悪意のある行為は出来ないはずだ。


「(それと、ゆんゆん様が気付いていることはあの子にも黙っていて頂けると)」

「(それは構いませんけど……ロリーサちゃんにも言わない理由は?)


 リーンさんには黙っていた方がいいのは分かるんだけど。


「(自信を持ちすぎるの困りますが、無さすぎるのも問題ですので。未熟という意識は必要でも、欠陥品という意識は不要です)」

「(なるほど)」


 冷たいように見えても、クイーンとしてロリーサちゃんをちゃんと見守ってるらしい。


「ということで、邪魔者の私は退散します。皆様はどうぞごゆっくり」


 深々と丁寧に頭を下げた後。リリスさんは凛とした姿勢で去っていく。

 なんていうか、同じ?女性である私からしても惚れ惚れする動作というか、何かドキッてしてしまった。


「なんていうか……リリスさんって色々反則な悪魔だよね」

「そうですね」


 私の考えとかも普通に読まれてるっぽいし。バニルさんみたいに見通す力を持ってるんじゃないかと疑うくらいだ。


「あの方は単純な力では地獄の中ではそうでもないですし、爵位とかもないんですが、それでも地獄で一目置かれている方ですからね……。弱肉強食な悪魔社会であの方はいろいろ特殊な方なんです」


 まぁ、バニルさんの右腕みたいな悪魔だし、バニルさんの肩書を考えれば普通の悪魔のはずもないっか。

 …………あれでバニルさんって神々と世界の終末をかけて戦うレベルの大悪魔なんだよなぁ。普段の様子見てると欠片も信じられないんだけど。


「ん、あるじ? どうしたの? りょうりしないの?」


 それで私の服の裾を可愛く引っ張るハーちゃんも、そんな最終戦争を止められるドラゴンたちの中でも稀有な能力を持つ存在で。あっちで寝てるドラゴン使いさんと一緒ならどこまで強くなれるか分からない可能性を秘めている。


「なんていうか…………私の周りにいる人たちおかしくありません?」


 次期魔王とか死者の王とか魔王を討伐した勇者とか勇者の国のお姫様とか頭のおかしい爆裂娘とか……普通の人の方が少ない気がするのは気のせいだろうか。


「いきなりゆんゆんが何を言い出してるか分からないけど…………類友って奴じゃないの?」

「最初の頃に友達になった人たちがおかしかったということでしょうか……」


 となると、やっぱりバニルさんやダストさんと友達になったのが原因かなぁ。それともめぐみんと友達になった時点でかなぁ……。


「いや、そういうことじゃなくて…………まぁ、別にいっか。悪い子じゃないのは確かだし」


 ところでなんで私はリーンさんに生暖かい目で見られてロリーサちゃんに苦笑いされてるんだろう。


「あるじ、りょうり」

「ああ、ごめんごめん。それじゃそろそろ始めようか」


 ハーちゃんに急かされて私は意識を切り替える。ハーちゃんも早く料理したくてうずうずしてるみたいだし、待ってる方もそろそろ始めないと文句を言い始めそうだ。


「ハーちゃんは私と一緒にメインの皿を。リーンさんとロリーサちゃんはスープをお願いしていいですか?」

「ん、がんばる」

「スープね。あいつも食べるんだったら肉系がいいかな。……ロリーサ、ちょっと使えそうなお肉がないか見てこよう?」

「お肉ですね、分かりました」


 リーンさん達はお肉系のスープかぁ。となるとバランスとって野菜多めの魚料理がいいかな?


「よし、あれにしようっと。ハーちゃん、材料運ぶの手伝って」

「ん。まかせて」


 可愛く頷くハーちゃんと一緒に。私は好きな人や大切な人達のための料理を作り始めた。

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