●しろくろ○

神橋つむぎ

プロローグ

「それじゃ、行ってくるよ」

 彼はいつもと変わらぬ笑顔で言った。

「うん……気を付けてね」

 彼女も無理していつもと変わらぬ笑顔で答えた。彼はそれを見て、くるりと振り返った。

「あのさ……俺、帰って来るから。またここに。必ず。絶対」

 彼は力強く言った。

「当たり前でしょ。あたしだって、待ってるわよ」

 彼女はいつもの口調を装った。

「ずっと、待ってるから」

「……それじゃ、天気が悪くなる前にさっさと行くよ」

 彼は翼を広げ、雲ひとつない空へと飛び立っていった。

 彼の後ろ姿が、だんだんと滲んでいき、やがて見えなくなった。


 そして、1000年の月日が流れた――――――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る