半透明人間
半透明人間は 網膜にいる
真ん中にいたり 端っこにいたり 寂しがり屋
笑顔貼り付けてるけど その下のも透けて見えてる
二重の顔で君は言う
「あなたのことがとても好き」
向き合ってるふり 見てるのは透けてる緑色
越えられない囲いの中で
羊みたいにふわふわと草食んで
いつかこの毛が刈られることなんて忘れてる
遠くの山はただそこにあるだけ
君との道 ちょうど36度分ずれて歩く
始まりの点は消せない 匂いも消えない
そしてまたあの言葉聴こえてくる
僕はまた草を食べる 消化に時間がかかるんだ
遠くの空は青でしかない
囲いは偉い人が 随分一生懸命に立ててたよ
一重の顔で君は言う
「覚えてないの? それとも忘れたの?」
僕の手は 豆だらけで醜かった
拳を握った ちょうどこれくらいの大きさ
小指だけそっと開く
「半世紀は待ったかな」
光が狭っ苦しそうに縮こまっていた
半透明人間は消えた
二重の顔は相変わらずなんだろうけど
囲いは飛んでみたら低くて転んだ
擦り傷一つ ちょうど掌一つ分 初めての僕のもの
山を飛び越え 雲を食む
そんな羊がいたって誰も困らない そうだろう
「おいてかないで」 胸の中で聴こえる
きっと僕の骨の1本になっているんだ
だから君は最後まで残っているよ 僕よりも永く
海を泳ぎながら 僕は言う
「僕も君も愛してる」
なんだって食べてあげる 意外と欲張りだったから
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