反撃の準備

僕はブリッジに向かって走っていた。

無重力からの重力制御区画のダッシュは膝に来る。

だけど僕は急いでいる。

綾音さんに頼まれたから。

あの綾音さんは困っている綾音さんだと思う。

アンドロイドに人殺しはできない。

攻撃されて多くの人が犠牲になるとか例外もあるけど、今は人間の手で運用されている。それに防御もできる。それに哨戒任務だから無理に攻撃を行う事は必要ない。だから綾音さんは困っているのだと思う。

僕だって人を殺したい訳じゃない。

考え事をしながら走っているとブリッジの扉が見えて来た。

僕はブリッジの扉のロックを解除してブリッジに入る。

「順平遅いわよ!あなたは火器管制手なのだからブリッジにいる必要があるわ」

感謝の言葉も無いのか?

僕のした事は一体?

その事はどうでも良い。

紗枝さん、光帆さん、綾音さん、工藤亜里沙を助ける事ができたんだから。

「サンキュ。相沢君。助かったわ」

落ち込みかけた僕に対して紗枝さんがフォローしてくれた。

「ありがとう。相沢君。怖かったよね。今度こそ相沢君を助けられるオペレーターになるね」

優しい声で光帆さんが気遣ってくれる。

「順平さん。約束を守ってくれてありがとうございます。順平さんなら必ず戻ってくると思っていました。危険な目に合わせてごめんなさい」

「紗枝さん、光帆さん、綾音さん。ありがとう。生きて帰ってこれたよ」

紗枝さんと允保さんは席に座っているから表情まで分からなかったけど、感謝していてくれている事は分かった。

「戦闘中の私語は禁止よ。順平早く火器管制手席に着きなさい。それとドアは閉めてロックしておくのよ」

「分かった」

「艦長に対して敬語を使いなさい。それとそのありがとう」

工藤亜里沙は小声で恥ずかしそうにお礼をしてくれた。

僕もそれにこたえよう。

「艦長、了解です」

本来ラノベ《古典》の世界では工藤亜里沙の言葉を聞き取れない様にふるまうのが、良いのだろうがそんな事をしている場合じゃ無かった。僕はドアを閉めるとロックを行った。

そして急いで火器管制手席に座り、シートベルトをする。

「艦長、レーザー砲のセーフティを解除しても良いですか?」

「許可するわ」

僕は透明なプラスチックのカバーで覆われたレーザー砲のセーフティを見る。

このカバーを開けてセーフティを上げるともう後戻りはできない。

「順平、落ち着いて。あなたは私の命令で引き金を引くだけなの?そこには責任も殺人も関係ないわ。最終的な責任が私にあるの。だから順平ためらわずにセーフティを解除しなさい」

「・・・」

「返事は?」

「分かったよ。セーフティ解除します」

僕はプラスチックのカバーを開けて、レバーを引き起こした。

                               続く   




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