第1話 外へ
日曜日。
私は、1週間の疲れと……そして、明日から始まる1週間への絶望を感じていた。
土曜日は、何をしたんだったか。
部屋を見渡すと、テーブルの上に清書し終えた履歴書が置かれていた。
……あぁ、履歴書を書いていたんだ。
ダストボックスからは、ぐしゃぐしゃに丸められた履歴書が溢れている。
昨日は朝から夜まで履歴書の清書書きをしていたのだった。
ふと、時計をみる。
針は2本とも、ほぼ真上を指していた。
────ご飯食べに行こ。
12時。ほとんどの寮生が食堂にいた。
私は、斜め前に座る友人に声をかける。
「ひま」
たった一言。
しかし、彼女にはそれで十分だった。
「……散歩いく?」
私は少し考えたのち、「行く」と答えた。
彼女にはお昼から用事があり、散歩は夕食後ということになった。
夕食を終えた私たちは、特に目的もなく散歩に出た。
"私"は方向音痴だ。
行く道は全て彼女に任せている。
「……ねぇ、あっちでいい?」
彼女が指差したのは、帰省や帰寮の度にバスで通る道の方。
「いーよ」
私は特に考えることもなく頷いた。
古丹別の街を囲むように、木々がある。
私たちは道なりに真っ直ぐ進んだ。
木々の壁を乗り越えると、目の前に広がったのは空のグラデーションと、オレンジ色の夕日だった。
「綺麗だねぇ……」
かなり長い時間歩いた。
日はゆっくりと沈んでいったが、徐々に地平線の彼方へ隠れていく。
スマホの時計をみると、7:20を過ぎたところだった。
「そろそろ帰んないと、時間やばいかも」
寮の門限は9:00。出発は6:30頃だったはず。
私たちはおよそ1時間歩き続けたということだ。
彼女は「……あそこまで行きたい」と前方を指差した。そこにはプレハブのようなかげが見える。
逆光でよく見えないが、目印には丁度いい。
私も特に異論はなかった。こうして、私たちのゴールは決まった。
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