第2話コオッテシマウヨ

目を細めてと木に登り部屋に飾るために一枝折ろうとしたときに花たちが一斉に笑ったのがわかった


 ウメノカ 


 ウメノカ


 カエッテキタ


 オカエリ


オカエリ

自分に向けられた優しい花笑みに射られてつるりと足が滑って雪の中に落ちた


そのまま張り付けられたように動けなくなってしまった


 コオル


 ウメノカ


 コオッテシマウヨ


花たちが言ったが (いいんじゃ)と言ってそのままでいた


ここで凍ってしまえば永久にここにいられる、それはそれで素敵なことのように思えた


 体は冷たくなったが


そのとき耳のそばで雪を掻く音がして「梅の花 お前何をやっている」遠くで人の声がした


 (ああ 今年も会えた 世界中で自分をウメノカと呼ぶのは一人しかいない)


と思うと嬉しくなった


  「ああもう いつからこうしていた?」


(花を取ろうとして)言おうと思ったが唇が動かなかった


火のそばまで運んでくれた 


体が温まってくると元気が出て普段通りになった


「もう大丈夫」と言って立ち上がった


「お酒をもってきたんじゃ 温めたほうがいい?」


「大丈夫か?よくもってきたな」 


「それだけじゃない、魚を取ってきた、魚はまだ好きか」と尋ねると


「ああ大好きだ」そういいながら頭を撫でてくれた


 食べさせたいものがたくさんある、起き上がって荷物からお酒を出して温め料理を始めた、お味噌には


ちみつを混ぜて魚を焼く


この人はこの小さな何もない家を狐家と呼ぶ、隠れ家にはぴったりな名前だと思う


料理をしている自分を眺めながらお酒を飲む、お互いに話したいことがたくさんあるので言葉がほどけた


ようにたくさん出てくるが動きは止めないように気を付けながらくるくると冬の山の兎みたいに素早く動く


話が途切れた時に楽しそうにぽつりと言う


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る