プロローグ02
俺の名前は孝希。谷上孝希。
自分では普通の高校生のつもりなのだが、周りはみんな否定する。
何故かっていうと、考え方がシビアなのだそうだ。
友達と話している時もよく年上と話してるみたいって言われる。
失礼な。俺は正真正銘、高校二年生だ!
と、心の中で叫んでも意味はないのでそそくさと教室に移動する。
今日は新学年になって最初の日。
俺はどんな人たちとこれから一年間過ごすんだろうと不安と期待を胸に教室に入った。
ちなみに、このドキドキを味わうために自分が何組か以外は確認していない。
ガラッ
中に入るとすでにほとんどクラスメイトのみんながいた。
辺りを見渡しても友達がいないことを確認してしょげる俺。
だが、幸いと担任が去年と同じミッキー先生だった。
最初に言っておくとミッキー先生は某夢の国の住人でも外国の方でもない。
本名、皆川喜美。苗字と名前の頭文字を取ってミッキー先生。
この名前は去年のクラスで新人で緊張しているミッキー先生のためにみんなで考えて作った名前だ。
そのミッキー先生がチャイムが鳴る数分前に教室に入ってきた。
いなかった残りのクラスメイト達もチャイムが鳴るギリギリで教室に入る。
それと同時にチャイムが鳴った。
「みなさん、初めまして。このクラスの担任を務める皆川喜美です。教師になってこれで二年目。皆さんよろしくお願いします!」
『よろしくおねがいしまーす』
「はい。それではみなさんには一人ずつ自己紹介をしていってもらいます」
そう言って出席番号順に自己紹介が始まった。
そんな中、俺はどうやって友人を作るか考えていた。
今まではクラスに友人はいたためそこまで考えなくてもよかったが、今回は俺一人からのスタートだ。
みんなの自己紹介を聞きながら話題を探すとするか。
そう結論を出し、みんなの自己紹介を聞いていると自分の自己紹介の番が来た。
「谷上孝希と言います。趣味はゲームと読書。スポーツ経験はサッカーと卓球。よろしくお願いします」
俺は自分の自己紹介を終え、席に着く。
周りの反応もまあまあだし、こんなもんか。
俺は目を閉じ、ホッとため息をつく。
・・・
そして、目を開けると知らない場所にいた。
「は?」
さっきまで教室にいたはず。
なのに、今俺の前に広がる景色は宇宙。俺の下には地球があり、俺はその場に座っていた。
「え?夢か?それとも死んだか?」
宇宙空間に生身の体で出れば無事で済むわけがない。
そんなことは小学生でも理解できる。
しかし、今俺はその宇宙空間に生身の状態でいる。
しかも、何故か息もしっかりできている。
これは夢、もしくは死んでいると言われても仕方のないことだろう。
「クラスの自己紹介の途中で何かが起こって死ぬなんてそうそうないし、夢だな」
俺って疲れてんだなーと言いながらその場に寝転がる。
「慌てなさすぎだろ⁉」
そんな俺に突然誰かがツッコミを入れてきた。
「もっと慌てふためいて、どうしようって感じになっているところに登場して、『落ち着くがよい。私が君をここに喚んだのだ』って威厳たっぷりで君を驚かそうと思ってたのに!」
「はいはい。どうせ俺は子供らしくないですよ~」
「妙に達観してる!」
「で、あんた誰?」
男とも女とも言える中性的な顔立ちで銀髪の奴が俺の目の前にいた。
「わ、私かい?私は地球の神だよ」
「え?あの頭に触覚を生やしている・・・」
「見れば分かるだろ!私の肌は君と同じ肌色だ!」
「お、おおう」
すでに誰かにからかわれていたんだろうか?もの凄い速さで返してきた。
「もういいだろ!君をここに連れてきた説明をさせてくれ」
「あ、ああ。それで、俺はなんでここに連れてこられたんだ?俺は死んではいないと思うんだが」
「うん。君は死んでないよ。君にやってもらいたいことがあってここに連れてきたんだ」
「なるほど。俺は神にドナドナされたのか・・・」
「私は犯罪者じゃない!」
「いやいや、俺を勝手にここに連行してきただけでもう誘拐じゃん」
「神を誘拐犯扱い⁉」
「え?何か違うのか?」
「あ、いや。(”^ω^)・・・違いません」
自分の行動が誘拐のそれと分かり、気まずそうにごまかす神。
「まあ、いいや」
「いいの⁉」
「だって連れてこられたんだから要件を聞かないともったいないじゃん。ここまで来て何もなしじゃあ終われないでしょ」
「まあ、そうだね。それじゃあ、君に要件を言うよ」
神は真剣な表情になって俺と改めて向き合った。
「君には私がこれから神をすることになった世界に一緒に来てもらいたいんだ。そして、あることを手伝ってもらいたい」
「なんでそんなことを?お前がやればいいじゃん」
「神は世界に直接干渉してはいけない決まりがあるんだ」
「まあ確かに。神が好き勝手してたら色々ヤバいな」
神は俺のコメントに頷くと話を進める。
「これから私と君が行く世界には神がいたんだけど、急に姿を消したんだ。それに気がついた私たちの上司は私にそこの神をするように命令してきたってわけ。他の神たちはそれぞれ二つの世界を管轄してたんだけど私だけ一つだったからね。でも、神はいなくなったけど、神の僕たちは消えたわけじゃなかったんだ。自分たちの主がいなくなった僕たちは自分の欲望のために動き始めた」
「やっぱり、そういうのってヤバイのか?」
「ああ、ヤバイね。僕って言っても神の眷属。その世界でもっとも神に近い存在だからね。それに下手したら神になってしまうかもしれないし」
「なるほどね」
俺はその先の話の流れが読めた。
「つまり、神にも等しい存在が好き勝手にしてしまうと神のルールに接触してしまいかねないと」
「そう。そういうこと。だから君に彼らを殲滅、もしくは捕縛してもらいたいんだ」
「要件は分かった。でも、なんで俺なんだ?」
そう。そもそも俺が選ばれる理由がない。俺よりももっと優秀な人はいるはずだ。
「私が管轄している地球の中で私が望ましいと思った考え方、価値観を持った人物が君だったんだよ。能力面では私が与えるから別に必要ないし」
「俺みたいな考え方の人もいると思うんだけどなー」
「確かに何人かいたね。でも、君がもっとも精神耐性が高かったんだ。こんな無茶な方法で喚び出したわけだし。それにこれから行く世界で潰れたらいけないしね」
俺が一番精神耐性が強いってことは半信半疑だが、納得の理由だ。嘘ではないだろう。
「それで、お願いできないかな?」
神のここまで説明したんだからやれよみたいな視線を受けて俺は・・・。
「イヤ」
「はあっ⁉」
断った。
「いやいや‼ここまで来てなんでだよ!」
「いや、俺のリスク高過ぎじゃん。神の眷属を殲滅、もしくは捕縛ってことは戦うってことだろ?報酬も何も無しで受けるってただのバカじゃん?」
「まあそうだけど!ここは話の流れ的にOK出すところじゃん?世界は俺が救うって言うとこじゃん⁉」
「どこのお気楽主人公だよ。そんなアホみたいなこと俺がするわけない」
「グムムムムッ。分かった!じゃあ、報酬を払おう。君がこの使命を受けてくれるなら達成したときに君に一つだけ私が出来る範囲で願いを叶えてあげるよ」
「それは地球に帰りたいとかでもいいのか?」
「ああ。それくらいならお安い御用さ」
「なるほど」
「それに、君が死んでしまっても一度だけ地球かこれから行く世界のどちらかに生き返らせてあげるよ。これはもしもの時の保険にもなるし」
「フムフム」
「これでどうだい?」
「悪くないな」
そもそも、この話自体に悪い気はしていない。むしろワクワクしてすらいる。
だが、何も考えずに了承することはバカのすることだし、コイツ(神)が調子に乗る。
だから最初に出鼻をくじいたのだ。
「だが、俺は神の眷属たちと戦えるような力は何もないぞ?」
「そこはさっきも言ったように私が与えるよ」
「どんなものを?」
「私が君に与えられる能力は自身の能力を上限のないレベル制ステータスにすること。それと固有スキル三つだ」
「随分と奮発してくれるんだな」
「念には念を入れとかないとね」
「それで?その三つのスキルってのはどんなものなんだ?」
「一つは私が決めるけど、残りの二つは君が決めなよ。大抵の能力は作れるからさ」
そう言われて悩む俺。
いきなり三つ考えろって言われてもなー。
そして、俺が考え始めて一時間が経った。
「よし!決まった」
「長いよ!」
「大切な大仕事なんだろ?慎重に考えて何が悪い」
「あ、はい。すみませんでした」
俺のもっともな意見に口を閉ざす神。
「それじゃ、言っていいか?」
「はい」
「一つ目は自身に関するもの全てを上昇させるスキル。
二つ目は全てを把握し、掌握するスキルだ」
「また、無茶苦茶なスキルを・・・」
「出来ないのか?」
「出来ます!」
神はそう言うと手を俺にかざした。
すると突然俺の体が光り出す。
しばらくすると光は収まっていった。
「これで君に能力を与えました」
「ちなみに最後の一つはどんなスキルなんだ?」
「鑑定スキルさ。僕たち神が使う鑑定の最上位にしておいたから」
「お前のスキルも大概だろ」
「むっ。確かに。でも、これから必要となってくるからね」
「まあ、いいや。それで?俺はこれからどうすればいいんだ?」
これからの行動指針とかぐらいは決めておきたい。
「とりあえず、君はこれからとある王国が行う勇者召喚で召喚されてもらう。そこで見分を広めたあとに世界を回りながら奴らを殲滅or捕縛してくれ」
「分かった」
「私と連絡を取りたいときには教会で祈ってくれ」
「え~。面倒くさいわ、それ」
「面倒くさいとか言うなよ!私、これでも神だぞ!祈れよ!もっと敬えよ!」
「電話とかできないの?」
「・・・。まあ、出来るけど」
「出来るんかい!じゃあ、それでいいじゃん。じゃあ、電話番号教えて」
「番号はいらない。私と話がしたいと念じたら出来るから」
「なるほど」
「もういい?それじゃ、転送するよ!」
俺は頷く。
「頼んだよ!」
「ああ!」
そして俺の目に移った光景は――――――――
鬱そうと生い茂る森の中だった。
そしてエピローグ01の最後へと戻る。
何とも締まらない始まりだ。
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