第二章

「……もう、無理。どうすることもできないから。ちょっとずつ、奪われて……」


「天音?」


 呆然としたように目を見開き、無表情に言葉をこぼす友人の肩を強く揺する。


 されるがまま力なくガクガクと揺れるその頭を見ながら、私は漠然とではあるけれど一つだけ確信に近いものを得た。


 これは絶対に、常軌を逸している。


 風邪とかストレスとか、そんなものではない。もっと何か、別のもの。


 医学の知識なんて皆無だけれど、すごく厄介な何かが天音の中で起きているのは間違いない。


 天音の身体が小刻みに震えはじめる。


「……寒い……身体が……」


 カチカチと歯を鳴らして呟くその異様な姿に。


「おばさん!」


 私は、堪らなくなり助けを呼んだ。


 ドアのすぐ側にいたのだろう。


 私の声を聞くや否や、おばさんが慌てたような表情で部屋に入ってきた。

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