第一章

 そんな教室の窓から見える景色に癒されることもなく、私はこっそりと席に座る天音を盗み見る。


 昨日はメッセージを送っても返信がなく、電話をかけるのも気が引けてできなかった。


 顔色が青白い。それでも、朝のホームルーム前に話しかけたときは薄く笑みを返してくれた。


 だけど、いつもと様子がおかしいことは明白だった。


 今もじっと下を俯き、全く授業を聞いているようには見えない。


 ――気分悪いのかな。休み時間に保健室へ連れていくべきかも。


 今はまだ一時限目。


 登校して早々に早退してしまうことになるかもしれないけれど、無理をさせるよりはずっとましなはず。


 それに、個人的に気になることもある。


 あの飲み込まされた小石は、結局どうなってしまったのか。


 吐き出すことができたのか、まだお腹の中に残ったままなのか。既に体外へ排出してしまっているのなら安心できるけれど、そうでなければどうにかしなければいけないのではないか。

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