第一章
「ほら、手伝って!」
天音の両脇を抱えて引っ張りながら、郁代は苛立たしげな声を出す。
あなたが偉そうなことを言える立場かと憤りを覚えつつも、ここで文句を言って事態が良くなることもない。
仕方なく私は郁代に従い、天音を立たせるために力を貸す。
身体が弛緩してしまったようになっている天音は、まるで土でも詰め込んだ人形のように重く感じた。
「あんたもしっかりしなよ! 大丈夫だって、あんな石ころ一つ飲み込んだくらいで死にゃしないから! ちゃんと歩いて!」
きっと、自分にも責任があるということを心の中では実感しているのだろう。
郁代がここまで協力的になっているのは、たぶんそういう心理が働いているからだ。
直感でそんなことを感じつつ、二人で天音を支える。
力の抜けた人間を運ぶのは、こんなにも大変なのか。
そんなことを考えてしまうほどに、天音を連れて戻る行為は重労働だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます